古森義久(ジャーナリスト・麗澤大学特別教授)

「古森義久の内外透視」

【まとめ】

・バイデン候補は認知症を病んでいると思う米有権者、38%。

・調査したラスムセン社は米世論調査機関のうち最大手。

・民主党バイデン陣営に衝撃走る。

 

今年11月のアメリカ大統領選挙での民主党候補に目されるジョセフ・バイデン前副大統領は認知症を病んでいると思っているアメリカ有権者が全体の38%もいることが最新の世論調査で判明した。

77歳のバイデン氏は事実関係と異なる発言をすることをたびたび指摘されてきたが、その原因は認知症だとみるアメリカ有権者が多いことがこうした数字で示された事実には大きな重みがあるといえよう。

この調査結果はいま一連の他の世論調査で現職のドナルド・トランプ大統領を支持率で大幅にリードしているバイデン候補のこれからの本格的な選挙キャンペーンに少なくとも複雑な影を投げそうである。

米国の世論調査機関では最大手のラスムセン社は6月29日、バイデン候補に関する新たな全米世論調査の結果を発表した。全米約1000人の有権者を対象に6月25日から28日までの調査実施だった。その際の質問は以下のようだった。

 ・ジョー・バイデン氏の頻繁な失言や混乱した言明はなんらかの形の認知症を病んでいるからだという批判があります。バイデン氏にとってこの認知症問題を公式の場で説明することはどれほど重要だと思いますか。

回答は①非常に重要だと思う②いくらかは重要だと思う③それほど重要ではないと思う④まったく重要ではないと思う。

 ・あなたがみたこと、読んだことから判断して、あなたはジョー・バイデン氏がなんらかの形の認知症を病んでいると思いますか。

回答は①そう思う②思わない③わからない。

ラスムセン社の発表によると、最重要な第二の質問に対して、「バイデン氏がなんらかの認知症を病んでいると思う」と答えた人が全体の38%だった。「そうは思わない」が48%、「わからない」が14%となった。

同調査ではさらに政党支持別に分けると、バイデン氏が認知症だと思うと答えた人は民主党支持層では全体の20%、共和党支持層は66%、無党派層は30%という結果が出た。

第一の質問の「認知症問題を公式の場で説明することはどれほど重要だと思うか」に対しては「非常に重要」と「いくらかは重要」と答えたのは合わせて61%、「それほど重要ではない」が36%、「まったく重要ではない」が19%だった。

ラスムセン社は多数あるアメリカの世論調査機関のうちでも最大手で、大統領への支持、不支持の調査を毎日、実施している唯一の組織である。2016年の大統領選でも一貫して世論の動向を最も正しく伝えたとして評判が高い。

その世論調査機関の調査でバイデン候補が認知症を病んでいると思うと答えた人が全米で平均すると10人に4人近くとなったという結果は全米を驚かせ、とくに民主党のバイデン陣営にはショックな情報だといえよう。

アメリカの一般メディアでもワシントン・ポストやCNNテレビのように民主党候補のバイデン氏への支持を鮮明にしているところを除いては多数が「驚きの世論調査結果」として報道した。

バイデン候補は有権者への直接の語りかけとなる選挙活動をコロナウイルス感染拡大を理由にほとんどしていないが、それでも最近の公開の場での発言では6月に入ってからも

「コロナウイルスでアメリカでは1億2千万人が死んだ(実際のアメリカの死者がその時点で12万人だった)」と述べたり、バージニア州内にいるときに「ここノースカロライナ州では」と発言したり、オハイオ州とアイオワ州を間違えたり、という失言やミスを続けてきた。

だから「バイデン氏は認知症ではないのか」という疑問や指摘は単に反対派の共和党やトランプ陣営だけでなく一般でもかなり広範に表明されてきた。今回の世論調査結果はアメリカ国民一般のレベルでその認識が全体の38%という高い比率で広がったことを証したことになる。

なお認知症についてはアメリカで評価の高い総合医学機関の「メイヨークリニック」は「記憶、思考、社会的能力に関して日々の生活に障害を起こすような一群の症状」と定義づけている。

トップ写真:ジョー・バイデン候補 出典:ジョー・バイデンキャンペーンサイト