コロナ禍で経済が大きなダメージを受けるとともに、2月から3月にかけては株価も大きな下落に見舞われた。一方で、株価が大きく動くときには新たに株式投資を始めようという人も増える。オンライン証券各社は、コロナを機に新規口座開設数を大きく伸ばした。

 マネーフォワードが5月に行った調査によると、投資未経験者のうち10%が、「新型コロナウイルスの影響で投資を始めた」と回答している。

 しかし、明治大学の沼田優子特任教授は、「コロナ危機で時間もできて、(資産運用に)チャレンジしてみようという人が出てきたのは喜ばしいが、指南役がいないと、もと来た道に戻ってしまう」と話す。

 もと来た道というのは、もうかる銘柄を見つけて投資したり、上昇相場を期待して投資のタイミングを見計らったりする投資法のことだ。過去に対面型証券会社が進めてきた、日本の従来型投資法がそうだった。

 一方で、沼田氏が正統派資産運用とするのが、年金運用に代表される投資理論に基づく運用法だ。銘柄選択よりも、さまざまな資産の組入比率(アセットアロケーション)に注力し、資産全体の運用成績の最大化を目指す。一般には、「長期・積立・分散」と呼ばれ、インデックス投資が基本だ。

 「喉元すぎれば元に戻ってしまうのか、それとも資産運用もニューノーマルの時代にいくのか。その分岐点にロボアドバイザー(ロボアド)がいる」と、沼田氏は小口の個人投資家への投資アドバイスに対応できるロボアドに期待する。

●分散投資の効果

 ロボアドとは、世界各国の株式や債券などの複数の資産に対し、ユーザーのリスク許容度に応じて比率を決めて、自動的に投資してくれるサービスだ。相場の上下変動によって比率が変わったら、自動的に調整するリバランス機能も備えている。

 相場が大きく崩れる局面では、資産減少の恐怖から株式などを売り払ってしまう投資家の行動がしばしばみられる。しかし、ロボアド国内最大手のウェルスナビでは、「株価が下がり続けた2月20日から3月23日までの間で、94.8%が利用を継続した」(同社の柴山和久CEO)。この期間、68.2%が積み立てや追加入金を行っている。少なくともロボアド利用者においては、相場の上下動を気にしないという長期投資の概念が浸透しているようだ。

 3月末から相場は急反転し大きくリバウンドしたが、ロボアドの特徴である自動リバランスも、ここでプラスに働いた。下がった株式を買い増すことになり、「リバランスによって資産運用益がプラスになるタイミングが早まった」(柴山氏)

 LINEと組んでロボアドサービスを提供しているフォリオでも、機動的なリバランスがパフォーマンス上昇に寄与した。同社が個人向けに提供しているロボアドの「ROBOPRO」は、AIを用いて経済情勢を分析し、組入資産の比率をダイナミックに変動させる特徴がある。

 「ROBOPROでは、2月18日の自動リバランスで債券の比率が一気に増えた。そのため、大きく相場が下落するところでは、ダウンサイドを守る(下落を小さくする)ことができた。3月19日にもう一度リバランスがあり、一番大きく下がっていた不動産のETFを買い増している。その結果、株価のリバウンドにもついていくことができた」と、同社CEOの甲斐真一郎氏は話した。

●ロボアドの課題

 沼田氏が正統派資産運用の担い手として期待するロボアド。しかし、最大の課題は絶対的な利用者が少ないことだ。「(ロボアドのような)正統派はまだまだ日本では普及しておらず、スタート地点にも立てていない」とウェルスナビの柴山氏。日本の個人金融資産は1800兆円といわれているが、つみたてNISAでの運用額は約3000億円、ウエルスナビの預かり資産額も2500億円に到達したばかりだ。

 「(本当に必要な人に)届いていない。オンラインだけの提供では顧客が来るまで待っているしかない。ここは課題でありながら、焦っても仕方がない部分」だと、沼田氏は話す。

 制度面ではつみたてNISAやiDeCoなど、正統派資産運用を後押しする仕組みが整ってきた。ただし、ロボアド関連ではまだ十分ではない。「確定拠出年金(iDeCo)としてロボアドを提供していいか、制度の条文上不明瞭だ。明確にしてほしいと要望を出している。規制周りの明確化、アップデートを続けてほしい」と柴山氏。また、甲斐氏も「ロボアドとつみたてNISAを組み合わせられるように、理解があるといい」と要望を話した。

 ロボアドなど正統派資産運用が根付くかどうか。コロナ禍が続く中、資産運用もニューノーマルとなっていくかの岐路に立っている。