NTTドコモは、4月28日に2019年度の決算説明会を開催した。2019年6月に導入された新料金プランの影響を受け、通期での業績は減収減益に転じた。特に営業利益は-15.7%と大きく減少している。この状況に追い打ちをかけるのが、3月以降急速に拡大している新型コロナウイルスだ。収束の見通しが不明なこともあり、業績予想は非公表となった。端末販売や5Gのネットワーク整備に対する影響も大きく、予断を許さない状況だ。ここでは、その詳細は見ていきたい。

●「ギガホ」「ギガライト」の導入で通信料収入は大幅に減少

 2019年度のドコモは、大幅な減収減益に見舞われた。通期の営業収益は4兆6513億円で、前年度から1896億円の減収。営業利益も1兆円を割って8547億円となり、1590億円の減益になった。ドコモの収益には2つの柱がある。1つが、モバイル通信料からなる「通信事業」。もう1つが、その上で展開するサービスの「スマートライフ領域」だ。減収減益の大きな要因は、前者の通信事業にある。

 内訳は、通信事業の営業収益が3兆6870億円、営業利益が7065億円で、前年度から2901億円の減収、1598億円の減収になった。対するスマートライフ領域はNTTぷららの子会社化の効果などもあり、営業収益が9977億円で1082億円の増収、営業利益も1481億円と、8億円の増益を記録している。通信料収入の落ち込みを、スマートライフ領域で補いきれなかったというわけだ。

 通信事業の減収減益は、「新料金プランのお客さま還元影響」(吉澤和弘社長)だという。2019年6月に導入した「ギガホ」「ギガライト」は、最大で4割の値下げになっている。新料金プランはいわゆる分離プランのため、コストとして計上される月々サポートが減り、ある程度減益を相殺できる構造だが、プラン変更は必須ではない。そのため、月々サポートの適用が既に終わっているユーザーから移行が進むことになる。

 2019年度は、この影響が大きく出たといえる。なお、新料金プランの申し込み件数は3月末時点で1651万件に増加。吉澤氏によると、4月17日には1700万契約を突破したという。

 端末販売収入も2362億円減少している。コストを2056億円抑えられているため、収支では306億円の減少だが、営業収益に与えた影響は大きい。2019年10月には電気通信事業法が改正され、端末購入補助が最大2万円に制限された。それに伴い、ハイエンドモデルの売れ行きが停滞している。2019年度の販売台数は、スマートフォンとタブレットの合計で1291万8000台と、前年度の1478万1000台から、およそ186万台減少。ミドルレンジモデルの比率も上っているため、台数以上に収益への影響が大きくなったといえる。

●スマートライフ領域は拡大するも、販売促進が重しに

 一方で、スマートライフ領域は、NTTぷららを子会社化した影響もあり、営業収益1兆円にリーチがかかった。ただし、営業利益は8億円増の1481億円とほぼ横ばい。年間予想として打ち出していた1600億円も未達になった。吉澤氏は「d払いや映像系サービスの販売促進の影響があった」と明かす。決済サービスのd払いは、競合他社の競争が激しく、ユーザーや加盟店の獲得を増やさなければならず、利用の促進も必要になる。映像系サービスも同様だ。

 結果として、金融・決済サービスは取扱高が大幅に伸び5兆円を突破。dカード契約数も1297万になった。中でもd払いが3.2倍と大幅に伸び、取扱高は4000億円に迫る3990億円に成長している。ユーザー数も、2019年度末で2526万人と2000万人を超えた。加盟店の数も「新たにユニクロや吉野家でご利用いただけるようになり、順調に拡大している」(同)という。

 dポイントの利用額も1998億円分になり、前年度から23%伸びた。加盟店での利用は1211億円で58%増になった。こうした結果に対し、吉澤氏は「国内有数の共通ポイントに成長したといえるのではないか」と自信をのぞかせる。公開されている指標が異なるため、厳密な比較はできないが、競合となる楽天スーパーポイントが2019年実績の年間発行額が3200億ポイント、5月からKDDIが導入するPontaはauが払い出すポイントとの合算で2000億ポイント超だが、規模感では、dポイントもこれらのサービスと同等かそれ以上になったと言えそうだ。

 こうした実績を踏まえ、吉澤氏は2020年度の取り組みの1つとして、「会員を軸とした事業運営の本格化」を挙げる。dポイントを通じて取得したデータを活用することで、「会員との強い顧客接点を構築し、デジタルマーケティングにおける最適なアプローチを実施していく」(同)という。2020年度は、通信分野で5Gの展開を拡大していくのと同時に、dポイントを通じた事業も本格化していく1年になる。

●減収減益からの脱却を目指すドコモに立ちはだかる新型コロナウイルス

 減収減益からの脱却を目指すドコモだが、新型コロナウイルスの感染拡大は、ドコモの事業にも大きな影響を与えている。インフラ事業で、ユーザーから毎月の通信料収入は得られるため、活動自粛を余儀なくされている他業種のような致命的な影響はないが、「業績そのものに、不確定なところがたくさんある」(吉澤氏)という。

 理由の1つが、ドコモショップへの来店が減少していることだ。「3月後半から4月にかけ、ドコモショップに業務制限、時間制限をかけたが、来客数はかなり落ちている。これが半年続くのか、1年続くのかが分からない。来客数の減少に伴い、端末販売数の収支がどう動くのかは大きい」(同)。吉澤氏によると、4月の第2週は、全国で来店数が7割減少したという。

 吉澤氏が「特に60代、70代の方の来店が少なくなっている」と語るように、フィーチャーフォンからスマートフォンへの移行ペースも鈍っているようだ。こうしたユーザーが、フィーチャーフォンに止まってしまうと、端末販売収益だけでなく、APURにも影響を及ぼす。「本来であれば、そういった方がスマートフォンに移行することでのAPRU増がもっと考えられる」というわけだ。

 決算発表では挙げられなかったが、「iPhone SE」や「LG V60 ThinQ 5G」などの発売も、軒並み5月に延期されている。総務省の要請もあったためとみられるが、こうした措置も、端末販売台数の落ち込みに拍車を掛ける可能性がある。実際、「3月後半についても販売数の減、販売手数料のインセンティブの減という影響は出ている。4月にも、そういう影響がある」といい、端末の販売には急ブレーキがかかってしまっているようだ。

 トラフィックについては、音声通話が増加、データ通信が微増になった一方で、海外からの渡航者が激減した結果、国際ローミングのトラフィックも大幅に減少した。外出自粛が拡大することで、d払いやdカードでの決済も落ち込んでいるという。これらに加えて、5Gのネットワーク構築を中心とした設備投資も、減少してしまう可能性がある。ネットワーク機器の調達や工事に遅れが出てしまうからだ。

 吉澤氏によると、「2020年度末の500都市は絶対にやっていきたいが、この状況が同じように続くとなると、来年度(2021年6月予定)の1万局がかなり難しくなる。何千、何百の減になるのかは調整を図っていくが、いずれにせよ、影響は出てくる」という。2021年度の1万局達成は、当初、総務省に提出していた計画を前倒しで実現しようとしていた目標だが、新型コロナウイルスの感染拡大によって基地局設置のペースが上げづらくなってしまった。

 設備投資の減少は、短期的にはコスト削減につながる一方で、エリアの拡大に遅れが生じれば、5Gへの移行計画が狂うことにもなりかねない。ドコモにとって、予断を許さない状況が続いているといえそうだ。