改正資金決済法と改正金融商品取引法(金商法)が5月1日から施行された。法律上、仮想通貨から暗号資産に呼び名が変わるほか、レバレッジをかけた差金決済取引(CFD)などのデリバティブ取引が規制され、第一種金融商品取引業者としての登録が必要になる。こうした法規制は仮想通貨取引所のビジネスにどう影響するのか。

 いち早く第一種金融商品取引業者として登録を済ませたGMOコインの石村富隆社長に聞いた。

 5月に施行された各種法改正によって、取引所ビジネスにはどのような影響が出る想定でしょうか。また、GMOコインではどのように対応していく方針でしょうか。

石村氏 これまで暗号資産取引は資金決済法に基づいていて、現物の取引が想定されていた。ところが蓋を開けてみると、レバレッジ取引のほうがボリュームがあり、収益性が大きかった。しかし、これまでレバレッジ取引をカバーする法律はなかった。

 いまでこそFXはメジャーだが、FXが始まったときも外為法しかなくて、為替のレバレッジ取引をカバーする法律がなく、FXも金商法に入っていった。同じような流れを経ている。

 レバレッジ取引はリスクも高く、法律がなかったのでいろいろな業種の方が参入してきた。規制当局としてはこれらを金商法でカバーする流れだと認識している。

 金商法の対象になると顧客保護の徹底や求められる資本要件が大きい。資本の増強が必要で、誰もができるビジネスではなくなってきている。実際、第一種金商業者として登録済なのは3社しかない。われわれGMOコインと、楽天ウォレットさんとDMMBitcoinさんだ。

 体制を整えるのも大変だし、資本を調達するのも大変なのでこうなっている。参入障壁が上がってきている。プレイヤーがどんどん絞られてくるのではないか。資本要件を見て、あきらめている業者もあるし、もうレバレッジ取引を止めるというところも出てきている。

 ただし、暗号資産交換業だけでみるとそうだが、金商業者はほかにもある。われわれのグループでいうとGMOクリック証券がそうだし、コインチェックさんならマネックスさんがそう。

 GMOインターネットグループとしてはGMOクリック証券とGMOコインの両方で二重にリソースを食っているが、グループによっては切り分けて、もともと金商法を持っている業者が暗号資産のレバレッジ取引をやる形のところもある。もともとの業者数としては減るが、すでに金商法を持っている事業者の参入はあるだろう。

 従来に比べて厳しい2倍というレバレッジ規制はどんな影響があるでしょう。

石村氏 決まっているので、その中でやるしかない。暗号資産バブルのときには価格が乱高下したので、こうせざるを得ないだろう。ただし最近でいうとボラティリティが全然ないので、2倍でやる必要があるのかという話も、長期的にはあるかもしれない。

 取引高がないと収益につながらないので、(レバレッジ規制の)影響はあると思う。ただし、FXもそうだが、投資家は値動きを追って収益を出すので、収益が半分になるとか、レバレッジ倍率に比例して収益が下がるとかいうことはない。

 取引所ビジネスの方向性は今後どうなっていくのでしょうか。GMOコインでは、ユーザーと暗号資産を売買する販売所と、ユーザー同士をマッチングさせる取引所の2つのビジネスがあります。

石村氏 本来であれば取引所ビジネスは、出来高に対して手数料をいただくのが一般的なビジネスだが、日本はちょっとユニークだ。レバレッジの取引所は基本的に手数料を取っていない。ファンディングコストと呼ばれる、オーバーナイト(翌日まで持ち越し)したときに建玉手数料をもらっている。手数料主体の海外とはビジネス構造が異なっている。

 今後は、取引量に対して手数料をいただく方向を考えている。日本では、ほかの会社も手数料を取っていないので、後発であるわれわれも取っていなかった。今回、手数料を取る形にして試行錯誤している。

 流動性があまりなさすぎると、取引したいときに思った価格で取引できなくなるので、レバレッジ取引を提供している銘柄、例えばビットコインなどでは(常時気配値の提示を行う)マーケットメイクも多少入れている。どちらかというと、板自体をキープすることや、ロスカットの際に板がないと次の刻みが大きく離れてしまい、お客さまが損をしてしまうことを防ぐのが目的だ。

 現在、収益の半分以上は販売所のビジネスだ。しかし、今後スプレッド(売買の価格差)は小さくなっていかざるを得ない。基本的には、お客さまが喜んでもらえるものを提供して、そこでわれわれも収益を作り出せるモデルを考えている。

 我々はロングテール。細かく広く顧客を取っていく。これまでの状況を見ると、市場が大きく動いたときに口座開設数も増える。価格が大きく動いたときに取引したい人がいるからだ。しかし、口座開設が集中するとスタックしてしまいスピーディに口座開設ができず、取引したいときにできなくなる。ユーザーがいざというときに取引できるように、普段から口座を増やしてもらうことを目指している。

 同程度の収益であっても、黒字を確保している取引所と赤字を脱せない取引所があります。GMOコインは黒字を実現できていますが、コスト面でのポイントはどこにあるのでしょうか。

石村氏 われわれはこのビジネスの前はFXをやっていて、第一種金商業の経験者が多い。この規制が暗号資産に当てはめられたときに、何をしなければいけないかは分かっている。

 規制への対応は特殊なところもあるので、外部のコンサルティングを入れたり、外注が必要となったりすると高く付く。内部でこれらに対応できるかどうかでコスト的には差がつくかもしれない。

 われわれ以前から暗号資産交換業をやられていた方々は、ブロックチェーン技術やトークンエコノミーの活用など、暗号資産を使って世の中を変えていくというところも視野に入っていると思う。一方、われわれは取引をいい条件で提供するプラットフォーム。そこに注力している。

 暗号資産業界の喪は明けたのでしょうか?

石村氏 一時期の、絶対悪だというか、何をやってもダメだ、という空気はない。業界全体の努力だと思う。徐々にだが、新しいことに取り組めるようになってきている。

 (ハッキングによる)流出事故についても、対策として押さえておかなくてはいけないことはこの3年間でだいたい出てきている。その上で、営業活動、プロモーション活動もやっていく。しっかりとした会社、業界になっていけば、(株式など)違う商品を取引しているお客さまからも信頼されていくと思う。