(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

「鬼滅の刃」のアニメ映画が空前の大ヒット驀進中だ。公開10日で日本映画史上最速の100億円を突破し、観客動員数は公開わずか3週間で1500万人を超えて、興行収入は国内で歴代5位となる204億円を記録した。この勢いでは、日本記録308億円の「千と千尋の神隠し」を抜くのも時間の問題だといわれる。

「コラボ」と称してアリのように群がる

 なんだ、結局金儲けの話か。そう、内容などは二の次で、テレビマスコミが騒ぐのはつねに数字、金の問題である。そこに砂糖に群がるアリのように、バンダイ、くら寿司、ユニクロ、歌舞伎、ローソン、郵政省(年賀状)などが「コラボ」と称して、利益のおすそわけにあずかりたがる。ダイドーは鬼滅缶コーヒーが5000万本を突破したという。そんなものがあったのか。缶コーヒー好きのわたしも知らなかったぞ。その他、関連グッズであやかりたいものたちが揉み手をしながらすり寄っている。

 物語の内容についてはおそらくスレッドが立ち、ファンたちはそこでああだこうだと賑やかにやっているのだろう。早くも今年の流行語大賞にノミネートされ、菅義偉首相までが、人気取りを狙った官邸の入れ知恵だろうが、予算委員会で「私も“全集中”の呼吸で答弁させていただきます」と鬼滅用語を使ったりしている。官邸の寝ぼけた感覚は相変わらずである。

 ここまで全国民的ヒットになれば、昨年、日本で行われたラグビーW杯ブームのように、当然、「鬼滅」のにわかファンが急増する(いや、すでに急増したからこそのブームか)。わたしも本屋で実際に目にした。祖父母に連れられた幼女が、かごに20冊ほどの「鬼滅の刃」を入れ、うれしそうに「今日、たくさん買っちゃったね」といっていた。もうひとり20歳代の女性も手にやはり20冊ほどの「鬼滅」を抱えていた。それはもうしかたがない。世の常である。

見ていないだけで攻撃されるのか

 ばかばかしいのは、「鬼滅」を見ていないと、「まだ見てないの? 見ようよ」と押し付けたり、「興味がない」といえないような空気が醸成されることである。立川志らくが、TBS「ひるおび」の生放送中に、司会の恵俊彰から「なんで見ないの?!」と「キメハラ」(「鬼滅の刃ハラスメント」)を受けた、と冗談めかしていったらしい。まあどうでもいい話ではあるが、たしかに恵俊彰はそういうことをいうやつである。

 以前、おなじようなことがあった。2018年のサッカーW杯ロシア大会のとき、フジテレビの「とくダネ!」で、山崎夕貴アナが古市憲寿に「古市さんも見ましょうね」というと、古市は「僕は見ないですけど」といった。フジテレビ系列が放映することになっていたからだろう、さらに伊藤利尋アナが「見ましょうよ」と追い打ちをかけると、小倉智昭が「嫌な奴だねえ」といったのである。もちろん「嫌な奴」は、100パーセント小倉のほうである。山崎も伊藤も余計な一言だが、偉いのは古市憲寿だ。