みんなー! 家で遊んでいてえらいなっ。今はストリーミングコンテンツやオンラインゲームがあるから引きこもっていても結構遊べるしね(新型コロナウイルスの感染が広がる前からそうだった俺たち)。

 最近テレビなんかを見ていると家族でボードゲームをやっている人が意外と増えていて、実際ボードゲームの売れ行きも伸びているようだ。

 とはいえ、ここにきてよく聞こえてくるのが「ボードゲームはやり尽くしたので飽きちゃった」という声だ。確かに今人気のあるパーティーゲーム系だとゲーム時間は10分前後だし、「重ゲー」といわれている長めのボードゲームでも今では1時間程度で終わってしまう。

 「もっと長く遊べるボードゲームってないの?」と飢えているお前さんたち、これでもくらいな!

 ずずぅぅぅぅぅんんん!

 これぞボードウォーゲーム界のレジェンド、SPIの「War in the Pacific」だ。え、ボードウォーゲームってなんですかって?

 ボードウォーゲームとは、読んで字のごとく、実際にあった「戦い」(あと「実際にはなかったけれど起こりえたかもしれない戦い」「もしかすると将来起こり得るかもしれない戦い」「映画やドラマなどで起きた戦い」など)を再現するボードゲームだ。

 1980年代に日本でも一大ブームとなったが、その後90年代にテーブルトークRPGやデジタルゲームの登場で、それこそ絶滅寸前まで衰退してしまった。しかし、長い氷河期をしぶとく生き抜き、今では日本語ルールが付属する新作が数多く登場して日本語で読める定期刊行専門誌が2媒体(濃い目の小規模媒体を含めるとさらに増える)も存在する。店頭で見かける機会はまだまだ少ないけれど、新作の品数や専門誌、そして個人のSNSを含めた情報量などは、往時のブームに匹敵するまでに復活している印象だ。

●100時間遊べる? ボードウォーゲームを紹介

 War in the Pacificは、太平洋戦争を題材としたボードウォーゲームで駒の数は3200個以上、ゲーム版になるマップはA1サイズ(正しくは34×22インチ)で7枚、ルールブックは75ページという代物だ。

 ゲーム時間は公称20時間だけれど、開戦から終戦までのフルキャンペーンをやったら100時間はかかりそうというか、米海軍のアナポリスがオペレーションリサーチ研究の一環として試しに始めてみたら途中で挫折したという逸話があるほど。

 ボードウォーゲームについては「やたらとルールが複雑でゲーム時間が長い廃人ゲー」というイメージを持つ人が多い。実際、ユーロゲームやパーティーゲームと比べると、ルールが複雑でゲーム時間も長いボードウォーゲームが多いのも事実だ(ルールが複雑なユーロゲームもあるが)。

 ただ、これらの要素はボードウォーゲームが題材とする戦いを再現するためのものなので、決して無駄なものではなく、むしろ一層興味深く有意義なゲームの時間を過ごすために必要なものだ。

 もちろん、ボードウォーゲームのデザインも長い年月を経て進化しており、少ない数の駒やコンパクトなマップ、シンプルなルールに短いプレイ時間でも、ビッグなボードウォーゲームに負けない史実再現性と思考の複雑さを備えた新作が数多く登場している。正しく言うと、以前のブームのときにもそのようなボードウォーゲームは存在していたが、当時は「複雑で精緻なルールがスゴイエライ」という価値観が大勢を占めていたため目立たなかった。なので、初めての人がボードウォーゲームをプレイするハードルは低くなってきている。

 さらに、80年代のブームが衰退する大きな原因でもあった「一緒にプレイする人がいない」「ボードウォーゲームを広げる場所がない」「プレイが終わるまで広げたままにできる場所もない」という問題も解決しつつある。

 SNSの普及でボードウォーゲームサークルが情報発信できるようになったおかげで、それまで個々人で楽しんでいたソロプレイヤーやルールブックアナリストがプレイ仲間を見つけられるようになり、これが現在のボードウォーゲーム再興に貢献している。彼らはそれまで、ボードウォーゲームを広げるスペースも確保できず、ルールブックや戦闘解決表の熟読に徹し、ゲームデザインの分析や成功する可能性の高い戦術の研究に1人でいそしんできたのだ。

 サークルの例会は多くの場合、公民館や会議室などを利用する。広いスペースと複数の机を確保して大抵のボードウォーゲームを広げられるし、連休などでは2日間連続で会場を確保するときもあるので、そのような場合は時間のかかるボードウォーゲームを広げたまま連日プレイできる。もちろん、プレイする相手も見つけられる。

 というわけで、「短い時間で遊べるパーティーゲームはやりつくして手持ちぶさたである」などという人は、ボードウォーゲームで暇な時間を思う存分燃やし尽くされてはいかがだろうか。

「でもさ」

「はい」

「そうはいっても」

「はい」

「いま例会開けないし」

「ですよね」

「いま人の家に遊びに行けないし呼べないし」

「ですよね」

 実は、ボードウォーゲームには長い歴史と実績があるリモート対戦ツールが存在する。それが、「VASSAL」だ。そもそもこのツールは、生息数が極端に少なく出会う機会がめったにないウォーゲーマーたちが、遠く離れて分散していてもボードウォーゲームをプレイできるように開発されたもの。ある意味「ボードウォーゲームが氷河期を生き抜くため」のサバイバルツールといえる。それが令和の時代に「緊急避難的籠城戦」を行っている今、このツールがボードウォーゲームをプレイする数少ない機会を提供してくれる。

●リモートで「ボードウォーゲーム」やらない?

 VASSALはPCで動作するので見た目はデジタルゲームだが、PC用ゲームやスマートフォンゲームと違い、ゲームの進行や戦闘での処理を自動で行うような機能はなく、対戦相手になってくれる思考ルーチンも実装していない。つまり、アナログのボードウォーゲームをデジタルに置き換えてマップや駒を共有するリモート対戦ツールに徹している。だから、対戦するプレイヤーは自分たちでルールを把握し、ルール通りに駒を動かさないと対戦が成立しない。その代わり、観戦機能やダイスを振ってくれる機能などを用意している。

 VASSALはJava上で動作するアプリで、その役割はネットワークで接続したPCでリモート対戦するための土台に過ぎない。ボートウォーゲームそれぞれのデジタル化したマップや駒は、ボードウォーゲームの製品ごとに用意した「VASSAL用のモジュール」で提供される。VASSALでボードウォーゲームをリモート対戦したいならば、VASSAL本体をPCにインストールし、プレイしたいボードウォーゲームのVASSAL用モジュールを導入する必要がある。

 VASSALのアプリはWebサイト「VASSAL Team」からインストールできる。日本語の解説は「VASSAL Japan web site」にまとまっている。どちらも最終更新から日がたっているが、VASSALを使う上では問題ない。

●より簡単なリモート対戦の方法も

 ただ、VASSAL用モジュールを用意されていないボードウォーゲームはリモート対戦ができない。しかし、長い歴史と常に対戦相手を探すのに苦労してきた経験を持つボードウォーゲームには、遠く離れた相手とプレイする方法がいくつか発案されている。

 アナログ的な手法として代表的なのが「次の駒の動きを書いた手紙をやり取りしてプレイする」というもの。「メール対戦」や「PBEM」などと呼ばれ、ボードウォーゲームに限らずテーブルトークRPGなどでも活用されてきた。この方法では1つのゲームを1年近くかけてプレイすることもあったというが、現代ではメールやチャットアプリを使って短時間でプレイできる。

 この手法を進化させたのが、今急速にユーザーが増えているビデオ会議ツールを使ったものだ。お互いのマップを自身のWebカメラで映して、相手が動かした通りに自分のマップでも相手のコマを動かすことで対戦できる。VASSALモジュールを作る必要はなく、Webカメラやカメラを搭載したスマートフォンがあればいいので、環境構築も簡単だ。

 「時間が余って気が狂いそうだー!」というあなた、ボードウォーゲームでその時間を存分に溶かしてみてはいかがだろうか。たとえ対戦相手が見つからなくても、ルールブックを読むだけで結構な時間をつぶせる。ルールブックを読んでいると「このルールは何をシミュレートしているのだろう」と気になることが出てくるだろう。そうなると、題材となった戦いの歴史も調べたくなる。こうした探索の旅もボードウォーゲームの楽しみの一つだ。せっかくある長い時間をボードウォーゲームでぜいたくに過ごしていただきたい。