労働者人口の減少とグローバル化の進行によって、採用市場で日本企業が苦戦するケースが目立つようになった。こうした時代に、テクノロジーで人事に変革を及ぼす「HRテクノロジー」はどのように企業の人事、そして経営に影響を及ぼすのだろうか。日本のビッグデータ活用を推進する気鋭のHRテクノロジー研究者である、慶應義塾大学大学院経営管理研究科の岩本隆特任教授に、欧米での先行例と日本企業の課題と打開策について聞いた。

変数化する社員の生産性

――これまで日本企業の人事部門は、どのように経営に貢献してきたのでしょうか。そして、現在はどのように変化してきていますか。

岩本隆氏(以下、岩本氏) 日本企業に限らず、旧来の人事部門では事務作業が大きな割合を占めていました。しかし、現在は事務作業の大半を、クラウドなど進化したテクノロジーに任せられるようになっています。欧米では、そうした作業を人間がする必要がなくなったため、旧来型人事部門不要説も実際出ています。

 さらに、第4次産業革命により、あらゆる業種のサービス業化が進めば、1億円稼ぐ社員も1000万円しか稼げない社員も出てきます。社員の生産性が変数化するということで、パフォーマンスが評価のすべてであるプロスポーツやお客様がその価値を決める芸能界などに似てきているのです。経済産業省も企業経営における人材戦略の重要性を指摘しています。

 一方で、日本には金太郎あめを作るような量産型製造業が多く、そうした企業では、生産性のほとんどは設備によって決まり、社員の生産性は定数、誰がやっても同じでした。ですから、現在の急激な人材の変数化に対応しきれていません。これが、日本企業が遅れている理由です。

 しかし、機械にできることは機械に任せ、人間が付加価値の高い仕事だけをするこれからの時代は、必要な人材マネジメントの手法が従来と異なりますし、人材マネジメントがこれまで以上に直接的に業績に影響を与えるようになります。

 労務管理を行う間接部門であった人事部門が、人材をマネジメントする開発部門になるのです。データを集め分析し、経営者が使いやすい形でアウトプットする、そのための仕組みの設計や導入をするという仕事が生じます。人事部門の役割はますます重要なものに変化していくのです。