植木安弘(上智大学総合グローバル学部教授)

「植木安弘のグローバルイシュー考察」

【まとめ】

・ニューヨーク州は米国最大の感染地域。

・クオモ州知事は人の集まり禁止、外出控えるよう市民に訴え。

・医療機器や体制も深刻な状況。

 

3月20日の時点で、全米感染者総数約19,000人のうち、ニューヨーク州の感染者が8,400人に達し、全体の半数に近い割合となった。ニューヨーク州の人口が全米の僅か6パーセントであることを考えると、他の州と比べても極端に高い数字となり、米国での最大の感染地域となっている。全米での死者は200人に達した。ニューヨーク州の死者は約30人だ。

全米で3週間前一日辺りの新感染者数は僅か5人であったが、今や3,000人とうなぎのぼりになっている。これは検査能力が増えた結果で、政府のラボなどに加え、一般の病院での検査が増え、ドライブイン式検査所を設けていることによる。ニューヨークではこれにより、検査能力は一日当たり1万人規模になった。これまで3万人以上が検査を受けている。

ニューヨーク市については、5,000人を超える人が感染しており、5つの区のうちマンハッタン区、クウィーンズ区、ブルックリン区では感染者がそれぞれ1,500人前後に達している。ニューヨーク州の感染者の6割以上がニューヨーク市に集中していることになる。僅か3週間程度の間に「コミュニティ・スプレッド」と呼ばれる地域社会に深く感染が浸透していたことになる。さらに感染者が急増することが予想され、既に感染源を解明することは事実上不可能となっている。

デ・ブラジオニューヨーク市長は、「シェルター・イン・プレイス」という外出禁止令の発出を強く主張していたが、クオモ州知事はこれに抵抗していた。既に州全体に非常事態宣言を出しており、州防衛隊が出動していることに加え、極端な外出禁止令はパニックの原因になるというのがその根拠でだった。

人口4千万人をかかえるカリフォルニア州は既に在宅勤務に転換していることもあるが、急激な感染拡大で、遂にクオモ知事は3月20日いかなる規模の人の集まりも禁止し、外出は控えるよう市民に訴えた。

また、ビジネスについても、市民生活に不可欠な業種を除いては在宅勤務にするよう要請した。スーパーやコンビニ、薬局店、ガソリンスタンド、銀行、配達業などは不可欠な業種に入る。在宅勤務を要請している州は5つと増え、700万人が在宅を余儀なくされていると推定されている。

▲写真 クオモ州知事 出典:flicker Metropolitan Transportation Authority of the State of New York

急速な拡大で深刻なのが、不可欠な医療機器の不足と病院などの受け入れ体制だ。特に、N95と呼ばれる微粒子用マスクなどの保身用器具や人口呼吸器は、急速な感染者の拡大に間に合わなくなると言われている。

各地の病院や医療機関は既に通常の患者の診療はキャンセルし、入院患者などは別な施設に移し始めている。ニューヨーク市では、ジャコブ・ジャヴィット展示場を仮設病院にする方向で検討している。血液の不足も深刻な状況となっている。

軍の病院船二隻のうち「コンフォート」号がニューヨークに駆り出されることになったが、まだ本拠地のバージニア州のノーフォークで修理中と言われ、展開には数週間かかると言われている。

このような深刻な状況にも関わらず、フロリダ州など南部の州の一部では、大学などの春休暇で多くの学生がビーチに集まり、パーティー騒ぎをしている。若い人は感染しても比較的症状が軽いといった情報が流れていることもあり、自分には関係ないといった無神経な若者が多い。

死亡率が多いのは60歳以上の高年齢層だが、実際には、50歳以下の死亡率が約4割と言われている。若い人が感染し、親や祖父、祖母に二次感染させる可能性が多くなる。フロリダ州は、やっと規制に乗り出した。

(続く。1)

トップ写真:コロナウイルス検査 出典:PETERSON AIR FORCE BASE