植木安弘(上智大学総合グローバル学部教授)

「植木安弘のグローバルイシュー考察」

【まとめ】

・NY州では1日で800人以上が感染。

・ウェストチェスター郡では「封じ込めゾーン」が設置。

・ニューヨーク市長は公立学校の閉鎖という苦渋の決断を行った。

 

全世界で新型コロナ感染者総数が20万人を超え、死者も9千人に及ぶ中、全米でも感染者数が劇的に増えている。

3月18日の時点で感染者数が8千人を超え、死者数は150人近くになった。感染源の一つニューヨーク州でも3月17日から18日にかけて僅か1日で800人以上の感染が確認され、2400人近くとなった。そのうち、ニューヨーク市が約8割を占めている。この劇的な増加は、検査数が格段に多くなったことがその主な理由で、17日一日だけで約5千の検査が行われたとしている。検査を要する人は約1万5千人いるとのことで、感染者はさらに増えるとみられている。

ニューヨークで新型コロナの感染者が見つかったのが2月末で、最初のケースはイランからの帰国者だった。二人目はマンハッタンで法律事務所に勤務する50歳の男性弁護士で、ニューヨーク近郊のウェストチェスター郡ニューロッシェルに自宅がある。発熱して間もなく友人に近くの病院で検査をうけ、感染していることが判明した。その後、弁護士の家族、そして助けてくれた友人とその家族も感染した。

この男性がユダヤ人のシナゴーグ(礼拝堂)での礼拝に出席していたことから、現地のユダヤ人コミュニティーの間で感染が拡大し、西海岸のワシントン州に次ぐ米国の大感染源となった。この男性はスーパー・スプレッダー(超拡散者)になってしまったが、3月中旬には回復基調にあるという。ただ、この男性がどのように感染したかについては今でも分かっていない。

▲写真 ウェストチェスター郡の街並み 出典:Flickr; Meg Stewart

ウェストチェスター郡は郊外にあり、人口も100万人程度である。感染者はニューロッシェルという一つの町に集中しているため、半径1マイル(1.6km)の「封じ込めゾーン」が設置され、ナショナル・ガード(州の防衛隊)が派遣され、ゾーン内の消毒などを行っている。

一方、ニューヨーク市では感染者がうなぎのぼりに増えている。人口約850万人で、人口も密集している。3月初めにはまだ緊張感がなく、ブロードウェーのショーやオペラ、コンサートなどは通常通り行われており、レストランやバー、パブなども相変わらずの賑わいを見せていた。

これが急変したのが、3月12日だった。ブロードウェーのショーで働いている客案内人の二人が感染したことが判明したため、アンドルー・コウモ州知事が500人以上の人が集まるイベントを禁止したことによる。その後、感染拡大を懸念するビル・デ・ブラジオニューヨーク市長が3月17日付けでレストランやバーなども閉鎖することを発表した。

ニューヨーク市長が一番苦渋に満ちた決断をしたのは、3月15日に発表された公立学校の閉鎖だった。ニューヨークには110万人におよぶ生徒が公立学校に通っている。同じような大学校区を持っているロスアンゼルスは早々と学校閉鎖に踏み切ったが、ニューヨークの公立校には多くの貧しい子供やホームレスの子供たちが通っているため、学校給食が提供できなくなると困る子供が多いことによる。教員組合が閉鎖に反対したが、子供の安全を期して結局閉鎖に協力する態度に出たのが、最終決断に繋がった。

このような急激な政策の変更は、この新型感染病を真剣に捉えずリラックスな生活をエンジョイしていたニューヨーカーの態度で感染が急速に拡大したこともあるが、問題はもっと高度な政治レベルにあるとみられている。

(続く)

トップ写真:Broadway の標識 出典:Public Domain Pictures.com