フィリピン世論 中国に警戒感

フィリピン世論 中国に警戒感

大塚智彦(Pan Asia News 記者)

「大塚智彦の東南アジア万華鏡」

【まとめ】

・フィリピン人が信頼するのは米日豪。中国に対しては警戒感。

・「反米親中」の印象、実は米中との距離で駆け引き図るドゥテルテ流。

・中間選挙ムードの間隙に中国が南シナ海で攻勢との見方。

 

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フィリピンのドゥテルテ政権が進める「米国離れ中国寄り政策」にも関わらず、フィリピン人が最も信用し頼りにしている国は米国で、中国に対しては「過度の信用は禁物」と警戒感を抱いていることが世論調査の結果から浮き彫りとなった。

世論調査は、フィリピンの民間調査会社「パルス・アジア」が2018年12月14日から21日にかけてフィリピンで1800人の成人を対象に実施したもので、1月15日のフィリピン紙「フィリピン・スター」などが伝えた。

その結果によると、フィリピンが今後さらに関係を強化するべき信頼する国として84%の人が米国を挙げた。これは2017年3月の同様の調査での回答79%を上回るもので、フィリピン人の米国への信頼度がさらに高まっていることを反映している。

米国に次いで信頼する国として日本が75%、オーストラリアが72%と続いており、日本に対するフィリピン国民の信頼度も高いことを示している。

一方、南シナ海でフィリピンと領有権争いをしている当事者でもある中国については信頼できるとしたのは60%で前回の63%より微減している。そして40%が「中国を過度に信用すべきではない」と回答し、警戒感を抱いていることも分かった。

▲写真 南シナ海での中国海軍の演習を観閲する習近平国家主席(2018年4月12日)出典:中国海軍ホームページ

 

■ 南シナ海での中国の動き活発化

フィリピンも領有権を主張している南シナ海の島嶼では、1月10日に衛星からの情報でミスチノフ礁やスビ島、フィリピンが実効支配するパグアサ島などの周辺で多数の中国漁船が活動していることが判明し、フィリピン当局は対応を検討している。

米ワシントンのシンクタンクが明らかにしたところによると、パグアサ島周辺では約10隻の大型漁船が確認されたという。この漁船群は数週間同海域に留まり、実際に漁業をしているのは少数の漁船だけという。

さらに1月初めに中国自然環境省が、中国が実効支配するスカボロー礁などの複数の島で地対空ミサイル基地や電子妨害施設などの軍事施設の建設に伴い破壊されたり影響を受けたりしたサンゴ礁の実態調査とサンゴの再生化事業を進めるとの方針を明らかにした。

▲写真 スカボロー礁 出典:Asia Maritime Transparency Initiative

これに対してフィリピンは「フィリピンが主張する海域、島嶼周辺も含まれており、サンゴ再生そのものには反対しないが、領有権争いが存在する以上、サンゴ再生事業は単なる環境問題ではなく、領有権問題である。サンゴ再生は中国の実効支配を強める新たな戦略である」として警戒監視を強めている。

昨年来続くこうした中国の南シナ海での活発な最近の動きもフィリピン国民の中国への警戒感の根底にあるとみられている。

 

■ 大統領府は中国関係を楽観

こうした世論調査結果に対して大統領府のサルバドール・パネロ報道官は1月14日の記者会見で「米国はフィリピンの同盟国でありその関係は以前から深く、(世論調査の)数字は当然であろう」との見方を示した。

ドゥテルテ政権はかつて米国寄りだったフィリピンの外交から一定の距離を置き、多額の経済支援受け入れで中国に接近する姿勢を示すようになり、国民からは「反米親中」政権とみなされている。

しかし実情は米中とは距離を置いたり、接近したりという政治的駆け引きを展開する「ドゥテルテ流」外交を展開している。

こうした外交姿勢にも関わらず、中国に対してはフィリピン人の信頼度は日米に比較して低くなっていることに関して「中国によるフィリピンへの態度が今後真摯なものになれば数字はよくなっていくことになるだろう」(パネロ報道官)と楽観する姿勢を示している。

このほか地域の多国間組織として東南アジア諸国連合(ASEAN)を信用できるとした人は82%、アジア太平洋経済協力会議(APEC)にも80%の人が信頼感を抱いていることも明らかになり、多国間組織の一員としてフィリピンが重要な位置を占めていることも改めてわかった。

▲写真 日比首脳会談後の晩さん会(2016年10月26日 首相官邸)出典:ドゥテルテ大統領facebook

フィリピンは5月13日に上院議員の半数と下院議員全員の選挙、自治体首長、自治体議員全員の選挙という「中間選挙」がある。このためフィリピン政府、社会はすでに選挙ムードを迎えており、ドゥテルテ政権の外交問題はしばらく関心の外となる可能性が高く、こうした間隙をぬって中国が南シナ海で攻勢に出ているとの見方も強く、ドゥテルテ大統領がどこまで対中国で強い姿勢を示せるかが問われている。

トップ写真:中比首脳会談(2018年11月20日 マニラ)出典:ドゥテルテ大統領facebook


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