9月に発表されたApple Watchの新モデルは2種類。前モデルから正統進化を遂げた「Apple Watch Series 6」と、価格を抑えた「Apple Watch SE」だ。本項では、実際に両機を使ってみた印象を交えつつ、購入検討時にどんなところにチェックすればいいのかを紹介していきたい。

●2モデルの違いを確認しよう

 Series 6とSEを腕に装着し、文字盤を表示して比較してみよう。実はこの状態で見た目に大きな差はない。ケースサイズの仕様は、Series 6が縦40×横34×厚さ10.7mmであり、SEが縦40×横34×厚さ10.7mm、と一致。両機ともにSeries 4で採用されたベゼルレスでコーナーがラウンドしたディスプレイを採用しており、ケースの4隅までを生かした文字盤デザインを楽しめる。

 ただし、デザインに違いがないわけではない。チェックするポイントは2つある。1つ目は、選択できるバリエーション。2つ目は常時表示ディスプレイの有無だ。

 1つ目の「選択できるバリエーション」については、Series 6の方が豊富だ。ケースの素材はアルミニウム、ステンレススチール、チタニウムの3種類を選択でき、仕上げは「スペースグレイ」「シルバー」「ゴールド」「グラファイト」「スペースブラック」「チタニウム」「ブルー」「レッド」の8種類がある。しかしSEは、ケースの素材がアルミニウムしかなく、仕上げも「スペースグレイ」「シルバー」「ゴールド」の基本3色のみ。

 ブランドとのコラボモデルについても、アルミニウムケースであるナイキモデルはSeries 6、SEともに選択できるが、ステンレススチールケースであるエルメスモデルはSeries 6のみで選べる点が異なる。

 日常やフィットネス利用を想定して軽量なアルミニウムケースを選択する人にはどちらのモデルを選んでもさほど差はない。しかし、予算が十分にあり、ドレスやスーツに合わせるためにステンレススチールやチタニウム特有の質感を求める場合や、ケースの側面そのものに、青や赤の色味が欲しいという場合は、この時点でSeries 6一択となるだろう。

 バンドについては、デフォルトのセットで「レザー」や「ステンレススチール」が選べるのはSeries 6のみとなっているが、「Apple Watch Studio」からカスタマイズすれば、SEでもこれらのバンドが選択できるようにはなっている。ただし、ケースに接する部分の素材の違いが目立ってしまうので、細部を気にする人にはイレギュラーな組み合わせはあまりお勧めしない。

 ちなみに、新たに追加された「ソロループ」バンドはどちらのモデルでも利用可能だ。留め具がなく、伸縮性のソフトシリコーンを使ったバンドゆえに、購入時のサイズ選択こそ慎重に行う必要はある。しかし、腕まわりが常に同じ厚みであるため、ノートPCを操作する際などにも邪魔にならない快適な装着感がメリットだ。

 2つ目の「常時表示ディスプレイ」については、Series 6のみが対応する。その名の通り、腕を動かさずとも画面が真っ暗になってしまわないため、常に時計らしいウォッチフェースデザインが楽しめる。ちなみに、常時表示以外の仕様について、すなわち解像度や輝度などについては、両機で特に違いはない。

 上述したような特徴を踏まえると、Apple Watchのファッションアイテムとしての側面を重視するならSeries 6を選ぶべきだと思う。反対に、そこを妥協でき、通知やアクティビティーの計測など、基本的なスマートウォッチとしての機能に期待するのならSEを選んだ方が価格を抑えられるというメリットがあるわけだ。

●ディスプレイの常時表示ってやっぱり便利?

 先述したSeries 6が対応する「常時表示ディスプレイ」が、どんな場面で便利なのかを考えてみたい。筆者が思う主なメリットは3つある。Series 5で導入された頃に既出の情報だが、あらためておさらいしておこう。

 1つ目は、使用者以外にも文字盤が見えることだ。常時表示非対応のApple Watchでは、周りから見たときに文字盤が真っ黒なまま。これが常時表示ディスプレイ対応モデルなら、ある程度他人からも見える状態になる。なお、コンプリケーションの表示について、カレンダーなどプライバシーに関する情報はしっかり伏せられるので安心だ。

 2つ目は、腕を動かさないときも画面表示をすぐに確認できることだ。例えば、満員電車で腕を動かせないとき、長距離の高速ドライブでハンドルを離せないとき、ノートPCでタイピングをしているときなど、常時表示があればそのまま時間を確認できるが、非対応モデルでは画面表示が真っ暗になってしまう。

 3つ目は、一部ワークアウトの進捗(しんちょく)を確認しやすいことだ。常時表示はワークアウトの計測中画面でも機能するため、例えばエアロバイクを漕いでいる間に心拍数などを確認しやすい。常時表示がないと、こうした計測中でも画面が真っ暗になってしまう点で異なる。

●Series 6の常時表示ディスプレイは何が便利?

 ただし、こうした特徴を備えていても、前世代のSeries 5(watchOS 6)の常時表示ディスプレイには、使い勝手の上で課題もあった。それは「常時表示中にタッチ操作ができなかった」という点だ。常時表示中のウォッチはあくまでスリープ状態だったので、画面タッチなどで一度スリープ復帰をしてから、再度タッチをして操作する必要があった。

 実は、watchOS 7ではこの点が改善されている。常時表示中に画面をタッチしても、スリープ復帰の時間のギャップを待たずに直接操作可能だ。例えば、常時表示中のコンプリケーションをタップしてアプリをショートカット起動したり、コントロールセンターや通知センターをサッと開いたりできる。筆者としてはこの改良が加わったことで、常時表示ディスプレイに対する不満が解消され、非常に頼もしい存在になったと感じた。

【訂正:2020年10月24日10時5分 初出時に、Apple Watch Series 6では常時表示中のスリープ時にタッチ操作が可能になった旨を記載していましたが、こちらはwatchOS 7で改善された機能のため、Series 5でも可能です。おわびして訂正致します。】

 また、Series 6の常時表示ディスプレイは輝度も上がっている。そのため、文字盤の細かい部分などの視認性が改善された。ただし、前モデルと比較して目を凝らしてチェックしなければ変わったかどうか気付かないくらいの差ではあるので、「常時表示でも少し見やすくなった」くらいの認識で問題ない。

●バッテリーの持ちに差はある?

 Apple Watch Series 6とSEの仕様を確認すると、バッテリー持ちは相変わらず「最大18時間」と表記されている。もちろん通信設定や文字盤のチョイスによっても大きく差が出るところだが、筆者が試した範囲では18時間以上は使えた。実際、常時表示ありでSeries 6を使ってみたが、終日使用する上で特に問題は感じなかった。うまく使えば、睡眠を挟んで翌日の朝くらいまで持つので、Series 5よりもバッテリー持ちが強化されている印象を受ける。

 一方、SEは、常時表示がない分、バッテリー持ちはさらに余裕がある。1.5日くらいは使える印象だ。

 もちろん、Series 6でもウォッチの「設定」アプリから「画面表示と明るさ」>「常にオン」をタップし、スイッチをオフにしておくだけで、常時表示をオフにすることが可能だ。充電機会が限られる場合には、こうした設定をいくつか施せばよいので、SEよりもSeries 6が不利になるということはないだろう。

 一方、充電速度には明確な差がある。Series 6は1.5時間でフル充電が可能だが、SEの場合はフル充電までに2.5時間かかるため、+1時間分長くなってしまう。例えば、夜間に充電を忘れて朝の支度の間に充電するようなシーン、あるいは帰宅後に充電をしてからジョギングに行くまでに充電するようなシーンで、より素早くチャージできるのはSeries 6ならではの魅力だ。

 なお、ワークアウト時のバッテリー持ちとして公開されている値に、両機で差があることも知っておこう。Series 6の場合、屋内ワークアウトで最大11時間、GPSを使用した屋外ワークアウトで最大7時間、GPSと4G LTEを使用した屋外ワークアウトで最大6時間だ。一方、SEではそれぞれ1時間分短い、最大10時間、最大6時間、最大5時間となっている。

 さすがに5時間の屋外ワークアウトを実施する時間(と体力)が用意できなかったので、今回は検証できていないが、数値を信じると4G LTE利用でも6時間バッテリーが持つSeries 6は魅力的といえる。例えば、フルマラソンで完走を目的とする初心者の目標タイムが5〜6時間程度といわれているので、SEではモバイル通信をオフにしないと電池切れになってしまうが、Series 6ならオンのまま走れることになる。

●血中酸素の測定ってどうなの?

 新たに追加された機能としては、常時計測対応の高度計と、血中酸素ウェルネスの2点がある。前者はSeries 6とSEで共通して使えるが、後者はSeries 6だけの機能であるという意味で、ここで確認しておきたい。

 この血中酸素ウェルネス機能は、「SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)」という値を、簡易的に測定できるものだ。血中の酸素は、赤血球が含むヘモグロビンが結合して運ばれる仕組み。SpO2はこのヘモグロビンが酸素と結合している割合を%で示す。医療シーンでは、この測定に「パルスオキシメーター」という機器が使われており、指先に挟むようなスタイルで計測を行う。Apple Watch Series 6では、これを腕の装着部で行う。そのため、Appleもあくまで「医療用ではなく、フィットネスとウェルネスを目的としてもの」として同様の機能を提供しているのが現状だ。

 血中酸素ウェルネス機能で、計測が実施されるタイミングは主に2通り。同名のアプリを手動で起動しての測定と、バックグラウンドでの測定だ。計測は非常に繊細で、腕を動かすとエラーが起きて中断されてしまう。15秒間膝上や机の上に固定しておかなければいけないので、使用難度は高い。例えば、ランニングしながら血中酸素を知りたいといった使い方はできないわけだ。一度立ち止まってベンチに座り、膝に15秒間腕を固定して計測を行う必要がある。

 はっきり言ってしまうと、日常的なフィットネス利用では特段気にしなくてよい機能だと筆者は思った。もちろん、マラソンやトライアスロンなどのエンデュランススポーツの競技者、あるいは、トレーニングを必要とするレベルの登山に挑む人などが低酸素トレーニングを行うような場合には、トレーニング強度の参考になるかもしれないが、筆者の推測の域を出ない。

 むしろ、マラソンの市民ランナーレベルであれば、従来モデルでも「ヘルスケア」アプリ内から確認できた「酸素最大摂取量(VO2MA×)」の方が、持久力の指標としては親しみやすいのではないだろうか。

 もちろん、健康管理に関しては、例えば、睡眠中の血中酸素ウェルネスの値をチェックすることで、睡眠時無呼吸症候群などのセルフチェックにはなるとは思う。また、日常的に計測することで、呼吸器系の異常に気付くきっかけになる可能性もあるだろう。この点は、従来の心拍の異常をモニターするのと同様、「転ばぬ先のつえ」としての認識でよさそうだ。

●どのモデルを購入すべきか

 上述した内容をまとめると、Apple Watch Series 6を買うべきなのは、ファッションアイテムとしてケースの素材やバンドの組み合わせにこだわりたい人や、急速充電を使いたい人、マラソンのトレーニング中などにもモバイル通信を利用したい人などが挙げられるだろう。

 一方、SEを購入すべきなのは、軽量なアルミニウムケースを選択し、常時ディスプレイの存在を重視しない人。そして、ワークアウト時のモバイル通信を重視しない人、だといえそうだ。

 最後になるが、Series 6の価格はGPSモデルが4万2800円(税別、以下同)から、GPS+Cellularモデルが5万3800円から、SEの価格はGPSモデルが2万9800円から、GPS+Cellularモデルが3万4800円から。4万円以上の予算が出せるかどうかも、どちらのモデルを購入するかの決め手となるだろう。