国内の不動産投資信託の状況を示す、東証REIT指数が大幅に下落している。同指数は2月20日の2250.63ポイントから、わずか1カ月後の3月19日に、一時ほぼ半額の1145.53ポイントとなった。旅行やイベントの自粛ムードが漂う中、商業施設等の収益性悪化を懸念する動きが、急速な投げ売りを誘うかたちとなった。

 業種別にみた個別株の中でも、不動産銘柄が一段と冴(さ)えない。国内大手デベロッパーの三井不動産の株価は、2月上旬に3035円の高値から一時1582円まで下落。同じく業界内で大きなシェアを握る三菱地所や住友不動産も同様の動きとなった。直近の高値と安値を比較すると、日経平均株価の下落率が4割程度であるのに対し、不動産業界は概ね4〜5割近い下落率となっている。

 比較的安定的な収益が期待できるといわれる不動産が、なぜ市場平均よりも大きな下落率を記録してしまったのだろうか。それは、リーマンショックのトラウマが市場関係者の中にあるからかもしれない。

●不動産業はリーマンで大ダメージを受けた

 リーマンショックで大きく売られた銘柄として、印象に強く残っているのは銀行業や証券業だろう。しかし、リーマンショック直前である2007年7月の高値から下落のピークとなる09年3月の安値を比較すると、証券業と肩を並べるレベルで不動産業も売られていたのだ。

 不動産という資産は、確かに「安定的な収益が期待できる」という特徴もある。一方で、初期投資額が大きく資金が少なければ買えない。また、資金が十分にあっても、他の資産と比較して低い利回りでの運用となりやすい。そのため不動産の購入にあたっては、金融機関の融資に頼るか、出資を受けることでレバレッジ効果を高めるのが一般的だ。

 金融機関が融資の条件を厳しくしてしまえば、新たな買い手が不動産市場に参入できなくなり、不動産市場全体のレバレッジが縮小する。その結果、経済的なショックが不動産市場に大ダメージを与えてしまうのだ。

 今回の自粛ムードや、インバウンド需要の後退によって旅館や商業施設にダメージがあれば、金融機関としては不動産事業関連の融資に慎重な姿勢を見せるようになるかもしれない。そうすると商業施設だけでなく、居住用不動産市場にも問題が波及する可能性がある。

 このように考えると、いまだ予断を許さないコロナ情勢下では、不動産事業を営む企業について依然として慎重な見方が求められる。しかし上場企業の中には、“隠れ”不動産銘柄とも呼ぶべき企業が存在していることをご存知だろうか。

 “隠れ”不動産銘柄とは、一般的な業種分類やブランドイメージが「不動産業」でない会社でも、実質的には不動産で収益を成り立たせているような会社をいう。

●鉄道会社には、“隠れ”不動産銘柄がたくさん?

 コロナ相場においては、リーマンショック時を参考として、下落が比較的マイルドであった「電気・ガス」や「陸運業」といった企業群に着目している方も多いかもしれない。しかし、例えば「陸運業」でもとりわけ「鉄道会社」は、より注意深く収益の柱をみたほうがいいと筆者は考える。

 今回は隠れ不動産銘柄の一つとして、首都圏で東横線などの鉄道事業等を展開する「東急」を分析してみよう。東急は、つい最近まで「東急電鉄」という社名だった。しかし、19年9月に社名から「電鉄」を外し「東急」となった。ここにもヒントが隠れているが、本質的には決算を見ると“隠れ”不動産銘柄であることが読み解ける。

 先月公開された東急の19年度第3四半期決算によれば、東急は交通事業の他にも百貨店等の生活サービス事業や、ホテル・リゾート事業、そして不動産事業を営んでいることが分かる。

 各事業を営業利益で比較すると、最も利益を上げていたのは交通事業の294億円だった。しかし、これはグループ全体の44.5%で半分以下。残りは、不動産事業や生活サービス(東急百貨店等)、リゾートといった不動産に関連する事業で成り立っている。

 これをみると「東急」という企業の構造を語る上では、鉄道の乗客者数だけでなく不動産マーケットも同時に追跡しなければ、同社の収益構造を半分以上見落としたままだということが分かる。

 事業が成熟した企業の中には、自社の保有資産を運用することで安定的な利回りを狙う戦略の企業も多い。非上場企業ではあるが、朝日新聞社なども不動産事業が収益の柱となっていることは比較的よく知られている。

 このように、ある企業が業種分類や、私たちのイメージと全く別の分野で収益の柱を確保している例は決して少なくない。

●“隠れ◯◯”銘柄はセグメント別業績欄で発見

 大まかな業種では推し量れない“隠れ○○”銘柄かどうかは、証券取引ツールや、各社のWebページに掲載されている「決算短信」や「決算説明会資料」から、セグメント別の業績を報告した箇所で確認できる。

 個別の企業決算を閲覧していくのが負担となる場合は、会社四季報(東洋経済新報社)を確認するとよいだろう。各個社名の隣にある「連結事業」欄では、セグメント別の売上構成比率と売上高営業利益率が記載されている。また、「海外」欄では国内と海外の売上構成比率が記載されている。

 今後もコロナ騒動関連で、不動産以外にも思わぬ業種が打撃を被る可能性もある。一方で、コロナ騒動が早期解決し、不動産市況が急速に回復する展開もあり得るかもしれない。

 その際に、「陸運業」などといった機械的なカテゴリ分類や、「東急電鉄」などといった言葉やブランドのイメージだけに頼らず、セグメント別の業績を気にする姿勢を持つことでコロナ騒動の影響を的確に判断できるようになるだろう。

●筆者プロフィール:古田拓也 オコスモ代表/1級FP技能士

中央大学法学部卒業後、Fintechベンチャーに入社し、グループ証券会社の設立を支援した。現在は法人向け事業コンサルティングを行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。

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