外食チェーンのワタミは緊急事態宣言を受け、1都3県で営業している直営店全100店のうち83店舗を休業している。休業の対象は和民、坐・和民、ミライザカ、鳥メロなど。焼肉店など残りの27店舗は営業時間の短縮要請を受けて午後8時まで営業する。ランチ営業では収益改善の効果がないとして休業に踏み切った。

●一律の補償金ではなく「丁寧な補償」を

 渡邉美樹会長兼グループCEOは緊急事態宣言での飲食業への時短要請について「グループの店舗は1都3県に140店舗あり、うち居酒屋は100店舗ある。時短を受け入れたとしても午後7時までの酒類提供では商売にならない店舗が83店舗ある。そのため、緊急事態宣言中は休業すると判断した」と記者会見で語った。

 休業しない店舗についても「午後8時以降、やりたいのはやまやま。企業の社会的責任として、全店で順守することにした」。また、「2020年の緊急事態宣言のとき、ランチ営業や弁当の販売もしたが、効果がなかったと言うのが私たちの結論。つまり、ランチをやっても営業にならないのが83店舗あった。居酒屋がランチをすれば何とかなるというのは甘い考えだと思う」と補足した。

 休業や時短受け入れによる経済的影響については「5〜6億の営業損失が出ると思うが、実際はそれ以上の影響が出るとみている」と予測した。

 飲食店での会食が感染対策の「急所」といわれることについては「確かに急所なのでしょう。しかし、急所だけをこのような形で塞いでも全ての動向が変わるのか、ということに対して問題提起をしたい」とした。「海外に店舗を持っているが、外国は人数制限がある。なぜそういったことをしないのか?」と補足しながら、飲食店での感染対策について持論を展開した。

 「このままでは飲食業界は崩壊すると危惧している。補償についてはがんばったとは思うが、1律6万円はあまりにも乱暴ではないか。立地、規模、業態によって必要とされる支援金は全く違う。もっと丁寧な補償はできないのか。大ざっぱな支援ではその網から漏れるところが必ず出てくる」と苦言を呈した。

 では、「どのくらいの補償であれば妥当と考えるのか?」という報道陣からの問いには「経営の観点から見て、いくらだと潰れないのかというと『粗利の半分』だと考えている。これを補うことによって、少なくとも従業員の給与、家賃もまかなえると、私は試算している」と具体的な数字を提示した。

●売り上げ「2019年比55%」で黒字化できる

 今後については以下の見通しを語る。

 「全店のうち3割は閉じなければならないと思っている。グループ全体の売り上げについて『20年は19年の7割で黒字化できるように計画』していた。21年はさらに下方修正して(コロナ前の)19年比で55%に設定をし直した。これで何とかグループ全体で黒字になるようにしていきたい。例えば、家賃の減額交渉で言えば、『何月まで』という形で減額に応じてくれるオーナーさんが多い。今回の緊急事態宣言を受けて、金額をこれ以上減額するのではなく、『6月まで、9月まで』といった減額期間の延長の交渉が始まった」

 とはいえ、「緊急事態宣言解除後も全てが戻るとは考えておらず、手元の資金がなくなっていく……2021年の飲食業は倒産ラッシュの年だと思う」と飲食業界の近い将来は厳しい見解を示した。

 一方、運転資金については「決して、楽観はしていないが、銀行から(企業が自己資本とみなすことができる)『資本性ローン』を入れてもらった。自己資本比率がどこまで傷むかを注視している」とした。人員については「83店舗が休業すると約200人の社員の仕事がなくなる。その200人に対して、スーパーなど異業種への出向、人材派遣を強化し、何としても雇用を守りたい。併せて『焼肉の和民』や『から揚げの天才』など社内の配置転換を図り解雇はしない」と方針を掲げた。

 緊急事態宣言中の休業を利用して焼肉業態である「焼肉の和民」への転換を進めるのか、との質問には「転換を進めているものの、さすがにこれだけコロナが広がると、居酒屋よりも売り上げの高い焼肉でも厳しい状況なので、(転換の)スピードはコントロールしている」とした。

 テレワークが広がる上での需要増を想定し、1月18日〜2月5日まで弁当や総菜をワンコイン(500円、税込、宅配料込)で販売する「テレワーク弁当」を始める。また、1月12日より「焼肉の和民」において1980円(税別)で60品、80分間「ランチタイム限定食べ放題コース」も提供していく。

 渡邉会長は「から揚げの天才」でも「お持ち帰り、配達に、より力を入れる」と語った。ただ、現実として「焼肉のランチメニューを提供しても売り上げをそれほどカバーするわけではない。在宅勤務やオンライン授業で家にいることが増えてストレスもたまるでしょうから、こういう場を提供することによって地域に貢献する意味で企画した」と新メニューの意図を話した。

 居酒屋から焼肉の形態に転換している同社。渡邉会長は「居酒屋文化はなくならない。コロナで不急ではないかもしれないが不要ではない。この国に必要な文化で、素晴らしい思い出を提供する場所だと思っている」と話し、同社を創業し居酒屋業界をけん引してきた意地を感じさせた。一方でコロナウイルスは人の思いに関係なく広がる部分があり、難しい局面に立たされている。

 1月13日に決算会見をしたサイゼリヤの堀埜一成社長は、政府がランチでも感染リスクが高いと注意を呼びかけたことに「ふざけんなよと」と発言、「外食は、しゃれにならないぐらい追い込まれている可能性がある」と、大手チェーンへの補助金の拡充を訴えた。また15日には、「白木屋」「魚民」などの居酒屋を展開するモンテローザも、東京都内の61店舗を閉店すると発表している。

 東京都内の大手飲食チェーン店は時短営業協力金の対象となっていないことや、政府がランチの外食も控えるように呼びかけたことに対し、飲食業界は反発している。日本フードサービス協会は営業時間短縮の協力金について、チェーン展開を行う大手企業も対象とするように要請した。

 今後、緊急事態宣言が延長される可能性も否定できない。ワタミをはじめ外食チェーンがどう対応していくかに注目だ。(ジャーナリスト武田信晃)