自治体がDX(デジタルトランスフォーメーション)に取り組み始めている。だがDXを担う「テック系企業」の多くは公共システムの経験がほとんどない。自治体とテック系企業の間に埋めがたいギャップを埋めていく努力が必要だと、市議会議員の経験もあるPublic dots & Companyの伊藤大貴氏は指摘する。ここで先進事例として紹介する2つの自治体は、どちらも企業の経験を有する人材が首長を務めており、DXの推進に際して外部からの人材を充てていることが大きな注目点だ。(JBpress)

(株式会社Public dots & Company 伊藤大貴)

 企業における取り組みが進み始めているDX(デジタルトランスフォーメーション)。その波が自治体にも押し寄せてきている。企業におけるDXとは、デジタル技術を利用して事業を根本的に変革することと捉える場合が多いが、自治体におけるDXとはどのようなものだろうか。

 企業がDXに取り組む背景には、これまでにないビジネス・モデルを展開する新規参入者(ディスラプター)によって、従来のビジネス構造が根本的に変化し、場合によっては社業を根こそぎ奪われることへの危機感がある。

自治体の生産性向上が迫られている

 一方自治体がDXに取り組もうとしているのは、急速な勢いで自治体のあり方が今、変わろうとしているからだ。人口減少や高齢化、都市への人口集中、自治体の財政難などが相まって、自治体が自前主義で、すべての公共サービスを提供する「総合百貨店主義」が限界を迎えている。このために自治体の生産性向上は待ったなしであることを、以前の記事「生産性向上に舵を切り始めた地方自治体」(https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58542)で説明した。筆者はこれを「都市のオープン化」と呼んでいる。

 DXは、単純に「既存の業務をデジタル技術を使ったものに置き換える」というものではない。自治体DXを構成する要素は大きく3つある。(1)CX(カスタマーエクスペリエンス)の強化、(2)業務改善/業務改革、(3)イノベーションの創造、である。自治体におけるカスタマーとは住民のことだ。イノベーションとはたとえば、医療データ、観光データ、教育データなど自治体が持つ各種データを民間企業が活用することで、新しいソリューションやサービスを生みだし、それによって住民サービスの質が向上する、というようなことである。つまり自治体DXとは「デジタル技術の浸透で、人々の生活がより良くなっていく」ことと言える。

 5G、AI、IoT、ブロックチェーンなど、実用フェーズを迎えている各種のテクノロジーを積極的に活用すれば、自治体の都市経営において生産性の低い部分を民間企業のサービスやプロダクトで代替できる。それは新しい官民連携時代の到来とも言える。

自治体とテック企業の間にあるギャップ

 企業にとって、自治体のDXは新たなビジネスチャンスの到来でもある。ただ、特にDXを担う「テック系企業」の多くはこれまでの公共システム(自治体との案件)の経験がほとんどないと言っていい。このため現状では自治体とテック系企業の間に埋めがたいギャップが存在する。