初の5G対応Xperiaとして発売される「Xperia 1 II」が、ドコモとauから出そろった。「Xperia 1」の純粋な後継で、型番にも「II(マークツー)」が入った同機だが、通信方式だけでなく、カメラも大きく進化。デザインもXperia 1より洗練され、“Xperiaの反転攻勢”を支える1台に仕上がっている。2月にグローバルで発表された際にも大きな話題を呼んだ。筆者もドコモ版の発売に合わせて、この端末を入手。2週間ほどメインの端末として使い込んできた。実機から見えてきた、ソニーモバイルの狙いを解説していきたい。

●品質の高いディスプレイ、ノッチなしのこだわりも評価

 Xperia 1 IIは、Xperia 1で導入した21:9の4Kディスプレイを継承している。1画面に収める情報量の多さと、持ちやすさを両立できるのが、このアスペクト比のメリットだ。筆者がXperia 1 IIの前にサムスン電子の「Galaxy Note10+」を使用していたこともあって、手へのなじみがよくなったと感じた。4Kの解像感はこのサイズだと分かりづらいが、標準設定のままでも色のバランスはよく、有機EL特有の不自然な派手さもない。チューニングが行き届いている印象だ。

 ソニーモバイルは、Xperia 1のころからソニーの厚木テクノロジーセンターとの連携を強化しており、業務用ディスプレイのノウハウが注入されている。Xperia 1 IIにも、その成果が生かされているといえる。なお、ディスプレイの画質は、標準設定だとオリジナルの色域を拡張した「スタンダードモード」に設定されているが、手動で「BT.2020」の色域に準拠した「クリエイターモード」に変更することもできる。

 色域を拡張していることもあり、スタンダードモードの方が全体的にパキっとコントラストが強くなり、アプリ内の文字や写真などが見やすい。一方で、映像制作者の意図を反映した画質で見たいときは、クリエイターモードがおすすめだ。標準設定では、特定アプリで自動的にクリエイターモードになる「自動クリエイターモード」がオンになっているので、基本的にはそのまま使うといいだろう。筆者のユースケースの場合、Netflixで映像を見たときに、クリエイターモードが自動でオンになった。

 Xperia 1 IIからの機能として、ディスプレイのリフレッシュレートを90Hz相当に上げる「残像低減設定」も用意されている。ただし、90Hz“相当”というのは、一律でリフレッシュレートを上げていないためだ。映像が切り替わるタイミングで高電圧をかけ、処理を高速化している。オンにすると、確かにスクロールが滑らかになった気がするが、オフのときと明確な差があるかというと少々微妙なところ。動画やゲームなどで映像にこだわる人にいいかもしれないが、ブラウジングや実用的なアプリを使った場合の効果は限定的だ。

 最近のスマートフォンの多くは、画面占有率を上げるため、「ノッチ」や「パンチホール」が設けられている。ベゼルに載せられなくなったインカメラなどのパーツを、ディスプレイ内部に入れるためだ。これに対し、Xperia 1 IIはあえてベゼルを残し、ディスプレイは角が丸い長方形になっている。映像を全画面に広げて見る場合、ノッチはどうしてもその妨げになる。無理に画面占有率を上げず、映像視聴を重視した方向性は、結果として差別化にもなっており、評価しておきたいポイントだ。

●スマートフォンのカメラとは一線を画した、デジタルカメラ風のUI

 最も大きく進化、変化したのが、カメラ機能だ。ここが他のスマートフォンとの大きな差分で、Xperia 1 IIはUI(ユーザーインタフェース)の設計思想や想定するユースケースなどが根本的に異なる。スマートフォンのカメラは、シャッターを押すだけで簡単に撮れ、しかも補正まで自動で行ってくれるのが昨今のトレンドだが、Xperia 1 IIはどちらかと言うと、デジタルカメラの発想に近い印象を受ける。同機が、ソニーのカメラのエントリーモデルに位置付けられていることからも、その傾向が見て取れる。

 ドコモ版の発売と同時に実施されたアップデートで対応した「Photography Pro」のUIから、そのことがよく分かるはずだ。まず、このアプリは一般的なスマートフォンのカメラアプリと異なり、側面に搭載されたシャッターキーで撮影することが前提になっている。画面上にシャッターボタンが現れないというわけだ。スマートフォンはデジタルカメラと比べ、物理的なキーやダイヤルが少ないため、シャッターキー以外の操作は、タッチパネルに最適化した形に落とし込まれている。

 Photography Proでは、「オート」「プログラム」「シャッター速度優先」「マニュアル」の4モードを切り替えることができ、露出やシャッター速度、ISO感度などもそれぞれ設定可能。デジタルカメラのダイヤルを回すのに相当する操作をするときは、端末のバイブがわずかに振動し、物理的なフィードバックが返ってくる。搭載されるカメラはトリプルカメラで、16mm、24mm、70mmの3つだが、これもどの一眼レフのように、どのレンズを使うかをユーザー側が明確に選択する必要がある。画素数を1220万画素にそろえているのも、レンズ交換を模したためだ。

 もちろん、通常のカメラアプリもそのまま搭載されており、スマートフォン風の撮影がいいというのであればそちらを選択してもいいが、Xperia 1 IIの売りの1つである秒間20枚の高速連写や、秒間60回のAF/AE演算は、Photography Proの専売特許。搭載されたカメラの実力を引き出すためにも、必須のアプリになっている。スマートフォンに搭載されたカメラというより、デジタルカメラの一部をスマートフォンに最適化する形で取り込んだのがXperia 1 IIで、設計思想が異なると述べたのは、このような理由からだ。

【訂正:2020年7月6日11時45分 初出時に「秒間30回のAF/AE演算」としていましたが、正しくは「秒間60回のAF/AE演算」です。おわびして訂正致します。】

●仕上がりもデジカメ的、連写機能は5Gとも高相性

 実際に撮影した写真の仕上がりも、非常にナチュラル。良くも悪くも、スマートフォンのトレンドとは少々異なる絵作りになっている。Photography Proでは、「ダイナミックレンジオプティマイザー」と「オートHDR」を選択でき、それぞれで画作りが異なるが、広角カメラのセンサーサイズが1/1.7型へと大型化したことで、夜景も明るく撮れるようになった。

 人物撮影もPhotography Proでは極端な補正がかからず、素直な写真が撮れる。連写機能も試してみたが、スマートフォンのカメラとは思えない速さで、写真を一気に撮ることができた。少しシャッターを押しっぱなしにしただけで、20枚、40枚、60枚と、どんどん写真が記録されていく。屋外で連続して連写を使っていると、少々端末が熱くなったのは気になる点だが、動きの激しい被写体を撮るときに役立ちそうだ。筆者も、子どもを撮影する際に高速連写を利用する機会が多いが、1枚1枚撮ったときでは残せなかった表情を切り取ることができ、非常に重宝している。

 一気に写真を撮って、バックグラウンドでGoogleフォトに写真をアップロードするという使い方は、5Gとの相性もいいと感じている。現時点ではエリアもスポット的で、5Gで接続できる場所は非常に限定されているが、サービス開始時よりは、5Gをつかむことも多くなっている。筆者の生活圏では、高輪ゲートウェイ駅周辺や渋谷駅周辺の一部が5Gエリア化され、狙って5Gエリアに行かなくても、1日に数回は5Gで通信できるようになった。もちろん、これはレアケースで、中には一度も5Gのアンテナマークを見たことがない人も多いと思われるが、今後のエリア拡大には期待しておきたい。

 屋外で何十枚もの写真をアップロードすると、通信容量もそれなりに多くなってしまう。高速通信以上に欠かせないのが、5Gで加入できる使い放題の料金プランだ。GoogleフォトのアップロードをWi-Fiのみに制限しておくという手もあるが、せっかくの連写機能や5Gを生かすなら、思う存分データ通信を使ってみたくなる。その意味で、Xperia 1 IIはドコモの「5Gギガホ」やauの「データMAXプラン 5G」とピッタリ合った端末といえそうだ。

●内蔵ソフトウェアはオリジナリティーに欠けるところも

 3.5mmのイヤフォンジャックも復活し、手持ちの有線イヤフォンを接続して使えるなど、音楽を楽しむ端末としても評価できる。音質もクリアで音にも厚みがある。AIを使って楽曲をハイレゾ相当にアップコンバートする「DSEE Ultimate」を新たに搭載していることも、音質のよさに貢献しているとみていいだろう。振動でサウンドの迫力を上げる「ダイナミックバイブレーション」も、引き続き搭載している。

 ソニーモバイルはXperia 1以降、「好きを極めたい人々」にターゲットを絞り、刺さる人に深く刺さるスマートフォンを開発する方針を明確化した。ただ、Xperia 1のときは、まだ粗削りな部分が多く、売りであるカメラについても、強い“ソニー色”までは出せていなかった。一方のXperia 1 IIは、ディスプレイやカメラ、音楽再生機能が強化されたことで、その方向性がより分かりやすくなった印象を受ける。トレンドに乗った端末ではないかもしれないが、それがいい意味での個性になっている。

 ただし、トレンドをやみくもに追わない方針が、少しだけ悪い方向に出てしまっている部分もある。内蔵アプリの少なさはその1つ。例えば、せっかくソニーモバイル独自のAIを活用した風の音を除去する機能が載っているにもかかわらず、ボイスレコーダーアプリが搭載されていない。ビジネスツールとして、最近ではどのスマートフォンにも当たり前のようにプリインストールされているため、いくら探してもボイスレコーダーが見つからないことに驚いてしまった。Google Playで探せばいい話だが、端末との相性もあって検証が手間になるため、標準で搭載されているに越したことはない。

 また、Xperia 1 IIでは、ソニーモバイル独自の「アルバム」アプリも搭載されていない。写真を美しく表示してくれるXperiaのアルバムアプリは、使い勝手もよかっただけに、少々残念だ。確かに機能的にはGoogleフォトで管理すればいいし、重複しているところもあるのは事実だが、カメラにこだわっている端末であれば、写真を上手に見せるソニーモバイルならではの工夫も欲しかった。

 カレンダーも同様で、Googleの標準アプリは、UIがこなれていない印象を受ける。21:9のディスプレイを存分に生かしたカレンダーアプリがあれば……と感じたところだ。文字入力アプリの「POBox Plus」も2019年10月以降の端末では廃止されており、Xperia 1 IIには搭載されていない。

 アプリではないが、セキュリティ機能として、顔認証にも非対応。側面に搭載された電源キーと一体になった指紋センサーは使い勝手がいい半面、本体を持ち上げただけで画面点灯からロック解除までができる他のスマートフォンと比べると、まどろっこしさを感じる。

 最後は少々辛口になってしまったが、ソニーモバイルが狙ったコンセプトは、Xperia 1 IIで完成に近づいたようにも感じている。ともすれば、トレンドに流され、どの端末も同じような機能や仕様になって選びづらくなっている中、Xperia 1 IIは同社のこだわりがしっかり伝わってくる。ハイエンドモデルのため、価格は10万円を超えてしまうが、その価値は十分あるスマートフォンだと評価できる。この機種を起点に、同社の反転攻勢にも期待したい。