新型コロナウイルスの感染防止向けに進められている在宅勤務。今回初めてテレワークをやってみたビジネスパーソンも少なくないのでは。通勤などの煩雑さが無くなる一方、家庭に仕事を持ち込む上での支障の声なども多く挙がっている。

 さらに今後問題化しそうなのが、テレワーク中にあまりにも過度な報告や連絡などを強制して部下を疲弊させる、一部の“拘束系上司”のケースだ。目の前から部下のいなくなった上司が、彼らを管理できなくなる恐怖からだという……。実態に迫った。

●「みんなサボってるんじゃないか?」

 「今日やったことを分単位で報告せよ」「チャットで(自分が)連絡したら、5分以内に返信しろ」「みんな、サボってるんじゃないか?」――。新型コロナ問題を機に在宅勤務を取り入れたとある企業。社長の部下へのあまりの拘束ぶりに危機感を覚えたその会社の幹部、Aさんが石倉秀明さんに相談を持ち掛けてきた。

 石倉さんはIT系企業のキャスター(宮崎県西都市)で取締役・COOを務める。同社は従業員(業務委託など含む)約700人のほとんどが以前からリモートワークで働いていることで知られる。その経験から、石倉さんも他社からのテレワーク関連の相談を頻繁に受けているという。

 特に新型コロナを機に急増しているのが、Aさんの会社のようにいきなりテレワークを導入した結果、在宅勤務中の部下が「サボる」不安を強く感じている管理職・経営者、加えてそうした会社の従業員などからの相談だ。

●テレワークで広がる上司の“疑心暗鬼”

 「(頻繁に)報告しなければいけない社員は、その報告業務に時間がかかって残業も伸びる。トイレにも行けずに過緊張状態で、とても息苦しくなる。テレワーク下で上司の疑心暗鬼が始まると、(仕事が)地獄みたいになってしまう……」(石倉さん)。

 実際、今回のコロナ問題でテレワークを導入した際、不安を感じるようになった管理職は少なくないようだ。人材系シンクタンクのパーソル総合研究所(東京・千代田)が4月10〜12日に行った全国調査によると、上司のみに聞いた「テレワークを実施して感じた課題」では、34.9%が「部下の仕事の様子が分からなくなった」と回答。26.9%は「部下の労働時間の管理が難しくなった」とも答えている。

 本調査を分析した同研究所の小林祐児・主任研究員は「上司が部下の顔を職場で見ながら仕事を割り当てていくのが日本企業のスタンダードだった。それがテレワークでかなり難しくなっている」とみる。

 「トップダウンで計画的に仕事を割り振る米国企業などと違い、そもそも日本では被っている仕事の調整などを(対面で)話し合って進めていくやり方を取る。そうした仕事の根本はテレワークに際して変えるのが難しいため、上司は感情的なマイクロマネジメント(命令・強制による厳格な管理)を取ることになる。今は業務進捗を管理するITツールも充実しているので、やろうと思えばこのマイクロマネジメントもできてしまう」(小林さん)。

●「テレワークだから」サボる訳ではない

 一方、前述の石倉さんは「なぜかテレワークになると、『社員がサボっている』という前提での質問がよく来る。しかし、テレワークだから従業員はサボる訳ではない」と指摘する。

 「(在宅勤務が始まる前まで)社員が一日中何をして過ごしていたか、あなた(=上司)は把握していただろうか? 単にいつもサボっていた人が、(テレワーク後)もサボるだけだろう。テレワーク向けのシステムもインフラも既に存在する中、結局(うまくいかない会社では)『部下をどう信頼するか』という問題が大きい」(石倉さん)。

 未曾有の感染症拡大という外的要因で、従来するつもりのなかった企業でも強く導入が進められている今回の在宅勤務。一方で“拘束系上司”のようなトラブルは、テレワークそのものの問題というより、日本的マネジメントの在り方、ひいては上司・部下の関係にもともと潜んでいた“ひずみ”を象徴しているのかもしれない。

 ちなみに、石倉さんは冒頭のAさんの会社のような拘束系上司から相談を受けた際は、よくこのようにアドバイスしているという。「あなたは奥さんから『今日1日分の行動を分単位で提出せよ』と言われたら、どう思いますか?」。