遺伝子操作の双子誕生、誰も言わない問題の本質とは

医学的問題――すでにHIV感染を防ぐ方法がある

 今回については、医学的なリスクも多く指摘されている。

 賀氏は、エイズを発症させるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染に関わる遺伝子「CCR5」の機能を失わせ、生涯にわたってHIVに感染しにくくしたと主張している。

 確かに、CCR5遺伝子が機能しない人は欧米の白人で見つかっており、HIVに感染しにくいことが分かっている(Dean et al., Science, 1996)。しかし、一方で「西ナイルウイルス」という別のウイルスに感染しやすいという報告がある(Glass et al., J Exp Med, 2006)。また、インフルエンザウイルスに感染した時の死亡率が上昇するデータもある(Falcon et al., J Gen Virol, 2015)。

 つまり、単純に感染しにくくなったという「底上げ」になっていないのだ。なお、このデータは欧米の白人のもので、アジア人でどうかは不明である。

 また、現代ではHIVに感染しても、薬を適切に飲むことでエイズの症状をかなり抑えることができる。また、親から子どもへのHIV感染を防ぐ方法も確立されており(体外受精や帝王切開など)、実際に賀氏も、父親からの感染を防いだ状態で受精卵を作った。

 これらの背景から、HIV感染を予防するためのゲノム編集は、医学的な必要性がまったくないという批判が多く寄せられている。技術的課題で述べたオフターゲット効果も考えると、得られる(かもしれない)メリットより、予想もできないリスクがあまりにも大きすぎると言わざるを得ない。

倫理的問題――治療か強化か、線引きできるのか

 オフターゲット効果などによる悪影響は、今回生まれた子どもだけでなく、孫以降も被ることになる。もし、孫が生まれた後で重大な悪影響が分かったとしたら、取り返しがつかないかもしれない。

 また、受精卵へのゲノム編集については、生まれてくる子どもは意思を表明できない。つまり、本人の同意なしで行われる。生まれた直後で意思表明ができない赤ちゃんが病気のとき、親が代理となって「治してほしい」とお願いするシチュエーションに似ているように思えるが、今回のように「通常の人間と同じくらいHIVに感染しやすい」を病気と見なしてよいのだろうか。


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