24時間営業問題などさまざまな課題を抱え、批判の対象にもなっているコンビニのフランチャイズ(FC)ビジネス。では、他の業界でFCは一体うまくいっているのだろうか。

 一般社団法人・日本フランチャイズチェーン協会(東京・港)によると、FCの店舗数は26万強で、うち小売りが11万強だ。そのうちコンビニは約5.8万店(いずれも2018年度)で大きな存在感がある。ただ、FCという業態はコンビニ以外の小売りや飲食、サービス業でも広がっている。コンビニのFCを巡る本連載の第3回は、小売業のなかでも作業着などを手掛け破竹の進撃を続けるワークマンの店舗戦略から、コンビニにも通じるFCの課題と可能性を探る。

●「おしゃれな新商品」だけでない店舗戦略とは

 ワークマンといえばもともと作業着の小売りだが、近年ではそれをベースにアウトドアでも使えるアパレルにも進出し、店舗数も売り上げも年々伸ばしている。作業着などを求めプロの職人が行く既存店の「ワークマン」に対し、取扱商品は同じだが、女性・若者向けに「見せ方」を変えた新業態「ワークマンプラス」が話題で、メディア露出も多い。

 全国856店(2月末現在)のうち直営店は20店ほどで、大半がFC加盟店である。加盟店による商品仕入額が、買掛金ではなく本部からの借入額として記帳される特殊な会計方式(オープンアカウント)や、本部と加盟店とが粗利を分け合う仕組み、毎日の売上送金など、ワークマンのFCのシステムはコンビニと根幹部分で共通する。

 では、コンビニで噴出する諸課題はワークマンには無いのか。そしてどのように対処しているのか。機能的でおしゃれな新商品や斬新な販売戦略にスポットが当たりがちな同社だが、フランチャイズ展開の施策と課題という視点から、同社の加盟店推進部で店舗開発を担当する八田博史部長に話を聞いた。

 ワークマンでは、コンビニとは違って、調査にもとづいた商圏設定から同社がまず店舗を建て、その後オーナーを募集する仕組みを取る。もし経営者が決まらなければそのまま直営店として開店し、直営店として店舗運営を安定させた上で、ふさわしいオーナーが見つかれば経営を引き継ぐという。

 オーナー探しについて八田部長は 「『やりたい』という人はかなり来ているが(適性は)面接で見極めています。(オーナー希望者のうち)小売り、販売は未経験という人が6割で、トラックのドライバーや製造業、競輪選手やミュージシャンだった人もいます。(小売りの)経験があればいいとも限らず、経験が邪魔することもある」と話す。

●加盟店との「共存共栄」は本当?

 加盟時の平均年齢は今まで43.3歳だったのがここ1年で42.9歳まで若返り、話題の業態・ワークマンプラスでは42.3歳だ。「作業服店のおじさん・おばさん」といった感じの人だけでなく、アウトドアやスポーツ、ファッションに興味と知識がある若い夫婦などもオーナーに加わっているという。

 加盟店との関係は「共存共栄の考え方で、本部と加盟店は対等の立場で付き合っています」とのこと。とはいえ、コンビニ本部も同じことを言うが、理念と実態にはズレがある。ワークマンではどうか。

 八田部長によるとワークマンには「ノルマが無い」 。にわかには信じ難いが、「お店も社員もそうしています。仕入れの(商品)数はお店に出してもらっているが、あくまでもそのお店が売りたい、売れる数(に基づいている)。SV(加盟店の監督役社員)のKPI(評価要素)の中にもそういったものはない」(八田部長)と主張する。

●店舗の「共食い」どう防ぐ?

 コンビニで課題が噴出する背景には、大手各社のドミナント戦略にもとづく大量出店による市場の飽和がある。例えば「セブンイレブンのすぐ近くにセブンイレブンができることでカニバリズム(共喰い)が起きる」現象だ。

 ワークマンは「10万人に1店舗」を目安に、「厳密な調査の上で商圏を設定し、店舗同士が喰い合わないようにしている」と主張する。「首都圏のようにある程度店の売り上げが高くなってくると、近くに出店してお客さんを分散させたりもしている。カニバリ(共喰い)が生ずるかというと若干はあるが、お客さんの利便性から考えています」(八田部長) 。

 チェーン展開で実際に“カニバリ”が生じるかどうかは、その業種が成長市場であるかどうかと、その中での自社のポジションにも関わってくる。コンビニは市場が飽和し、各チェーンの店舗が乱立した上、ドラッグストアや通販との競争が激化しているのが現状だ。作業服小売りのワークマンはどうだろう。

 同社がもともと立脚する作業着市場は「縮小傾向にある」と、八田部長は説明する。「リーマンショックの時を除いて当社の売り上げは伸び続け、いま1200億円(※20年3月期業績予想)。一方で作業着の市場自体は縮小している。作業着と普段着とのボーダーレス化が生じていて、作業の際に例えばユニクロの服を着る人もたくさんいます」

 作業着市場が縮小する中、作業着の製造・販売で培った経験を生かし、キャンプや釣り、バイクなどのアウトドアシーン、タウンユース、顧客層でいえば若者、女性にターゲットを拡大した点に成長の要因がある、と説明する。例えばワークマンプラスの業態では客の半数程度が女性だという。

●本部と加盟店は「仲良し」か?

 加えて、FCビジネスにおいて加盟店と本部がもめがちなのが「再契約率」だ。例えばセブンイレブンの契約期間は15年間。その後、加盟者と本部とが合意すれば再契約(ないし契約更新)となり加盟者と本部との関係が続き、合意できなければ契約は終わる。そこで再契約率は、本部と加盟者との“関係の良さ”の指標と考えられている。

 ワークマンとFC加盟店との関係は再契約率にも現れている。同社のFCの契約期間は基本6年間だが、2〜3回再契約するオーナーが多いという。定年(70歳以上は再契約不可)や病気などのやむを得ない場合を除き、20年3月期の再契約率は「99%」としている。

 19年末、セブンイレブン本部が、時短営業(深夜閉店)に踏み切った大阪府東大阪市のオーナーとの契約を中途で打ち切り、物議をかもした(現在、大阪地裁で裁判中)。こうした中途解約について問うと、八田部長は「中途解約はあります。ルール上は違約金(規定)もあるが、われわれもそこまでドライではなく、状況を鑑みて協議して決めています。例えばクレームが多いなど問題があれば書面で改善を求めますが、前向きに改善してもらう中で、加盟店が継続を希望すれば継続する 」としている。

 また、パート従業員や親族などへの引き継ぎを望むオーナーも多く、直近1年では契約終了店舗の47%が彼らへの継承を希望したという。

 では、肝心の「オーナーの収入」は、コンビニFCなどと比べてどうか。

 ワークマンの加盟希望者向けの資料による試算データでは以下の通り。年間1.8億円売り上げた場合月の売り上げは1500万円で粗利は約540万円(粗利率36%)。粗利の60%に当たるロイヤリティーを本部に払い、そこから「営業経費」(水道光熱費等)、「棚卸ロス預託金」(帳簿上の在庫より実地棚卸で確認した在庫が少ないとき、検品ミスや万引きで生じる穴を埋めるためのお金)、「在庫金利負担」(商品仕入のための本部からの借入にかかる年利3%の金利)を引かれた約187万円が加盟店の口座に振り込まれる。その10%を在庫(見合いの本部からの借入)の返済に充て約67.5万円の人件費を払うと、お店に残るのは約100.8万円となる。

 一方、コンビニ最大手セブンイレブンの場合、土地・店舗を借りるCタイプでは、加盟5年目で約74万円、10年目で約89万円、15年目でも約90万円だ(16年3月現在の数字。19年2月6日付中央労働委員会命令への附属の表〈労働法律旬報1943号88頁〉による)。夫婦でやっているとはいえ、ワークマンの「月100万円の利益」は、試算データ通りとすれば一定の水準と言えるかもしれない。

●慢性化する人手不足は?

 一方で、どこの小売店でも問題になっている人手不足は、ワークマンでも無縁ではいられない。ワークマンプラスだと10人ほどのアルバイトをシフト制で使い、店ではオーナーを含め常時4〜5人が働く。いつもの物をさっと買っていくプロの職人だけでなく、一般客の増加で、商品説明など接客に時間がかかるようになった。そこで加盟店の求人を本部でもバックアップしようと、1月から自社サイトに「パートアルバイト募集ページ」を開設、求人したい店舗が無料登録できるようにした。

 働き方改革にも取り組み、もともと1月1〜2日に限られていた正月休みを20年から三が日(3連休)に延長。年間の店休日も、18日から22日に増やした。

 ワークマンは現在、PB(プライベートブランド)商品比率が50%まで高まった。すぐれた商品を開発してそれがメディアやSNSで話題になり、客数と売り上げが年々伸び、本部も加盟店も利益が増える。そんな成長期のワークマンと、成熟市場での過当競争という局面にあるコンビニとを同列に比べるのは難しい。また、オーナーの働き方という面では、もともと24時間営業はなく、年22日の休日があるのも魅力に映る。

 ただ、売り上げによって変わらない一定のロイヤリティー率やノルマの廃止、高い再契約率などは、後発企業としてコンビニFCの問題点を反面教師とし、独自の改善を加えた結果だろう。コンビニよりはGAPやユニクロに近い製造小売(SPA)モデルも、現在までのところうまく回っているように見える。

 とはいえ、今日の勝者が明日の敗者にもなるのがビジネスシーンだ。急成長に担い手や物流のインフラは追い付いているのか。ヒット連発はいつまで続くのか。それが止まったとき、加盟店が抱える在庫が負担にならないか。ワークマンにも、急成長しているからこその課題はもちろんある。それでも同社の工夫は、コンビニFCの改革を考える上でも示唆に富んでいると言えるのではないだろうか。

北健一(きた けんいち ジャーナリスト)