1989年に携帯電話「HP-101」の発売から始まった、京セラの携帯通信事業が30周年を迎えた。京セラは「30th Anniversary 特別企画」として、5つのテーマに渡って全5回で通信事業に関する記者説明会を開催する。第1回目は11月25日にオンラインで開催し、シニア向け事業について説明した。また、大きな鏡(ディスプレイ)を使ってコミュニケーションする通信機器のコンセプトを紹介した。

 冒頭、京セラ 取締役執行役員常務 通信機器事業本部長の厳島圭司氏が、京セラ通信事業の歴史と将来ビジョンについて説明した。

●通信事業30周年を振り返る

 京セラの通信事業は1982年に、当時無線事業を行っていたサイバネット工業を合併したのが始まり。その後、コードレス電話の開発を経て、1989年に携帯電話の1号機となるHP-101を発売した。

 当時は音声コミュニケーションが主流の携帯電話の黎明(れいめい)期。通話品質の向上や小型軽量化などが進んだ。2000年代は通信が3Gとなり、高画素カメラやブラウザなどの機能も進化。ユーザーは全年代に広がり、京セラもさまざまなニーズに応える形で多彩な製品を市場に送り出してきた。この10年はスマホの時代となり、人にとって、なくてはならないものとなっている。

 厳島氏は「そうした製品を開発・製造することは非常に意義があり、責任も感じている」と述べ、コロナ禍でオンライン化が加速し、通信機器は社会インフラとしても重要になっている状況を振り返った。「30周年を機会に改めて自分たちの役割、責任を再認識するとともに、今後も変わらず、お客さまに寄り添った商品を通じて価値を提供し続けたい」と意気込みを語った。

 今後は端末の開発・製造だけでなく、政府の提唱する「Society 5.0」を見据えて、生活を豊かにすることを目指すという。スマホやウェアラブルなど、人とモノをつなぐHMI(Human Machine Interface)製品、通信ユニットやモジュールなどモノ同士をつなぐM2M製品、パートナー連携によるソリューション提供を通じて、「あらゆるものにインテリジェントコネクティビティを付加し、モノ同士をつなぐことで新たなコトを創出するようなビジネスを展開したい」とビジョンを語った。

 このビジョン実現のため、現在注力している分野が「シニア」「法人」「高耐久」「キッズ」「5G&IoT」の5つ。この5つの事業の展望について、毎月1回、5回にわたって発表するという。

●社会とつながる分岐点となる製品を提供する

 第1回では、シニア向けビジネスについて、部門リーダーである通信事業戦略部 シニア・ビジネスユニット 伊東恭弘氏が説明した。

 京セラは「Social Gate(ソーシャルゲート)」をコンセプトに、スマホだけでなく、タブレットやIoT、人と人とのコミュニケーションに至るまで、シニアと家族、友人をつなげるさまざまなものを提供していくという。

 ソーシャルゲートとは、進化スピードが速いスマホなど情報機器に苦手意識を持ってしまい、社会とのつながりが希薄化している人たちに、社会とつながる道を示す扉を意味する。「超特急で進んでいる進化の線路に分岐点を作り、苦手意識を持っている方々も楽しく、喜びを感じられ、社会とのつながりを持ち続けられる情報機器を開発していく。この分岐点こそが社会とつながるソーシャルゲート」(伊東氏)となる。

 京セラのそうした姿勢を示す製品に、説明書がない通話専用ケータイ「ツーカーS」という端末がある。発売は2004年。当時のキャリア、ツーカーとの合同企画で生まれた製品で、必要と考えられてきた説明書をパッケージから省いた。主流である機能重視の路線から外れることになるので、当時は反対意見も多かったが、大きな反応がありヒット商品となった。

 この頃から京セラのシニア事業が本格化。「お客さまの気持ちに徹底的に寄り添うという言葉が生まれ、現在も根付いている」(伊東氏)

 京セラのシニア向け携帯電話およびスマホは累計出荷台数1200万台を突破。今後も時代に合わせた改良を加えた端末を提供し続けるという。また、端末の開発だけでなく、最近では地域貢献活動としてスマホ教室も開催している。

 一方で、価値観や生活様式が多様化していく中、シニアの行動パターンも多様化。「多様化するシニアにテクノロジーをどういう風に合わせていくか、という仕組み作りが必要になってくる。これまでの知見を生かして、シニア事業はあらゆる世代がつながる社会に向けて取り組む」(伊東氏)

●通信機能やセンサーを搭載した大きなディスプレイで会話

 今後はスマホにとどまらず、シニアと社会を結ぶための通信機器を提供していくという。その一例として紹介したのが、大きな鏡のようなディスプレイデバイス「Smart Gate」だ。ディスプレイに呼びかけると、呼びかけられた相手がまるで隣の部屋にいるように応えて、こちらをのぞき込んでくる。「通信で物理的な距離をゼロにすることで、いつでも隣に家族がいるような安心感を醸成する」(伊東氏)ことが狙いだ。

 現状はあくまでコンセプトだが、団塊の世代が後期高齢者になり、シニア人口がピークになる2025年頃を目指して開発を進める。各機能それぞれは現状でも実現できるが、「この大きさの鏡になると、熱、電力、コスト、通信速度の問題がある」と伊東氏は指摘。しかし「5Gのインフラが整い、次の6G、Wi-Fi 6といった高速大容量の世代になるとクリアできる」という。

 また、今はスマホとつなげているウェアラブル機器。今後は家電製品はもとより、クルマ、引いては街そのものとつながっていくという。伊東氏は「さまざまな情報が連動してスマートシティーを形成し、街全体で安全な生活を担保していく。そんな社会を作る一端を担うデバイスをこれから開発していく」とビジョンを語った。