新型コロナウイルスの影響が長引き、消費者の生活習慣も大きく変わった。在宅時間が長くなった人が多く、今年は家で過ごすためのアイテムや商品が注目を浴びた1年になった。特に、日常生活と切っても切れない「食」でもその傾向は強く、料理に使う材料や調理器具、家で食べられるテークアウトなどが売れ筋となっている。

 コロナ禍による食生活の変化に商機を見いだそうとしているのが、菓子メーカーの湖池屋だ。得意とする「スナック」の価値をあらためて見直し、生活の変化に合わせた「ニューノーマルおやつ」を考案。本格的な“料理”と組み合わせた菓子商品を展開する。

 新しいコンセプトの商品によって、朝食、昼食、夕食に次ぐ“第4の食”の需要を開拓するという。お菓子の枠を超え、新しい市場への進出を目指す。

●コロナ禍で「プライドポテト」は6割増、ごほうびやリラックス需要

 湖池屋の主力商品は、コロナ禍での在宅需要増加に伴って売り上げを伸ばしている。2020年2〜9月の販売金額は、看板商品の「ポテトチップス のり塩」が前年同期比25%増。特に、リニューアルした高付加価値商品が好調で、「湖池屋プライドポテト」は65%増、「じゃがいも心地」は73%増、「KOIKEYA STRONG」は2.4倍もの伸びになった。

 同社の調査によると、コロナ禍でスナックを食べるときの目的は「軽い気分転換やストレス解消」「リラックスやくつろぎ」「自分へのごほうび」といった回答が多かった。佐藤章社長は、11月25日に開いた新戦略説明会で「リラックス、ごほうび、ストレス解消が、消費者の心に寄り添うキーワード」と話した。高付加価値商品は、そういったニーズに合った商品だったため、販売を伸ばすことができたという。

 一方、食へのニーズだけでなく、食習慣も変化している。佐藤社長は、コロナ禍によってお菓子、特にスナック菓子の購入頻度が増えたことを指摘し、その背景について、テレワークなどで在宅時間が増えた人の「食事回数の増加」を挙げる。間食を含めて1日4食以上食べる人が増え、間食が食事に置き換わることがある人も多いという。佐藤社長は「スナック菓子が食事の代替になっている。真剣に対応していかないといけない」と話す。

●食生活の変化に対応した「本格料理系お菓子」

 食事回数が増える背景には、特に若い世代で朝食を食べ逃したり、昼食を簡単に済ませたりする傾向もある。食事と食事の間のつなぎとして小腹を満たすために間食をする。「主食と間食の境界があいまいになり、食の『分食化』『乱食化』が進んでいる。そういったニーズに対応するため、食の新たな選択肢を提案したい」(佐藤社長)

 そういった狙いで考案したのが「ニューノーマルおやつ」という新戦略だ。そのコンセプトは「本格料理系お菓子」。特に女性がスナック菓子を中食として食べていること、簡便性のある手軽な小腹満たしが求められていることを着眼点にしたという。

 新戦略商品として、21年春に発売するのが「ハッシュドポテト」「ポテトと料理」の2ブランドだ。

 3月下旬に発売するハッシュドポテトは細切りの生ジャガイモを一口サイズのキューブ型にした菓子。ジャガイモの味を引き出す「コクうま塩」と、カリカリのベーコンを混ぜ込んだ「クリスピーベーコン」の2種類を展開する。ザクザクとした食感が心地よい菓子だ。

 ポテトと料理は4月上旬に発売。より本格料理の味わいを追求した商品だ。「デミグラスハンバーグ」と「タルタルフィッシュ」の2種類を展開する。実際にこれらの料理に使う具材からソースを作り、それをポテトの生地で包んだ。一口サイズで“ごちそう”の味わいを提供する。噛んだ瞬間に中から濃厚なソースが出てくる、新しい感覚の菓子だ。

 スナック菓子のジャンルを超えた商品は、20年10月に先行して発売している。チャック付きパウチ入りの商品で、「ハッシュドポテト」のほか、大豆たんぱく肉で作った「罪なきからあげ」、キャラメルを使ってデザートのように仕上げた「キャラメル×スコーン」を発売した。これらが大人や女性を中心に好評であることから、「この分野をさらに伸ばしていけるのでは」(佐藤社長)と、本格展開を決めたという。

●中食・総菜市場への進出を視野に

 これらの商品を「お菓子の形状をした料理」として訴求していく。メインターゲットは、仕事や育児で忙しく“食べ逃し”が多い20〜30代女性だ。佐藤社長は、ニューノーマルおやつで「2〜3年で30億円ぐらいの売り上げを作っていきたい」と意気込む。

 新市場進出による商品ラインアップ増加に対応するため、工場も2カ所増設する。21年1月、埼玉県加須市に「関東第三工場」を稼働。新商品の「ハッシュドポテト」や「ポテトと料理」を製造する。また、21年7月には、熊本県益城町に「九州阿蘇工場」を開業予定。九州で主力商品を製造することで、東日本から西日本への商品移動を減らし、物流を効率化する。加えて、九州でのジャガイモの産地拡大や、現地の素材を使った商品開発なども進めていくという。

 佐藤社長は、ニューノーマルおやつの新戦略について、「菓子の市場規模は約4兆円だが、中食・総菜市場は約10兆円で成長を続けている。その市場への本格進出に向けた取り組みにしたい」と語った。

 食に対する価値観は時代によって変化しているが、新型コロナの影響で、食習慣が変わっただけでなく、家の中を中心とした“新しい食体験”の需要も拡大しているだろう。湖池屋は、ライフスタイルやニーズに合った「新たな食の選択肢」を提供するため、長年培ってきた商品開発力を生かしていく。