新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大をめぐっては、鼻咽頭のぬぐい液からウイルスを調べる検査が注目されている。ウイルスの抗原や抗体の検査も登場する見通しだ。さらに、5月7日にはレムデシビルが新型コロナウイルス感染症の治療薬として初めて承認された。新型コロナウイルス感染症に対抗するワクチン開発も待たれる。

 こうした中で日本ではあまり話題にならないが、世界的に注目され始めているのが、大便の中に潜むウイルスの検査である。ウイルスが大便から検出される期間がこれまで考えられていたよりも長い、ほぼ1カ月に上るという研究報告や、下痢症状を重視すべきだという研究も出ているからだ。そうした中で、ウイルスの流行状況を測るため、下水調査にも注目が集まっている。

 獣医師資格を持つ筆者から見ると、大便に注目が集まる現状は、あまり知られていない動物のコロナウイルスとの共通項から納得できる部分もある。そうした大便との関連について書いていく。

下痢に注目する研究が増えている

 新型コロナウイルス感染症によって引き起こされた下痢が、これまで言われてきた以上に重要だという報告が増えている。新型コロナウイルス感染症では、最近見直されたが、発熱症状が重視されており、「37度5分」が4日以上続いた人がPCR検査を実施するかどうかの判断基準になっていた。

 海外でも発熱が重要と見なされていたが、病気の実態についての研究が進むにつれて、症状がさほど重くはない人の中で、下痢だけ続いている場合が多いと続々と報告されている。

 公式発表前に先行公開された研究だが、中国と米国の共同研究グループが症状の軽い206人を調べたところ、48人は下痢などの消化器症状しか見られなかったと報告した。また、全体で69人が下痢になり、このうち2割は最初の症状が下痢だったと指摘。研究グループは最初の症状として下痢などが重要だと警告している。

 さらに、この5月に中国の研究グループが著名な米国の医学誌『ランセット』消化器病版で、対象者74人の大便のウイルスを詳細に分析した研究内容を出した。

 呼吸器を調べた鼻咽頭ぬぐい液などと大便の両方の検査を連日実施した74人のうち、大便からウイルスを検出されたのは55%の41人とそこまで多いわけではなかった。ただ、ウイルスが検出された日数を見ると、そこには大きな違いがあった。

 呼吸器と大便の両方からウイルスが検出されたグループの場合、最初の症状が出た日を起点にすると、呼吸器からウイルスが検出された日数は平均16.7日後まで続いたのに対し、大便は平均27.9日後までと11日も長かったのだ。

 この中には、大便がウイルスを出し続けた日数が、呼吸器からウイルスが検出されなくなった日から数えて33日に及んだ人がいた。また、症状が出た日から数えて47日後まで大便にウイルスが検出され続けた人もおり、胃腸に定着するウイルスはしぶとく居座る可能性がうかがわれる。

 大便の中のウイルスが感染性を持つかはまだ良く分かっていないところもあるが、SARSやMERSの研究から判明しているように、感染拡大にとって大便が重要な意味を持つ可能性があると研究グループは指摘。感染者に対しては大便からのPCRが強く推奨されると強調している。呼吸器からのPCRに追加するのではなく、回復者を対象とすることで、いつ警戒を解けるかの指標になるからだ。

 今回の研究の結果から見ると、呼吸器のPCRが陰性と判定されてから11日間程度は大便中にウイルスが存在している可能性がある。