変わるアジアのパワーバランス Japan In-depth創刊5周年シンポ その5

変わるアジアのパワーバランス Japan In-depth創刊5周年シンポ その5

Japan In-depth 編集部

【まとめ】

・中谷氏「ぎくしゃくしている米韓関係懸念。(徴用工問題で)強制執行は国際法的に全く認められない。」

・朴氏「文政権はレイムダック化。日本は拙速に動かぬほうがいい。」

・島田氏「北朝鮮は米の締め付け厳しくなれば日本に寄ってくる。」

 

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安倍: 中谷さんに聞く。徴用工の問題などいろいろ出てきて、日本国内にはもう韓国と決別してもいいのではないか、断交しろと言う人もいるようだが、今の意見を聞いてどう思うか。

中谷: 韓国の行動は本当に異常だと思う。竹島に国会議員が2回も連続で上陸し、しかも、韓国政府は政府のヘリコプターの使用を容認している。慰安婦の資金の団体解散、徴用工の判決、そして自衛隊が入港する際の(自衛艦旗の)掲揚を拒否した。我々は北朝鮮との関係もあるので韓国との関係を大事にはしているが、それに対する答えが、こういった状況なのでますます感情的には冷え込んでいる。それ以上に懸念されるのは米韓関係だ。韓国は、38度線の上空を飛行機が飛ばないとか、歩哨の数を減らすとか、地雷の撤去とか、次々と米国の許可なく勝手にやってしまった。米国は韓国に対してかなり批判している。米韓関係は非常にギクシャクしつつある。

▲写真 竹島 出典:Histrical Facts about Korea Dokto Island:Ulleungdont

安倍: 某自民党の議員は、私の番組で『物理的な痛みを与えないとわからないのではないか』と言った。人間というのは痛いと思うから、反省して挑発や威嚇をやめる。安倍政権を見ていると弱腰に映るというか、どことなく他人事という感じを受けてしまうが。これについてコメント、感想を求めるのは酷な話か。

中谷: 相手にするとますます反発もある。神経質にやればやるほどマイナスの要素が出る。そのため、韓国の対応をじっと見ている状況だ。しかし、もう二度三度四度と、とにかく昭和40年の日韓協定で全ては解決すると言ったのにも関わらず、こういうことが起こってくるのは外交的には本当に信じられない。安倍総理も韓国に対して、『国際常識に反する』と最大限の批判はしている。かなりの嫌悪感を表現している。

安倍: 島田氏に伺う。拉致問題は非常に重大だ。このような流動化している環境下で、日朝首脳会談の必要性についてはどうか。

島田: 北朝鮮はまずアメリカを見ている。安倍政権に関しては来年の参議院選挙で惨敗すれば安倍降ろしが自民党内で始まるかもしれない。そのようなことを期待しながら北朝鮮はアメリカからの締め付けが厳しくなればやはり金を取れるのは日本しかないということで日本に寄ってくるとは思う。韓国について言えば、いま文在寅は全方位土下座外交を展開している。北朝鮮に土下座し、アメリカに対しても自由貿易協議で韓国はすぐに受け入れて、ほぼ丸呑みした。中国に対しても土下座的だ。日本に対しては少し違うが、徴用をめぐる最高裁判決では、司法が決めてしまって韓国政府としては困っているという顔を見せた。

日本政府として、国際司法裁判所(ICJ)に提訴するべきだという話が出ているが、これは非常に危ない。韓国は受けないだろうという人がいるが、文在寅は国内で八方塞がりだから、ICJに投げてしまおうという判断をするかもしれない。その場合、日本は理屈の上で必ず勝つケースだと外務省は言うが、4年前にオーストラリアが日本をICJに訴えた捕鯨訴訟では、日本は負けた。

負けた背景にはICJの裁判官の構成がある。ICJの裁判官は15人で安保理常任理事国から必ず1人入る仕組みなので中国人、ロシア人が必ず入る。捕鯨の場合では、日本人判事は1人入っていた。そして訴えたオーストラリア側から特任判事が1人入り、計16人の構成だった。オーストラリアは捕鯨問題の論客を入れて来た。ICJはヨーロッパ・リベラルが多く、10カ国ぐらい。オーストラリアも入れて反捕鯨国は11カ国。ロシア、中国も反日に回り、結局16人中12人が日本の主張に異を唱え、日本が敗訴した。今回も韓国が訴えた場合、韓国人の特任判事も入る。しかも歴史問題の論客だ。日本人判事は東大の国際法の先生で学者としては立派な人だろうが、このような問題の論客と言うには程遠い。そしてロシア人、中国人の判事はどちらの肩を持つかは言うまでもない。ヨーロッパ・リベラルの人々は日本はひどい侵略をやったのだろうという単純な歴史観を持っているから、私は基本的に日本が不利になると思う。

朴: 文政権の状況は相当八方塞がりです。望みは金正恩がソウルに来ること。これで一点突破しようとしている。それ以外はもう経済もだめ。与党はいま分裂がすごい。次期大統領候補と言われていた安熙正(アン・ヒジョン)が#MeToo(ミートゥ)すなわち女性問題でアウトになった。京畿道知事の李在明(イ・ジェミョン)も実兄を強制的に精神病院に入院させた容疑で立件された。

▲写真 安熙正(アン・ヒジョン) 出典:BUNKER 1

そして文大統領の最側近と言われた慶尚南道知事の金慶洙(キム・ギョンス)は、「ドゥルキング」というハンドルネームの男を通じて文氏を当選せるための世論操作をしていたとして、いま追い詰められている。朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長もソウル市の地下鉄の労働組合を擁護して世襲で職を与え、問題になっている。この4人がアウトになり、有力者として残っているのは任鍾晳(イム・ジョンソク)秘書室長と李洛淵(イ・ナギョン)国務総理の2人しかいなくなってしまったという大変な状況だ。

▲写真 金慶洙・慶尚南道知事(右)と文在寅現大統領(左)2014年当時 出典:Newsletter

今日本が『条約を守れ』『国際法を守りなさい』とプレッシャーをかけ続けると、韓国の与党と野党の対日姿勢を1つにさせてしまう可能性がある。文在寅がレイムダック化しているいま日本は拙速に動かないほうがいいと思う。日本が国際司法裁判所に訴えるなどの行動を起こすと、文政権は韓国国民の目をそちらにそらせることになる。

▲写真 朴元淳(パク・ウォンスン)ソウル市長 出典:flickr Republic of Korea

先日、暴力を振るうIT企業の社長が問題になった。この社長の素行は前からわかっていたことなのに、なぜいま世論化させたのか。国民の目をそらしたい意図があるからだ。いま何でもいいので国民の目をそらしたいというのがいまの文政権の状況だ。文政権に口実や逃げ道を与えることはやめたほうがいい。

安倍: 様子を見る、無視するのが一番ということか。

島田: 無視はだめだ。言い続けることが重要。

安倍: では、韓国に対して何ができるのか。

中谷: やはり筋論を展開するということ。捕鯨裁判はまさかの敗北を喫し、水産庁の担当者は飛ばされた。国際司法裁判所は公正かどうかということだが、南シナ海の判決ではフィリピンの訴えが認められた。そういう点ではジャッジの正確性はあると思う。

徴用工に関しては明らかに昭和40年で全ての請求権を放棄する、この問題を取り扱わない、と当時の高官が正式に言っている。日本はこれに関し責めを負う根拠はないと確信している。ICJでも勝てる自信はあるが、竹島問題でもそうだが、両国が申し出ないと裁判はできないと聞いている。韓国には負い目があると思う。判決が出ても韓国政府は日本に賠償を求めるとは一言も言っていない。韓日友好議連の幹事長をしている李洛淵(イ・ナギョン)国務総理も彼なりに考えて対応していると思う。

▲写真 李洛淵(イ・ナギョン)国務総理 2017年5月10日 出典:flickr Republic of Korea

朴: 韓国の司法がどうなっているのかについても分析する必要がある。今の韓国の司法は多数決で弾劾するというようなレベルだ。前最高裁長官が朴槿恵と近かったということを弾劾するために、左派の判事たちが組織を作った。司法の中に労働組合ができているようなものだ。それに対して、司法の中から、司法で多数決をするとはどこの世界にあるのかと、裁判官が自分の見識で判断するのが司法だというような徹底的な反論の声があがった。いま韓国国内でも問題になっている。そのような状況で、文政権がそこから逃げ出すことにつながる口実を作らないほうがいい。

話は全然変わるが、日朝の問題で言うと、我々が得ていた情報では北朝鮮は終戦宣言が実現した場合、次は日朝というストーリーを組んでいた。日本にとって拉致問題は人権問題だが、北朝鮮にとっては体制の問題だ。拉致問題を下手に扱ったばかりに、例えば朝鮮総連が吹っ飛んでしまうことにつながりかねない体制の問題なのだ。アメリカから体制保証を得られれば、拉致問題でいろいろな問題が発生しても体制の揺らぎはないと計算していたわけだ。

拉致したのは偵察総局だから、統一戦線部に実行犯はいない。統一戦線部は南に対して工作をするのが基本の組織だ。米朝交渉に関し、北朝鮮の外務省ではなく、外交を担当していない統一戦線部がクローズアップされるのは、韓国を巻き込みながら、韓国にあるものを使ってアメリカを動かし、米朝交渉を進めるためだ。クローズアップされてるからといって統一戦線部が拉致問題をわかっているわけではない。そこは誤解がないようにしたほうがよい。

島田: 徴用をめぐる判決で、日本企業は安倍政権の指示もあって賠償金を支払わないと言っている。今後、この問題は最高裁が強制執行を命じる可能性がある。文在寅は司法の決定なので行政府にはいかんともしがたいとの態度を取るだろう。もし司法が命じて強制執行に出てきた場合、日本にある韓国の資産を没収するなど対抗措置をとらなければならない。これについて政府・自民党がどこまで詰めて考えているのか疑問だ。

中谷: 個人補償は韓国政府が対応することになっているので、強制執行は国際法的には全く認められない。政府は企業に対して当然支払うべきではないと話すし、企業に損害を与えるなという前提で、韓国政府には適切に対応しろと強く言い続ける。

▲写真 ©Japan In-depth編集部

次に、出席者から質問が出た。

Q アジア情勢について聞きたい。朝鮮半島は比較的見やすいが、日本は主戦場になりつつあるのか。準備はまだできていないと思うが?

A(古森氏)アメリカが日本をどうみるかということに関しては、長期の同盟相手、つまり仲間だという意識は強いと思う。日米関係の色々な問題が表に出てこないのは、例えば、イギリスとアメリカとの関係は話題にならない、では大切ではないのか、大したことないのかというとそうではない。うまくいっていて問題がないから新聞の見出しにもならない。そういう側面は今は日本とアメリカの間にかなりある。

日米同盟は非常にうまくいっている。ところが、日本とアメリカ、日本とその他の国で認識が違うのは軍事だ。今の東アジア情勢は、軍事が非常に大きくものを言う。金正恩があそこまであっと言う間に変わったのは何故か。アメリカの北朝鮮専門家が指摘するのは’’恐怖’’だ。金正恩はこのままだと自分はやられてしまう、軍事攻撃を含めて、と。軍事が国際情勢を動かす非常に重要な要因であるのは皆認めている。

軍事がいかに重要かはアメリカ歴代政権みな同じだが、トランプ政権は特に顕著だ。軍事力のもつ強さに基づいて平和を守る。国家防衛戦略というトランプ大統領がサインした重要な文書があるが、この中に戦争を防ぐにはその考えられる戦争を戦って勝つ能力を保っておくことだ、と明記されている。戦争をできる状態にして、しかも勝つ状態にしておくことが戦争を起こさない最善の方法だと。

これは抑止力という概念だ。相手が攻撃をしかけてきたら必ず反撃を加えて、滅ぼさないにしても致命的な打撃を与える能力と意思を持っているという抑止。一方、日本では憲法問題などがあり、軍事は触れてもいけないし、考えてもいけない。ソフトパワーのみ。軍事力の役割そのものも認めないという風潮だ。しかし、いろいろなところに齟齬が出てきている。金正恩は核を離さない。日本は何の準備もしていない。

Q 中谷さんに聞きたい。元徴用工に関する最高裁判決の問題の直後に、韓国造船業の補助金に対するWTOへの提訴の話が出た。業界からすると少し遅かったのではないかという指摘がある。政府としては、たまたま造船業の支援のカードがあって、韓国に対抗する手段として選んだのか、それとも、温めてきたものが出せるタイミングとしてたまたま合致したものなのか。EUが日本の提訴に加勢するとの情報もあるが、事前にテーブルの下で手を結んでいたのか。

A(中谷氏)当然、韓国に対する制裁、圧力だ。10年くらい前にSWAP(日韓通貨スワップ)でも日本は経済的に韓国を助けた。造船、電気でも日本の民間の力で韓国を引っ張って来た。韓国はそういうことを忘れている。政府は、この他にも韓国政府にとってかなり打撃になる玉は持っていると思う。そういう一つの意味で制裁でもある。国際ルールを乱すことに対して、日本はしっかり対抗する姿勢は持っている。

(シリーズ了。全5回。その1、その2、その3、その4)

トップ写真:朝鮮半島出身者が戦時中に炭坑等で労働したとされる。長崎市の端島(通称:軍艦島) 出典:flickr kntrty


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