遺伝子操作の双子誕生、誰も言わない問題の本質とは

 ただし、筋ジストロフィーやハンチントン病など、重篤な遺伝性疾患の場合は意見が分かれるだろう。実際、ある遺伝性疾患をもつ方で、受精卵にゲノム編集を使って「病気の連鎖をここでおしまいにしたい」という意見を聞いたことがある。このような強い意思を無視することはできない。

 ゲノム編集に限らず、すべての医療行為に「絶対」はなく、少なからずリスクは存在する。ゲノム編集の正確性がさらに増し、オフターゲット効果をかなり抑えられるようになれば、ある段階から多くの人が受け入れる将来がやってくるかもしれない。

 しかし、治療できるということは、強化できるということでもある。受精卵へのゲノム編集は、どこからが治療または予防で、どこからが強化なのだろうか。その線引きは、誰がどう決めるのだろうか。

「中国だから」は関係ない、問題の本質

 今回、中国の研究者が行ったということで、中国全体を批判するコメントをいくつも見聞きした。筆者は、あるテレビ局から今回のことについて電話取材を受けたが、そのときも中国批判につなげる意図が垣間見られた(説得した結果、放送ではそうならなかったが)。

 しかしそれでは、問題の本質を見失うことになる。

 今回の問題の本質は、「個人または少数のチームでできてしまった」ことであると、筆者は考えている。それだけ、ゲノム編集は簡単に、安価にできる。不妊治療クリニックで顕微受精(卵子に直接精子を注入する方法)ができる設備があれば十分なくらいだ。必要な材料も、研究目的と称すれば比較的簡単に入手できる。2015年にNHKで放送されたドラマ『デザイナーベイビー』では、この問題が描かれた。

 日本は体外受精の実施件数が世界一(浅田義正、河合蘭 著『不妊治療を考えたら読む本』講談社より)であることを考えれば、受精卵を集めやすい日本こそ、受精卵へのゲノム編集が行われる環境が整っていると見なすこともできてしまう。

 不妊治療クリニックの医師のもとに、「どうしてもゲノム編集をやってほしい、あなたの面倒は一生見る」というパトロンが現れたと想像しよう。オフターゲット効果などの懸念事項を十分に検証せず、大きなリスクを背負った子どもが日本の不妊治療クリニックから誕生する余地は十分にある。


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