コロナ禍にあっても、100円ショップが好調だ。

 業界2位、3位、4位のセリア、キャンドゥ、ワッツの今期における既存店売上高はいずれも前年の数字を上回っている。セリアの既存店売上高は2020年4月〜21年1月の累計で104.9%(前年同月比、以下同)、キャンドゥは20年12月〜21年1月の累計で101.7%(同)、ワッツは20年9月〜21年1月の累計で102.3%(同)だった。

 上記の上場している3社と違い、未上場ながら業界最大手の「ダイソー」ブランドで知られる大創産業も、好調が伝えられている。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府や地方自治体が外出自粛要請をしている。キッチン周り、手芸用品、マスクなどの衛生用品、清掃や収納関連商品、食品といった暮らしに密着した100円ショップの商品が、巣ごもり需要に向いていたのが奏功した。

 また、デザイン性や使い勝手の良い商品が増えていること、100円均一にこだわらない高額商品が支持されていること、消費者の節約志向が高まったことが各社の好業績を後押しした。

 そこで、今回は100円ショップの現況を調べてみた。

●100円ショップは生活インフラ

 100円ショップは大手4社の寡占状態だ。

 年商は、「ダイソー」の大創産業が5015億円(20年3月末現在)、「セリア」のセリアが1815億円(20年3月期)、「キャンドゥ」のキャンドゥが730億円(20年11月期)、「ワッツ」「meets.」「シルク」のワッツが528億円(20年8月期)となっている。

 店舗数は、大創産業が国内3493店(20年2月末現在)、セリア1726店(21年1月末現在)、キャンドゥ1075店(21年1月末現在)、ワッツ1269店(20年11月末現在)だ。

 なお、業界5位で「FLET'S」「百圓領事館」を展開する音通(東証第2部上場)は、年商149億円(20年3月期)、147店(20年12月現在)だ。ローソングループの100円コンビニ「ローソンストア100」は682店(21年1月現在)を展開している。

 帝国データバンクが2月20日に発表したプレスリリースによれば、20年度における100円ショップの業界売上高(事業者売上高ベース)は、過去最高を更新することがほぼ確実になったという。11年連続で増加しており、19年度には大手5社の合計で8722億円に達した。20年度は9000億円の大台も見えている。

 店舗数も過去10年で4割増えた。10年度は5300店(FC含む)だったのが、19年度には7600店にまで増加。近いうちに8000店を超える可能性が高い。

 ここまで増えれば、100円ショップは生活のインフラとなったと考えてよいのではないだろうか。

 同プレスリリースは「100円ショップはコロナ禍で外出自粛や店舗休業の影響を受けたものの、消費者が自宅で過ごす時間が増えたため、特に家庭内の日用品など生活雑貨類の需要が急増した」としている。さらに「外食が手控えられた一方、中食や自炊のニーズが高まったことで、鍋などキッチン用品の需要が伸長。また、清掃用品、生活消耗品、手芸品、インテリア用品など、『おうち時間』を彩る雑貨需要が増加したこと」を好調の要因として挙げている。

 ホームセンターが好調なのも、100円ショップと同じ理由だ。カインズ、DCMホールディングス、コーナンなどの既存店売上高は、20年3月から平均して1割ほど伸びている(対前年同月比)。

●消費者を飽きさせない100円ショップ

 ホームセンターが好調な理由をもう少し詳しく見てみよう。「おうち時間」が増えたことで、生活者が年末にする大掃除を緊急事態時に行ったり、日曜大工や洋服の整理などを平日にしたりするようになったことが背景にある。

 また、100円ショップで販売されている商品は、本格的な清掃やDIYには向かないが、隙間をサッと清掃したり、小物や書類の整理したりするには便利だ。ホームセンターと併用された面もあるだろう。

 家での料理も、最初は袋ラーメンにゆで野菜を足す程度の簡便なものが多かったかもしれない。ただ、慣れてくると子どものおやつにホットケーキをつくって生クリームや果物を添えたりといったように、だんだんと凝るようになる。そうなると、料理ごとに調理用具や食器もそろえたくなってくる。今の100円ショップには料理が楽しくなるような多彩なグッズが販売されていて、消費者を飽きさせない。

 例えば、蓋付のボールに麺と具材を入れ、水を加えて、電子レンジでチンするだけでラーメンができるグッズがある。また、ザルとボールがセットになっていて、水切りした食べ物をそのまま保管できるグッズなどもそろえており、用途に応じたアイデア商品を探す楽しみも提供している。

 昨年の緊急事態宣言の直前から秋口までは、マスク不足が顕著で、手づくりマスクの本がよく売れた。100円ショップで販売している日用雑貨を購入し、手作りマスクに挑戦する人も多かった。ダイソーでは「手作りマスクキット」を販売し、実際につくった人から高評価を得ていた。

 このように、顧客の細かいニーズを拾った、便利さ、楽しさを100円ショップ各社は追求している。特にセリアは、“セリアパトロール”という言葉があるように、毎日のようにお店を訪れて、商品をチェックする熱烈なファンが多い。ブロガー、インスタグラマーとして、SNSを駆使し、実際に購入した商品写真をアップして、インフルエンサーの役割を果たす人もいる。

 この“パトロール”行為は、他の100円ショップでも盛んになっている。100円とは思えない秀逸な商品が発見されると、宣伝せずともSNS効果で爆売れするケースがしばしばある。

●無印よりダイソーで働きたい

 商品の感度がアップして、おしゃれなものが増えたことから、100円ショップ業界のイメージも向上している。

 調査研究機関「ツナグ働き方研究所」によると、2020年における「アルバイト採用ブランド力」の1位はダイソーで、2位は無印良品、3位は東京ディズニーリゾートだった。

 アルバイトの職場として、近年100円ショップの人気が高まっている。19年に発表した同様のランキングでは、セリアが1位(20年は7位)、ダイソーが2位と、上位を独占していた。

 同研究所は人気の理由として「価格がほぼ100円で統一されていることから、自分でも働きやすそうという圧倒的な敷居(しきい)の低さ」を挙げた。ダイソーがセリアを逆転したのは、「コロナ禍によって通いやすさが重視されたから」と分析する。ダイソーの店舗数はセリアの2倍ほどあり、家の近くにある安全な職場というイメージを持たれている。また、「“ダイソーにないものはない”と言わしめる品ぞろえの豊富さも、ブランドイメージにつながっている」と分析している。

 このように、生活者がアルバイトをしてみたいと思えるほど、身近な存在となっていることが、100円ショップの好調の一因だと考えられる。

●主婦はダイソーよりセリアを支持

 マーケティング会社PLAN-B(大阪市)が運営する「カジナビ」は、2月22日に「主婦1021人が選んだ 好きな100円ショップランキング」を発表した。

 同ランキングによると、好きな100円ショップ1位はセリア(479人)で、2位はダイソー(477人)、3位はキャンドゥ(49人)、4位はワッツ(9人)だった。

 なぜ、セリアが支持されるのか。同社は「商品のデザイン性の高さや、製菓・手芸・DIYなどの手作りを応援するグッズの品ぞろえの豊富さに定評あり。ディズニーやサンリオのキャラクターものも多く、子育て世代にも重宝されている」と分析する。

 商品の入れ替わりも頻繁で、かわいいものを見つけたらついつい買ってしまう人が多い。これが“セリアパトロール”をする人の心情だろう。

 PLAN-Bはダイソーについて「豊富な品ぞろえでオリジナル商品も多く、老若男女、幅広い層から支持を集めている」と評している。アウトドア商品やコスメ関連商品が充実している点を評価する人もいる。

 まとめると、ファッション性ではセリア、実用性でダイソーといったところか。

●キャンドゥとワッツの戦略

 キャンドゥについて、PLAN-Bは「シンプルでスタイリッシュなデザインの日用品が多く、こだわり品質のプライベート商品も展開されている」と分析する。また、人気の主婦ブロガーMariさんとのコラボ商品「LOVEHOME」シリーズは、デザイン性の高さでヒットした。

 ワッツの票が伸び悩んだのは、自社の有力ブランドが「meets.」「シルク」と3分されているので、知名度が劣るからだと思われる。

 ダイソーとセリアは、ショッピングセンターや大型量販店に大型店の出店を加速させている。一方、ワッツは生活雑貨に特化し、スーパーに小型店を出店したり、委託販売を推進したりと、2社が出てこない隙間を狙って上手にローコストの商売をしている。

 送料が商品に比べて高くつくので、100円ショップの商品は通販に向かないというのが通説だ。しかし、ワッツの通販は軌道に乗ってきているそうだ。

 このように、2強の盲点を突けば、キャンドゥとワッツにはまだまだ成長の余地がある。

●かたくなに100円均一を貫くセリア

 大生産拠点である中国の人件費が高くなったことなどが影響し、100円ショップは“100円均一”を維持するのがコスト的に苦しくなった。そのため、150円、200円、300円、500円、1000円と、高額な商品を売るようになった。ビニール傘はかつて100円でそこそこしっかりしたものが買えたが、今では300円くらいしてしまうことも多い。

 その傾向が最も進んでいるのがダイソーだ。例えば、容量1万mAhのモバイルバッテリーが1000円で販売されている。これは、一般的な家電量販店と比べて4分の1ほどの価格だ。このバッテリーは、ダイソーでは最高額の商品だが、“超安価”でもある。こうした“激安”を開発する力を持っているのがダイソーの強みだ。

 キャンドゥやワッツでも100円以上の高額商品が増えてきている。しかし、「そうは言っても、消費者は価格に敏感。大半が100円均一の商品だ」(ワッツ・広報)といったように、100円ショップ各社は消費者の節約志向に応えていく覚悟である。

 一方、300円ショップの「ミカヅキモモコ」を近畿地方を中心に50店展開していた三日月百子が2月8日、自己破産の準備に入ったと帝国データバンクが報じた。100円ショップが、300円の領域にまで侵食してきたので、競争が激しくなったのだ。

 かたくなに100円均一を貫いているのはセリアだ。セリアの商品数は約2万点だ。ダイソーが約7万点なので、3割以下である。商品点数が絞り込まれているので、製造コストが安く、消費者にも安価で提供できる。そのうえ、セリアの営業利益率は10%前後と高く、キャンドゥやワッツの1%台を大きく引き離している。

 100円から1000円まで多彩な価格で攻めるダイソー、100円均一をあくまで守るセリア。デザイン性とこだわりで2強と差別化したいキャンドゥ。2強の隙間を突く立地戦略のワッツ。

 100円ショップ各社は、どの店もよく似ている“均一性”から脱却し、独自のブランドアイデンティティーで勝負するように進化した。その魅力が巣ごもり消費によって、生活者に再発見され、好業績につながっている。

(長浜淳之介)