連載「実録・新型コロナウイルス集中治療の現場から」の第17回。副作用は? 蓋を開けたら「あまり効かなかった」という可能性も!? 前例のないスピードで開発がすすむ新型コロナウイルスに関連して見えてくる“バランス感覚”の重要性を讃井將満医師(自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長)が訴える。

 新型コロナウイルスのワクチンの開発がいままで見たことのないようなスピードで進んでいます。その報道を目にしない日はありません。

 ワクチンとは感染症に対する免疫を獲得するための医薬品です。その開発は(新薬の開発と同様)、おおむね以下のような段階を踏みます。

①基礎研究:薬になる可能性のある物質を調べる。

②非臨床試験:動物や細胞を使って有効性と安全性を確認する。

③第Ⅰ相試験:少数の健康成人に対して行う臨床試験。おもに安全性、吸収・排泄の時間などを調べる。

④第Ⅱ相試験:比較的少数の患者に投与し、有効性・安全性を調べる。

⑤第Ⅲ相試験:多数の患者について、標準的な薬もしくはプラセボ(ブドウ糖などの偽薬)と比較して有効性・安全性を確認する。

⑥医薬品として承認:日本の場合、厚生労働省に対して承認申請。厚労省が審査・承認を行う。

⑦第Ⅳ相試験:市販後に行われる再確認。多くの患者が長期間にわたって使用した時の安全性・有効性などの情報を集める。

 このように、安全性や有効性を見極めるため、ワクチンの開発は非常に慎重かつ長時間をかけて行われます。研究開始から承認まで、早くても10年ほどかかるのが普通です。ところが、新型コロナウイルス感染症では、開発期間が1年前後に短縮されようとしているのです。

 それは、死亡者が多く経済への影響も甚大な世界的なパンデミックに対し、医学者・科学者・製薬会社などが総力を挙げて戦っている結果なのだと思います。グローバルな情報の共有は非常に活発で、すさまじい量のデータ・情報が世界を駆け巡っています。ただし情報は玉石混交で、中にはセンセーショナルではあるけれど怪しいものもあるので、注意をする必要があるのですが・・・。

変化してきた厚労省の姿勢

 これだけスピードが速いと、安全性が担保されているのか心配になります。

 もともと日本では、ワクチンによって何か弊害があった時に、そのワクチン自体が悪いという流れに一気に傾き、公的に使用を中止するということがしばしばありました。厚労省は、ごく少数でも被害があると、多数の利益を確保しようとは動かない――“リスク・ベネフィット”の原則になかなか立たないという歴史がありました。