新型コロナウイルスの第三波が日本を覆いつつある。もともと多くの専門家が冬になれば感染はまた増えると警告していたが、それが現実になっていることで、例えば経済刺激策の「GoToトラベル」の運用見直しの議論が出るなど、国民の間にも混乱が広がっている。

 これは何も日本だけの現象ではない。世界各地で感染者が増えており、多くの国が再び行動規制などの対策に乗り出している。

 世界を見ても、特に感染者数が増加して深刻な状態になっている国の一つが米国だ。当初と違って、現在は症状があまりない人でも検査を受けられるようになったことも、感染者数増大の背景にはある。とはいえ、11月24日には1日で17万人以上の感染が判明し、2100人ほどが死亡。27日の時点で、これまで合計1288万人以上が感染し、26万2000人が死亡している。

 ずっと感染者や死者数が世界でもトップクラスだった米国では、11月3日に大統領選が行われた。筆者はその3週間ほど前から米国に入り、首都ワシントンを中心に各地で取材を行った。そして大統領選が終わってからも取材をしばらく続けて、帰国した。

 このコロナ禍で国を越えた旅が制限される中、日本から世界で最も感染者の多い米国に最近入国し、そこから日本に帰国した人はそう多くはない。また、ビジネスパーソンにとっても国際トラベルで何が起きているのかは気になるところだろう。そこで現在、海外への渡航はどんな様子なのか、また、日本の水際では何が起きているのかについてレポートしたいと思う。

●米国への入国、新型コロナ質問はゼロ

 米国行きの飛行機に乗ったのは、10月第3週のこと。当時から、米国では新型コロナで検疫体制の強化が行われ、入国条件の変更や制限措置などをとっていた。大使館のサイトによれば、基本的には観光目的では入国はできないし、入国後は自己隔離も勧められていた。

 空港では、東南アジアからとみられる外国人たちが、日本の街中では見ないようなタイベック(防護服)や大きなマスクを着用している姿も見られた。免税店や空港内の店は多くがシャッターを下ろしている状態だった。

 飛行機に乗り込んでまず気がついたのは、乗客数の少なさだ。航空会社側のソーシャルディスタンスという意識もあるらしいが、前後の列にも誰も座っておらず、いわゆるガラガラ状態だ。「機内の空気は3分ごとに完全に換気されますが、機内では常にマスク着用をお願いします」というアナウンスが流れる。ただそれ以外は食事などのサービスも通常通りで、普段と何ら変わらなかった。

 米国入国に際してはいつも通りの税関申告書を記入するのみ。新型コロナに関する質問書類も何もないため、多少緊張感を持っていた筆者は、正直言って拍子抜けした。

 いつも通りの飛行機の旅を終えて米国に到着。職員はみんなマスクを付けている。入国審査のゲートもやはり非常に空いていて人の姿は少ない。ただマスク着用とソーシャルディスタンスは守るようポスターなどがあちこちにある。また咳が出るなど体調が悪い人は報告するよう求めるメッセージボードもあった。

 だが、人が少ないためにスムーズに入国審査のための入管職員ブースに向かうことができた。ブースでは、スキンヘッドでマスク姿の男性職員から次々と質問を受ける。「旅の目的は?」「どこに滞在するのか?」「帰りのチケットはあるか」などだ。最後まで新型コロナに関する質問はゼロで、こちらがたまらず質問した。

●緩かった入国、街の店舗では厳しい制限

 私「原則として自己隔離が求められるという話だったけど、どうすればいいの?」

 職員「いや、必要ないよ。州によっては厳しいところもあるけどね」

 私「じゃあ基本的には何もしなくていいの?」

 職員「そうだね、州によるから。マスク着用とディスタンス確保は守って」

 以上である。あとは荷物を受け取って、税関申請書を提出して終了。欧州からの入国はかなり制限されているが、同じように厳しく制限されているはずのメキシコなどからは、知人の家族も私と同じ時期に何ら問題なく入国できており、PCR検査の結果を見せるといったこともない。とにかく全てが緩い。米国で暮らしたことがある人なら分かると思うが、要するに米国らしい「適当ぶり」を再確認することになった。

 その後も米国内ではレンタカーを利用したり、飛行機で移動したりした。国内線はかなり混んでいて、ソーシャルディスタンスどころの話ではなかった。州の移動でも、検問などがあるわけではなく、現実には制限もない。かなり適当だったといえる。

 一方で、米国内のレストランは閉じているところが多かったが、オープンしている店でも屋内で食事ができる店はかなり少なかった。テラス席ならばオッケーだったが、これまでの出張でよく行っていた店の利用や、取材相手と会う場所もかなり制限された。大手のスーパーや量販店などでは基本的にマスクをきちんと鼻までしていないと入店すらできない。マスクせずには食品すら買い物できない状態だ。ただファストフード店などでは店内で食べられる場所も少なくなかった。

 そんなこんなで、民主党のジョー・バイデン候補の当選確実が発表され、街頭デモなどの混乱も落ち着いたことで、取材は終了。なんとか大きな問題もなく、大統領選取材は無事に終えることができた。

 最後の問題は、日本への帰国である。日本を発つ前から、帰国した後は2週間の自己隔離が求められるのは分かっていた。その覚悟をもって、1カ月近い米国取材を終えて、帰国の途についた。

●6枚もの書類、PCR検査――日本の水際対策

 米国の空港では人の数は普段よりは明らかに少ないが、それでも多くの人が空港を利用していた。

 ただ日本行きの帰国便では、米国に向かった際よりも、さらに人が少ない。200人ほど乗れる機体だろうが、30人もいない。航空会社がかなり厳しい状態にあるのが分かる。

 日本への入国は、米国への入国とは違い「適当」ではなかった。感染者が世界でも多い米国から帰国するのだから当たり前だろう。

 機内では、帰国の際には必ず記入する通常の携帯品申告書に加えて、A4で6枚の書類を渡される。全て新型コロナに関する書類だ。

 例えば、「質問票」という書類では、訪問国や過去14日間の健康状態を記入する。さらに14日間の滞在先を書き、公共交通機関を使わずに移動できるかどうかも確認される。

 また「厚生労働省からのお願い」と書かれた書類では、メッセージングアプリの「LINE」で海外から帰国した人に14日間にわたって健康状態を確認することに合意するかどうか尋ねられた。もしLINEでの登録を望まない場合は、保健所が電話で健康状態の確認を行うことになると書かれていた。

 日本到着後、入国審査は自動ゲートで行われる。その後はPCR検査に向かう。機内で記入した書類を提出して確認し、プラスチックの唾液採取容器を受け取る。そして設置された採取ブースに一人ずつ入り、検査。それを提出し、別の特設ゲートに向かって検査結果が出るのを待つ。50人ほどがロビーで待っていた。

 1時間もしないうちに、設置されたテレビスクリーンに自分の番号が掲示され、ゲートに向かって結果を聞く。私の検査結果は、陰性。ほっとしてそのまま荷物を取り、空港を出ることが許された。陽性なら、そのままホテルに連れていかれて強制隔離ということになるらしい。

 ただPCRで陰性であっても、14日間の自粛期間は、公共交通機関には乗らないよう求められた。

●情報収集と細心の注意の上、ビジネス渡航は可能

 日本政府の取り組みでは、海外で取材活動を行って帰国した者に、水際対策として職員を配置してPCR検査を実施する。空港はいろいろな国から入国しようとする帰国者だらけであり、そんな中で帰国者の案内やPCR検査の実施・手配まで担当する人たちが大勢いた。感染リスクが高い環境で、関係者は嫌な顔一つせずテキパキと作業を行っており、頭が下がる思いだった。

 言うまでもなく、そこには税金も使われているはずで、まさに感謝しかない。その後、帰国後の生活では、決してそれ以上の迷惑を掛けるわけにはいかないので、14日間の自己隔離をきちんと徹底して行った。

 もちろん、米国滞在中もこうした検査が帰国時に行われることは予測していた。そのため、人が集まるデモなどを取材する際は、感染しないよう自己管理に細心の注意を払っていた。現地で会ったジャーナリストたちも同様に、マスクを二重にするなど、感染を避ける、また人に感染させることがないよう、できる限りの自己対策をしていた。日本から訪問していた筆者は、仕事とはいえ訪問先から新型コロナを持ち帰るようなことがあってはならないと意識していた。

 ちなみに知り合いの話では、カナダから日本に帰国した人たちにはPCR検査が行われるが、感染者が多くないために上陸拒否対象指定の解除がなされたオーストラリアやニュージーランドから日本に入国する際には、PCR検査が実施されることはないという。ただ帰国後14日間の自宅待機は必要になる。こうした情報をきちんと大使館などでチェックし、訪問先と、帰国時の様子を調べておけば、欠かすことのできないビジネスなどでは渡航も可能である。ただ細心の注意を払うことは最低限の条件だ。

 現在のところ、韓国、シンガポール、タイ、台湾、中国(香港、マカオ)、ブルネイ、ベトナム、オーストラリア、ニュージーランドからの入国には11月以降、原則としてコロナの感染検査は必要ない。ビジネス関係などで必要な人たちは基本、自費で検査を受けなければならない。

 日本はきちんと水際対策を行っているといえる。ただ今後国外からの来日者が増えれば、どこまで対処できるのかは未知数だ。だが「鎖国」をいつまでも続けるわけにもいかないので、入国後の行動監視などを徹底して行う必要があるだろう。

 そんな状況を一変させることになるワクチンが、広く行き渡るようになる日はいつになるのだろうか。そう遠くないような気はするが、それまで、私たちの日常やビジネスが引き続き制限されることになる。

(山田敏弘)