宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

「宮家邦彦の外交・安保カレンダー【速報版】 2020#27」

2020年6月29日-7月5日

【まとめ】

・ボルトン暴露本「トランプは大統領の器でない」と断ず。

・「2期詰めるべきではない」と求める。

・しかし内容に新味なく、大統領選への影響は少ない。

 

ボルトン元NSC担当補佐官の暴露本発売から早くも一週間経過した。あの保守強硬派ボルトンが昨日曜日朝のCNN政治番組に出演、トランプ政権をこき下ろすなんて一体誰が予想しただろう。やはり私怨なのか。同書については既に先週の段階で書いている。幸い、今読み直しても、怪しげなコメントはしていないようだ。

今回一つ、従来と異なる手法を用いてみた。発売後直ちに電子版を購入し、全文に目を通すことにしたのだ。勿論、今週のコメントは全て、報道や伝聞ではなく、自ら読んだ上で書き下ろしたもの。重要部分に黄色マーカーを引き、個人的感想を書き込んでから、再度関連部分を整理してコメントするやり方も、従来と全く変わらない。

今回異なるのは、こうした事前作業を全てパソコン上で行ったことだ。電子版図書は従来「食わず嫌い」というか、何故か殆ど利用してこなかった。だが、今回は自分の愚かさを後悔した。Kindle、何と便利なことか。印刷本では不可能な「全文キーワード検索」だって簡単にできる。おかげで今回は効率良く短時間で全文精読までできた。

それでも結論は変わらない。要するに、

①トランプは大統領の器ではなく、②2期務めるべきではない、③暴露された内容にあまり新味はなく、従って、④大統領選への影響も少ない、ということに尽きる。この暴露本については今週のJapanTimesや日経オンラインに視点を変えたコラムを書いたので、ご一読願えれば幸いである。

ボルトンはこのくらいにして・・・。今週も巷の関心はコロナウイルスばかりで、ニュースの「夏枯れ」が続いている。そんな中、筆者が最も気になったのは、「ロシアがアフガニスタンのタリバン系武装勢力に対し米軍を含むNATO軍兵士殺害のために報奨金を支払っていた」というニュースだった。ふーーん。

▲写真 アフガニスタンのチンファルシ(2010年4月18日)-州復興チーム 出典:Flickr; ResoluteSupportMedia

筆者の第一印象は「えっ、何が問題なの?当たり前じゃない」というものだった。だが、米国のCNN等反トランプ・メディアは「大統領は事前に知っていたのか、知っていたのに何もしなかったのか」というお得意の問題提起を始めた。対するトランプ氏も、いつも通り、「そんな話は聞いていない」と苦し紛れに反論している。バカバカしい。

ソ連がアフガニスタンに侵攻した後、中東全域から若く狂信的な現状不満分子を現地に集め、ムジャーヒディーンとしてゲリラ戦術を教え養成したのは、一体誰だったのか。米国の諜報機関が彼らに対し、報奨金どころか、武器の扱い方からケシの栽培方法まで懇切丁寧に教えたことは、当時から公然の秘密だったと理解する。

更に言わせてもらえば、そのようなムジャーヒディーンの中から生まれたのが、あの「アルカーイダ」ではなかったのか。今ロシアが米軍に対しやっていることと、1980年代に米国が当時のソ連軍に対しやったことと、一体どこが違うのか。報われないのは大国に翻弄されるアフガン人たちだろうが、その点については今や誰も指摘しない。

 

〇 アジア

韓国与党幹部が韓国のG7首脳会議参加に反対した安倍首相を批判したそうだ。でも日本が反対しなくたって、G11などというアイディアは初めから実現可能性がない。

 

〇 欧州・ロシア

英カンタベリー大司教が世界中の教会は「白いキリスト」を「当然」再考すべしと述べたそうだ。しかし、ジーザスは中東セム系だったから、そもそも「白い」訳ないのにね。

 

〇 中東

ユニセフがイエメン児童数百万人がパンデミックで「飢餓の瀬戸際」にある恐れを指摘したそうだ。でも、イエメンは今も内戦の真っただ中、これを今誰も覚えていないのか。

▲写真 イエメン 出典:Flickr; EU Civil Protection and Humanitarian Aid

〇 南北アメリカ

米ミシシッピ州議会が、南北戦争の南軍旗が入った州旗を変える法案を可決した。あれあれ、今も使っていたのかい。1960年代の公民権運動は一体何だったのか。

 

〇 インド亜大陸

中印係争地帯での両国兵士間衝突でインドは中国との関係を見直すというが、実際にはそれほど簡単ではなさそうだ。逆に、中国にとっては対印関係改善するなら今だが、果たして北京にその度量はあるだろうか、疑問である。

今週はこのくらいにしておこう。いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

トップ写真:ボルトン氏 出典:Flickr; Gage Skidmore