新型コロナウイルスの感染拡大で、外食業界が甚大な影響を受けている。ファミレスも居酒屋ほどではないにしても、大幅な顧客減に苦しんでいる。

 ファミレス各社の8月における既存店売上高(対前年同月比)は、すかいらーくグループ(ガスト、バーミヤン、ジョナサンなど)が73.2%、ロイヤルホストが81.2%、サイゼリヤが71.5%、ジョイフルが79.1%、セブン&アイ・フードシステムズ(デニーズ)が72.6%などとなっている。売り上げが2〜3割程度落ちており、採算を取るには厳しい状況だ。

 日本フードサービス協会によれば、1〜8月のファミレスにおける全店売上高(対前年同月比)の推移は次の通りだ。

 100.2%→102.0%→78.8%→40.9%→50.6%→73.5%→77.4%→75.1%。

 つまり、1〜2月は前年を上回る好調なスタートだったが、コロナ禍で売り上げが激減。4月には、前年の4割程度にまで落ち込んだ。その後反転したものの、6月から75%前後で足踏みしている。夏の感染拡大第2波が影響しているが、今後、第3波や第4波が来る可能性も十分ある。従来のビジネスモデルでは持続していけないリスクが高まっている。

 ファミレス各社は、外食から足が遠のいた顧客のうち2〜3割はもう戻らないと想定して、対策を練り始めている。

 すかいらーくでは、ガストの店内にテークアウト需要の高い唐揚げ専門店を併設するダブルブランド店の実験を始めた。ロイヤルホストの親会社であるロイヤルホールディングス(HD)では、冷凍食品を開発して店内での販売を始めている。セブン&アイ・フードシステムズでは、デリバリーに特化した実験店を打ち出す。びっくりドンキーの運営会社は、非接触型に振り切った新業態を開発した。

 具体的な店舗削減を打ち出す企業も出てきている。ロイヤルHDは21年12月までに約70店の不採算店舗を閉鎖すると発表した。ジョイフルはもっと大規模で、直営店の3割に相当する約200店もの閉店が決まっている。24時間営業も、各社で見直しが進んでいる。

 具体的な各社の施策を見ていきたい。

●スピーディーに改革を進めるすかいらーく

 すかいらーくグループでは、ガストを中心に19年から本格的にWi-Fiや携帯電話の充電用コンセントの整備を進めており、ネットカフェ化が進んでいる。18年3月には、今後5年間で18ブランドの1400店で改装を行い、Wi-Fiとコンセントを設置する旨を発表した。

 もともとは、東京五輪による海外からの顧客増を視野に入れていたが、ちょうど新型コロナの流行に重なった。現状、インバウンド需要はなくなった。顧客層の中心は、コロナを恐れるファミリーから、自宅で働くリモートワーカーに入れ替わっている最中だと目される。そのため、目先の売り上げは落ちているが、打ち出し方次第によっては、外食としては類例がない面白い存在になるはずだ。

 また、今夏にはガストの9店舗で、テークアウト需要の多い「から好し」の唐揚げを提供するサービスを始めた。から好しの一部メニューを、店内飲食向けに提供している。店舗の一角を改装するだけで、ダブルブランド店として斬新な感じを打ち出せる。これは、良いアイデアだ。唐揚げ導入効果で、1割ほど売り上げが伸びる傾向があり、21年3月には1140店へと一挙に広げる。

 和食の「夢庵」と「藍屋」では、実験的に数店舗で始めた寿司の持ち帰り販売が好調だった。そのため、計250店以上ある両チェーンの9月のメニュー改定で、店内飲食を含めた寿司販売を全店に導入した。

 このように同グループでは、コロナ禍を打開するスピーディーな改革を進めている。

●ロイヤルHDは冷凍食品に活路

 ロイヤルHDでは、シェフが手作りするロイヤルホストの味を家庭で再現できる冷凍食品シリーズ「ロイヤルデリ」を開発。19年12月、その商品群を実際に店内で食べられる次世代食堂「ギャザリング・テーブル・パントリー」を、東京都世田谷区の東急・二子玉川駅前にオープンした。

 ギャザリング・テーブル・パントリーは、東京・日本橋馬喰町に17年11月、実験的な現金お断りのキャッシュレス専門店として登場したが、2号店の二子玉川店もキャッシュレスを継承している(馬喰町店は今年7月に閉店)。

 各店にシェフを配置するロイヤルホストが冷凍食品を扱うことは、一見すると矛盾している。しかし、製造工程の大半で手作業を基本とする食品工場も実際に存在する。例えば、成城石井のセントラルキッチンがそうだ。

 二子玉川の同店を訪問し、「バターチキンカレー」を注文したが、ロイヤルホストの味と比べて劣っていると筆者には感じられなかった。見事な商品で、家庭のニーズに応えられると確信できる出来であった。

 店内には、ロイヤルデリの販売コーナーも設けられ、物販とのハイブリッドとなっている。

 ロイヤルグループが冷凍食品を開発したのはなぜか。女性の社会進出が加速して冷凍食品の売り上げが伸びていることや、19年10月の消費増税で外食が軽減税率の適用外になったとことなどが背景にある。このコロナ禍で外食離れが進み、冷凍食品のような保存性に優れた商品がさらに伸びている。ロイヤルデリは、ロイヤルホストなどの227店舗や通販で取り扱っており、4〜6月の売り上げは1〜3月の5.8倍に急増した。時流に乗っている。

 閉店する約70店舗の状況はどうか。まず、ステーキ、ハンバーグとサラダバーの「カウボーイ家族」を8月末に7店舗閉店し、11店体制とした。同社広報によると、「ロイヤルホストは基本、閉店しない方針」とのことだ。ロイヤルデリとのハイブリッドで巻き返しを図る。

●びっくりドンキーの新業態

 びっくりドンキーを展開するアレフでは、6月に新業態「ディッシャーズ」を、神奈川県藤沢市片瀬海岸の新商業施設「エノトキ」と、東京都新宿区の新宿住友ビルに連続して出店した。

 もともとは人件費高騰に対応して、省人化して生産性を向上させるのがディッシャーズ開発の目的であった。しかし、ちょうど新型コロナの流行と重なり、オープンが2カ月遅れた。その結果、非接触性が高い店として注目を集めている。店内に置かれたタブレット端末による注文、セルフレジ、テークアウト窓口の設置など、従来のびっくりドンキーとは異なるアプローチだ。

 店員が顧客と接触するのは、入店時のお迎えと配膳のみである。

 店内は1人で来店できるカウンター席が充実しており、携帯電話やノート型PCが充電できるコンセントも整備。リモートワークにも対応しており、カフェ利用も可能。

 また、近年流行しているサラダ専門店によくあるような、栄養バランスを考えた多彩な食材を使った料理を提供している。ライスもカリフラワーライスに替えることが可能で、ダイエットしたい人に喜ばれている。このため、女性客の比率は6割となっている。

 ディッシャーズは中小規模の店舗スペース向けに開発したが、ランチでは満席になるほど好評。アレフでは、既存のびっくりドンキーでも同じようなシステムを導入できないか、検討に入った。現在、南池袋店で実証実験を行っている。

●デニーズのデリバリー専門店

 デニーズを展開するセブン&アイ・フードシステムズでは、新型コロナ対策でソーシャルディスタンスに考慮した店づくりを行っており、座席数をこれまでの60%程度にまで減らしている。そのため、従来の店舗では売り上げを増やすことは難しくなったが、新しく今秋からデリバリー専門店を本格的に展開する。

 大井町駅前店(東京都品川区)の横に5月11日、デリバリー専門店を実験的に設けて検証を進めている。

 同社広報によれば、「大井町駅前店とは厨房も別で、宅配専用の手の込んだパエリアなどのメニューも開発した」とのことだ。宅配だからこその特別メニューを提供して、デニーズのデリバリーの価値をアピールしていくという。客席の要らないゴーストレストランならば、外に看板を出す必要もなく、裏通りでもビルの上階でも出店できる。接客係も要らないので、店員は料理を作るだけ。配達はウーバーイーツ、出前館などの専門業者が運んでくれる。

 ブランドの知名度と信用を積み重ねてきているデニーズならば、デリバリー市場でも有利だろう。

 宅配専門業者が営業を行っていない郊外では、別の対策を打つ必要がある。そこで、8月から東京都江戸川区の本一色店にて、ドライブスルーの実験「くるまでデニーズ」を開始した。

 車内から店舗横のインターフォンで注文。15分ほど待ってもらい、料理ができたら携帯電話に連絡する。現金の場合は、店員が車に料理を届ける際に支払う。キャッシュレスなら、車を降りて店内のレジで決済する。キャッシュレスでも車内で決済できるように改善されたらベターだろう。

●最大のピンチに陥っているサイゼリヤ

 サイゼリヤは、コロナ禍によって上場以来、最大のピンチに陥っている。

 1月と2月の既存店売上高(対前年同月比)は、それぞれ105.1%、106.6%と絶好調だった。ところが、4月には38.6%まで急降下した。

 1月と2月の好調には、ラム肉串「アロスティチーニ」のヒットが大いに貢献した。このまま今年は突っ走ると思われたが、コロナ禍の前に、ラム串の熱狂もかき消されてしまった。

 普段は宣伝をしないサイゼリヤであるが、食事用マスクとして開発した「しゃべれるくん」のPRには珍しく熱心。8月に同社公式Webサイトで紹介したYouTube動画にて、その作り方を解説している。しかし、しゃべれるくんを実際に着用すると、口の前に暖簾(のれん)のように垂れ下がってしまうので、食べ物が見づらい。また、口に食べ物を運ぶ際に、紙をめくらないと食べにくいという難点もある。さらに、ソースやスープなどの液体が付きやすく、汚らしく見えてしまう。

 そこで、スプーンを紙ナプキンの折しろに挟んで口を覆ったり、おしゃべりをする時に手で紙ナプキンを口もとに持ってくる「おほほほ スタイル」など、新バージョンも登場している。

 ところが、筆者が平日の昼過ぎから夕刻にサイゼリヤの店舗を利用したところ、しゃべれるくんを着用している人は誰もいなかった。提案の視点が、ズレているのではないだろうか。

 紙にメニューの番号を記載して注文する方法も、店員との接触を減らす策だと理解する。しかし、実際にお店で注文してみると面倒だ。

 新業態として2月に東京・浅草にオープンした、パスタ専門店「伊麺処(パスタドコ)」はパスタのファストフードを目指しており、6月には新宿に2号店を出店した。あまり成功例がない難しい業態で、定着するだろうか。

●有効な策を打ち出せていないジョイフル

 現在のところ、新常態に対して有効な反撃策を打ち出せていないのが、ジョイフルだ。

 現在は、200店もの大規模な店舗リストラに追われており、不採算店整理が一段落してから新常態に対応するという算段のようだ。

 18年2月に買収した、1964年創業の洋食チェーン「キッチンジロー」13店舗を9月末に一斉閉店するのも、店舗大リストラの一環だ。キッチンジローは、創業地・神田神保町の店舗も閉鎖され、東京・九段下と大阪・中之島フェスティバルプラザの2店舗のみが残る。

 ジョイフルでは、9月29日に「コク旨食堂フェア」を開催する。「北海道産ホタテとねぎトロ月見丼」(税別799円、以下同)や「すき焼き鍋定食」(759円)といったごちそう丼や定食を、ファミレスとしては安い価格で提供する狙いがある。コロナにおびえる人々の来店意欲を“良い物が安い”という従来型の発想で、どこまで高められるか、注目される。

 ファミレスは各社各様、悩みながら力強く前進しているように見える。

 即効性がありそうな施策で難局を切り開こうとする、すかいらーくとロイヤルグループが、夜明けに最も近い。非接触型の新業態を開発するセブン&アイ・フードシステムスとびっくりドンキーにも改革の光が見えた。従来の方法の延長線上で切り抜けようとしているサイゼリヤとジョイフルは、いまだ闇の中で懸命に光を探している状況といえるのではないだろうか。

(長浜淳之介)