宮家邦彦(立命館大学 客員教授・外交政策研究所代表)

宮家邦彦の外交・安保カレンダー 2020#48

2020年11月23-29日

【まとめ】

・米国務長官にブリンケン、安保担当補佐官にサリバン起用は順当。

・国防長官にフロノイ女史なら一応安心。上院承認も固い。

・習氏が「TPP加盟」に前向き姿勢。米国も「復帰」検討を。

どうやらコロナ感染の第三波が来たようだ。ようやく夜に外食を入れ始めた矢先だけに辛いところだが、この歳だから健康には用心するしかない。当分会食はお預けとなるだろうが、既に約束した分はキャンセルできないし・・・。読者の皆様も、コロナを決して甘く見ず、飲食店で働く皆様には誠に申し訳ないが、十分注意してくださいな。

ちょっと気が早いが、バイデン次期政権の国務長官と国家安全保障担当補佐官が決まりそうだ。正式発表は明日だというが、前者はブリンケン、後者はサリバンらしい。あまりに順当で、逆に驚いた。恐らく国防長官はフロノイ女史となるだろうから、一応安心ということではなかろうか。ブリンケンとフロノイなら上院承認も困難ではなかろう。

▲写真 左からブリンケン氏、サリバン氏、フロノイ氏 出典:ブリンケン氏(US State Department)、サリバン氏(U.S. Government)、フロノイ氏 (Gregory Jones, U.S. Army/Department of Defense)いずれもパブリック・ドメイン

先週あたりまではスーザン・ライスの名が挙がり、「彼女はどうか」などと聞かれて往生した。彼女はCNNのインタビューにも出まくり、New York Timesあたりにも小論を書きまくっていたので、「これは誰からもお声が掛かっていないのだな」と逆に思っていたのである。

でも、下手に「彼女はダメ」などというと、「やはり反中だったから?」などとややこしい更問が来るので、これまた往生する毎日だった。いずれにせよ、来年1月5日の補選の結果上院で共和党が多数を占めれば、そもそもライスの「芽はない」というのがワシントンの相場観だったのではないか。

▲写真 スーザン・ライス氏 出典:U.S. State Dept.

面白いことに、日本でも本当に政治的に良い仕事をしている政治家はテレビにあまり出て来ない。水面下で十分政治力を発揮しているからだろう。逆に、声が掛からなかったり、影響力が不十分な政治家はとかくテレビに出たがるのだと、昔どこかで聞いたことがある。やっぱり、この点は古今東西変わらないのだな、と実感する。

今週はAPECのバーチャル首脳会議で習近平総書記(国家主席)が「TPP加盟を積極的に検討する」と述べたらしい。RCEPの成功でその気になったのか、判断ミスなのかは分からないが、そろそろ米国もTPPに帰ってきた方が良いのでは?という気にさせる大きなニュースではあった。この点は今週のJapan Timesにも書いておいた。

〇アジア

米インド太平洋海軍の情報担当幹部が台湾を電撃訪問し、中国の軍事圧力などを協議したという。それにしても、トランプ政権の「最後っ屁」というか、不可逆的な「既成事実化」の試みは台湾だけでなく、中東でも、世界中で行われているようだ。これって、「政権移行期間」だけに、ルール違反ではないのかね?もう仁義なき戦いだ。

〇欧州・ロシア

欧州ではコロナウイルス再拡大のニュースばかり。一方、トルコのエルドアン大統領は「我が国は欧州の不可分の一部であり、トルコに対する攻撃や二重基準には反対する」と述べたそうだ。ふーん、それでは「欧州」とは一体何なのか。欧州がイスラム的欧州を認めないのなら、トルコは絶対に「欧州」にはなれない。でも、それではギリシャは欧州なのかと問われると、実に難しい問題である。

〇中東

22日にイスラエル首相がサウジアラビアを極秘訪問し皇太子と会談したそうだ。「やるなぁ」という気持ちと、「大丈夫か」という懸念が交錯する。イスラエルと湾岸アラブ諸国の国交正常化が進むのは良いが、アラブの「盟主」サウジまでが追随して本当に大丈夫なのか。これがいつか炸裂する時限爆弾とならなければ良いのだが・・・。

〇南北アメリカ

トランプ氏の大統領選開票結果をめぐる悪足搔きがまだ続いている。その一方で、米国内の累積感染者は1200万人を超えた。こんなことをやっている場合かと言いたくなるが、米共和党内で声を上げる勇者は極僅かしかいない。しかし、賢い人々ほど、「沈黙はゴールデン」ということなのかもしれない。これも古今東西同じようだ。

〇インド

中印国境で「中国軍がマイクロ波兵器を使用した」というニュースの波紋が広がっているらしい。現地では銃火器を使わないのが現在のルールらしい。中国はマイクロ波兵器の開発を進めているというが、本当なのか。マイクロ波が高い山頂まで届くのだったら、凄いことだが・・・。インド軍はツイッターで「根拠がない。フェイクニュースだ」と表明、中国軍も沈黙を守っているそうだから、もう少し様子を見よう。今週はこのくらいにしておこう。

いつものとおり、この続きは今週のキヤノングローバル戦略研究所のウェブサイトに掲載する。

トップ写真:ジョー・バイデン氏(右)と副大統領候補のカマラ・ハリス氏(左)(2020年11月5日) 出典:Joe Biden facebook