「風土計」【岩手日報】

2017.8.10アリはぎらぎらした太陽の下がよく似合う。イソップ寓話(ぐうわ)でも、アリはキリギリスやセミと違って、ひと夏の間せっせと働いていた。というわけで、アリの観察は夏休みの自由研究の定番の一つだ▼透明な入れ物に土を入れて巣を作らせたり、虫の死骸や植物の種を運ぶ様子を飽きずに眺めていた思い出がある。延々と続くアリの行列の行方も気になった。あの行列は、誰にも果てしないように見えるものらしい▼フランスの作家ルナールは「博物誌」で有名な文章を残す。「一匹一匹が、3という数字に似ている」。さらに3を12個並べて続ける。「ああ、きりがない」。小説家の村田喜代子さんにとっては行列が弔いの象徴だった▼田舎の祖母と孫4人の夏休みをつづり、1987年の芥川賞を受けた「鍋の中」。祖母たちが集まって上げるお経の声が、バラの木を登る「蟻(アリ)のぎざぎざの列」の上を流れ、死者に届くように感じた▼この作品は黒沢明監督によって「八月の狂詩曲(ラプソディー)」として映画化された。黒沢監督は物語の舞台を長崎に設定し、原作にない原爆の45年後の記憶を描いた。バラに登るアリも鮮やかに映像化されている▼映画に出演したアリは、大きな行列を作る日本在来種クロクサアリ。いろいろ教えてくれるアリだが、ヒアリの観察だけは避けた方がよさそうだ。

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