東北に甚大な被害を与えた東日本大震災から9年。三陸鉄道が全線開通するなど、鉄道も復興への道を着々と歩んでいます(三陸鉄道は台風により再び被害を受けましたが……)。このうち気仙沼線と大船渡線は「BRT」という形での復旧となりました。つまり鉄道ではなく、バスが専用軌道を走っているのです。

●連載:非テツでも楽しめる、テツ好きが注目するチマタの話題

ここでは鉄道に関するちょっとした豆知識をお伝えすることで、何となく知識が増えたなとか、みんなが知らないことが自慢できたりとか、まあそんなことを目指してお届けしていく、テツの与太話です(作倉瑞歩)

●バスが専用軌道を走る高速輸送システム

 BRTとは「バス・ラピッド・トランジット」(Bus Rapid Transit)の頭文字を取った言葉です。日本語に訳すと「バス高速輸送システム」。気仙沼線と大船渡線の津波被害にあった箇所については、鉄道ではなくバスを運行して乗客を運ぶという選択になりました。気仙沼線は柳津から気仙沼まで、大船渡線は気仙沼から盛までがBRTとして運行されています。

 BRTのメリットは何といってもコストの安さ。気仙沼線と大船渡線を復旧するには総額で約1100億円掛かると試算され、なおかつ復旧後は利用者が減少する見込みのため鉄道での復旧を断念、BRTを走らせることになりました。鉄道車両を作るにはバスに比べて何倍、あるいは何十倍もの費用が掛かりますし、線路を引くよりも道路をアスファルト舗装した方が安いのは当然です。また線路を敷設するよりも舗装した方がはるかに短時間で復旧できます。実際、気仙沼線は2012年8月、大船渡線は13年3月に開通しています(三陸鉄道が全通したのは14年4月)。

 路線の収支を表す指標として「営業係数」があります。これは100円の営業収入を得るためにかかる費用を示す値で、営業係数が100未満なら黒字、100以上なら赤字となります。「週刊東洋経済」の調べによると、気仙沼線の営業係数は2009年度は656.9だったのが、BRT開通後の2014年度は255.2、大船渡線は同671.1が248.5へと大幅に改善しました。赤字であるのは変わりませんが、BRTにより赤字幅をかなり抑えることに成功しています。

 また路線をBRT化するにあたっては、従来の駅(停留所)だけでなく、新駅も設置されました。運行本数も鉄道が走っていたときの約3倍に増えるなど、利便性の向上が図られています。このあたりが地域の方々に受け入れられた理由かもしれません。

 気仙沼線と大船渡線のBRTは、一部専用道路を走るため、自動運転化についての検討も始まっているようです。2019年1月の大船渡線に続き、今年の2月18日には気仙沼線の柳津駅〜陸前横山駅間を利用した実証実験も実施。実用化への模索が始まっています。

 ちなみに「駅」という呼び方ですが、BRTの場合は、一般乗合旅客自動車運送事業での「停留所」が正しい呼称です。ただし気仙沼線と大船渡線の場合は、元鉄道ということもあって全て「駅」となっています。

 日本全国を見ると、専用道路を持つBRTは気仙沼線・大船渡線以外にも、福島県白河市と棚倉町を結ぶ「白棚線」、鹿島鉄道の廃線跡を利用した、茨城県石岡市を走る「かしてつバス」、日立電鉄線の廃線跡を利用した、茨城県日立市を走る「ひたちBRT」、愛知県名古屋市と春日井市、尾張旭市を結ぶ「ゆとりーとライン」があります。

●東京にもBRTが走る

 BRTは地方ローカル線の代替だけではありません。東京でも「TOKYO BRT」が計画されており、5月24日よりプレ運行(一次)が開始される予定です。運行されるルートは以下の通りです。

・プレ運行(一次):5月24日に開始予定

 虎ノ門ヒルズ、新橋、勝どきBRT、晴海BRTターミナル

・プレ運行(二次):オリンピック開催後を予定

 (1)虎ノ門ヒルズ、新橋、勝どきBRT、晴海中央、晴海BRTターミナル、豊洲、豊洲市場前

 (2)虎ノ門ヒルズ、新橋、勝どきBRT、豊洲市場前、有明テニスの森、国際展示場、東京テレポート

・本格プレ運行:2022年以降を予定

 (1)虎ノ門ヒルズ、新橋、勝どきBRT、晴海中央、晴海BRTターミナル、豊洲、豊洲市場前

 (2)虎ノ門ヒルズ、新橋、勝どきBRT、豊洲市場前、有明テニスの森、国際展示場、東京テレポート

 (3)新橋、勝どきBRT、晴海地域(詳細未定)

 (4)新橋、勝どきBRT

 路線を見て分かるように、東京湾岸地域に現在走っている交通網をさらに強化するものとなっています。詳細はTOKYO BRTのWebサイトに掲載されていますので、気になる方はチェックしてみてください。

 ただし、この運行開始スケジュールについては、新型コロナウイルスの感染拡大や東京オリンピック・パラリンピックの延期により不確定要素が増えてしまいました。事実、TOKYO BRTは4月30日に「東京BRTの運行方針について」という告知を出し、「状況の推移を注視し、運行方針に変更が生じた場合には公表する」としています。果たして上記の予定通りに走れるのでしょうか。