「風土計」【岩手日報】

2017.8.8「知雨(ちう)」という言葉がある。雨を知る、すなわち雨の降りを予知する。天気予報を意味するものとして昔使われた。江戸時代にも知雨の予報が行われ、天文台から江戸城中に毎日届いた。▼「雨ふり候天気には無之(これなく)候」。「雨が降り天気ではない」と取れるし、「雨が降る天気ではない」とも読める。外れても言い逃れできるようにする。それほど知雨は難しかった。先週亡くなった気象キャスター倉嶋厚さんらの「雨のことば辞典」で学んだ▼現代の「知雨」技術でも、台風5号の進路予測は難しいに違いない。小笠原諸島近くに生まれ、西へ進むと思えば、反転して東へ。ふらふらと海上をさまよう間に勢いを強め、ついに日本列島へ狙いを定めてきた▼始末が悪いことに、この迷走台風は動きも遅い。のろのろ進めば、それだけ多くの雨を降らせる。通り道の西日本は猛烈な雨になった。被害が少ないことを祈るばかりだ▼きめ細かく精度の高い今の防災気象情報を「現役時代は想像できなかった」と倉嶋さんは記す。でも、予測は素早い避難に結び付いてこそ。大雨のさまざまな情報を「命を守るために知ってほしい」と呼び掛けた▼まして現代の「知雨」をあざ笑うかのような気まぐれ台風だ。岩手には、いつ、どう接近するかも定まらない。人知が完全には及ばぬなら、備えるしかない。

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