(加谷 珪一:経済評論家)

 松井一郎大坂市長が、新型コロナウイルス対策によってスーパーが混雑している問題について「女性は買い物に時間がかかる」と発言したことが波紋を呼んでいる。この発言は一部から差別主義的であるとして批判されているのだが、ここで取り上げるのはジェンダー論ではなく、経済対策としての話題である。

 日本はすでに輸出主導型経済から消費主導型経済にシフトしており、消費者が多様な価値観を発揮することが経済成長のカギを握っている。「男は〜」「女は〜」という、昭和的な価値観が色濃く残った社会では、多様な消費を促すことはできず、結果として消費を拡大させることもできない。

 政府が立案する新型コロナウイルスの経済対策は迷走に迷走を重ねているが、消費主導型となった日本経済の現状と、リーダーたちの思考回路との間にギャップが生じていることが背景にある。松井氏の発言は経済的にも大きな問題をはらんでいると認識できないようでは、日本経済を成長軌道に乗せるのは難しいだろう。

実は日本経済にも深刻な影響を与えている

 松井氏は2020年4月23日の記者会見で、スーパーが混雑している問題について「(女性は)商品を見ながらあれがいいとか時間がかかる。男は言われた物をぱぱっと買って帰れるから(男性が)接触を避けて買い物に行くのがいいと思う」と発言した。要するに女性はダラダラ買い物をするので、男性が買い物にいく方が混雑を減らせるという趣旨である。

 この発言には批判が殺到した。思想家で神戸女学院大名誉教授の内田樹氏は、この発言が海外でも報じられていることについて「世界標準に照らせば政治生命を失う愚行」であると断じている。特に小難しいことを考えるまでもなく「女が買い物にいくからスーパーが混むのだ」という発言が、大都市の市長から出てくること自体が論外といってよいだろう。だが、筆者がここで議論したいのは女性差別に関するテーマではなく、日本経済の低迷についてである。