「政府に言われたからではなく、もともと値下げには積極的に取り組んでいる。料金の値下げのために、完全子会社化をするわけでもない。ただ(完全子会社化によって)ドコモの財務的基盤が整えば、値下げの余力は当然生まれる」──NTTの澤田純社長はそのように強調する。NTTは9月29日、ドコモを完全子会社化すると発表した。菅義偉首相が携帯電話料金の引き下げに意欲を見せる中、澤田社長はあくまで副次的な効果としながらも、サービスの低廉化を示唆した。

●真の狙いは?

 NTTは約66%のドコモ株式を保有している。30日からTOB(株式公開買い付け)を行い、残り約34%を取得する。買い付け額は4兆3000億円を見込んでいる。完全子会社化は「4月後半から交渉を始めた」(澤田社長)といい、携帯料金値下げの要請とは時期が異なるとしている。

 今回の“真の狙い”は、ドコモをNTTグループの中核に据え、競争力を強化し、ひいてはグループ全体の成長につなげることだという。

 澤田社長は、NTTコミュニケーション、NTTコムウェアなどの資源・ノウハウを生かして「ドコモを強くする」と意気込む。具体的には、法人営業の強化、新サービス・新規事業などの創出力の強化、ネットワークや施設などのコスト削減、第6世代移動通信システム(6G)などの研究開発力の強化──を挙げる。現時点では未定だが、NTTコミュニケーションズ、NTTコムウェアをドコモへ移管することも検討していく。

 ドコモの吉澤和弘社長は「市場環境が大きく変わった。顧客のニーズが多様化・高度化・複雑化している」と説明。今回の完全子会社化で「ドコモはNTTグループの中核となり、全ての顧客のフロント(窓口)になる。個人・法人を問わず、モバイルネットワークだけでなく、あらゆるサービスをトータルで提供する会社になる」という。

 そのためには、5G・6Gなどの技術開発、通信以外のサービス(スマートライフ事業)の強化が必要で、「NTTグループ各社の資源も活用することが近道になる」(吉澤社長)としている。

●ドコモ吉澤社長は退任へ

 一方、ドコモは9月29日、吉澤社長が12月1日付で退任し、井伊基之副社長が昇格する人事も発表した。吉澤氏は代表権のない取締役に退く。

 異動の理由は「さらなる企業価値の向上に資する経営戦略の策定・実行に迅速に取り組むため」(ドコモの発表より)という。井伊副社長は「新しいドコモを創業する」という目標を掲げる。新技術やアイデアの採用、通信以外にもライフスタイルに関わるサービスを提案する──など、展望を話した。