「ゴミが落ちていない」「日本はキレイな国だ」――。

 新型コロナウイルスの感染が広がる前、訪日外国人からこのような声を耳にすることがあったが、本当にそうなのだろうか。ちょっと古いデータになるが、旅行口コミサイト「トリップアドバイザー」が実施した「旅行者による世界の都市調査」(2014年)によると、街中の清潔度で「東京」が1位だったのだ。

 この結果に対して、筆者は半分納得、半分不服である。納得できるのは「トイレ」だ。海外に行くたびに「あ〜、日本のトイレはキレイだなあ」としみじみ感じるわけだが、不服なのは「ゴミ箱」である。1995年の地下鉄サリン事件以降、首都圏を中心に街中のゴミ箱は大幅に減少した。大通りや駅のホームなどからも消えてしまった(または減少した)ので、「ゴミをどこに捨てればいいのか」と困ったことがある人も多いはず。一方、欧米の街中を歩くと、1ブロックごとに大きなゴミ箱が設置されているところもある。

 てなわけで、街の清潔度ランキングで「東京が1位」であることに、違和感アリアリであるが、そんなネガティブな感情も“キレイ”さっぱり忘れてしまう――。そのように感じるほどのゴミ箱が登場した。IoT技術を活用したスマートゴミ箱「SmaGO(スマゴ)」である。「IoTのゴミ箱? 聞いたこともなければ、見たこともないよ」といった人もいると思うので、簡単に紹介しよう。

 SmaGOは米BigBelly Solor社が開発したモノで、日本ではフォーステック社(東京都港区)が展開している。米国のニューヨーク、フランス、英国、ドイツ、アイルランドなど、世界50カ国以上の自治体で導入していて、日本に上陸したのは2020年10月8日のことである。表参道沿いの歩道に、34台設置した。

●SmaGOの特徴は3つ

 SmaGOには、大きな特徴が3つある。1つは、箱の上部にソーラーパネルを設置しているので、いわば“自給自足”で動くことができる。2つめは、ゴミがたまってくると自動で圧縮されるので、通常のゴミ箱と比べ5〜6倍の容量を捨てることができる。3つめは、3G通信機能によって、ゴミの蓄積状況がクラウド上でリアルタイムに把握することができる。

 ゴミが増えてくれば自動で圧縮して、ゴミ箱ごとにたまり具合が分かる。こうした機能が搭載されていれば、ゴミの回収作業を効率よくすることができ、コスト削減にもつなげることができる。すでに導入している海外では、そのような結果が出ているのだ。

 ふむふむ、導入している海外の自治体で、成功事例が出ているようである。しかし、日本ではゴミ箱が少ない。そんな状況の中で、なぜIoTゴミ箱なるモノを輸入して、展開しようと思ったのだろうか。フォーステック社の竹村陽平社長に聞いたところ「海外から『日本はキレイな国』と言われていますが、街中でゴミを捨てる人がいますよね。また海洋ゴミの多くは街中のゴミが原因なので、この問題をなんとかすることはできないかと考えていました」とのこと。

 米国でSmaGOを目にした竹村さんは、日本での導入を考えたものの、大きな壁が待っていた。行政がなかなか「GO」を出さなかったのだ。

 SmaGOを設置にするにあたって、表参道沿いの歩道に狙いを定めた。歩道には、たくさんの人が歩いている。食べ歩きしている人もいて、たくさんのゴミが出る。商店街の人たちも、そのことに頭を悩ませていて、ゴミ箱を設置するものの、すぐにゴミがあふれる。あふれたゴミの上に、ゴミを捨てる人が次々にあらわれ、悪循環に陥っていたのだ。

 そんな状況をなんとかしたいと考え、SmaGOの設置を進めるものの、行政が首をなかなか縦にふらない。なぜなら、表参道の歩道は、東京都が所有しているから。しかも、このゴミ箱の表面には「広告掲載」を考えていた。このことも、許可に時間を要し、結果1年半ほどの時間がかかったのだ。

●コスト削減に効果

 ゴミ箱の表面に広告を掲載すると、いろいろと時間がかかってしまう。それでも掲載しなければいけない理由があった。

 「米国の街中には、たくさんのゴミ箱があるんですよね。例えば、既存のゴミ箱100個あったところに、SmaGO100台を設置すればどうなるのか。ゴミの回収コストが削減されるので、導入が進みました。

 一方の日本はどうか。ゴミ箱がないところに設置することになるので、コストがかかっていないところに置くことになる。つまり、新たなコストが発生することになるので、導入が難しいのではないかと思いました。こうした背景があったので、企業と一緒になって街中をキレイにすることはできないかと考え、広告掲載というビジネスモデルにしました」(竹村さん)

 行政の担当者と交渉を重ね、なんとかIoTゴミ箱を設置することができた。日本での設置にあたって、竹村さんは「ゴミ箱をキレイに保つことを心がけた」という。ゴミ箱からゴミがあふれていると、人はその周囲にモノを捨てる傾向がある。そうなってはいけないので、ゴミが60〜80%ほどたまってきたら、回収するようにしたという。

 また、ゴミ箱を拭(ふ)くなど、毎日の清掃も欠かさないようにした。ゴミ箱がいつもキレイであれば、利用者もキレイに使おうとする。みんなでキレイに使うことができれば、気持ちがいい。こうした人間の心理を考えて、ゴミ箱の保守・管理にチカラを入れたのだ。

 で、1年ほど運用してみて、どのような“結果”が出たのだろうか。表参道で従来型のゴミ箱を設置していたとき、商店街の人たちは1日3回ほど「ゴミがあふれていないかな?」「そろそろ回収したほうがいいのでは?」などと心配になって、チェックして回っていた。もちろん、いま、そんなことはしていない。とある商業施設でも導入したところ、以前はゴミ箱を監視する人を常駐させていた。もちろん、いま、そんな人はいない。

 ゴミの回収頻度を減らすことによって、コスト削減につなげることができた。当初の予定通りである。竹村さんにとって、うれしいことがもう一つあった。「ゴミをあふれさせたことがなかった」のだ。SmaGOを導入するにあたって心がけていたことを実践して、それが成果につながったのである。

●年300台ペースで増やしていきたい

 こうした事例を積み重ねていって、いまでは各方面から「ウチにもウチにも」といった感じで、引き合いの声があるそうだ。年内に数カ所設置することが決まっていて、「今後5年間は、年300台ペースで増やしていきたい」とのこと。

 設置台数が増えると、捨てる側の意識に変化が出てきそうだが、それはどういったものなのか。竹村さんは、このように予測する。

 「海外では『ゴミ=資源』という認識が広がっていますが、日本ではまだまだ。現状こうした状況ですが、表参道で集めたゴミでTシャツをつくればどうなるのか。それを販売すればどうなるか。自分たちが捨てたゴミが資源になって、それがカッコイイTシャツになれば、意識が少しずつ変化していくと思っています」

(土肥義則)