見えてきた「領土返還なき日露平和条約」の可能性

ロシア首都モスクワで記者会見に臨むセルゲイ・ラブロフ外相(2019年1月16日撮影)。(c)Kirill KUDRYAVTSEV / AFP〔AFPBB News〕

 1月22日に安倍晋三首相がロシアのプーチン大統領との首脳会談に臨む。だが首脳会談に先駆けて開催された外相会談では、ロシア側から北方領土に関して厳しい要求が突き付けられた。北方領土交渉は今後どのような展開があり得るのか。軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏が現実的な視点から交渉の行方を占う。

ロシア側には2島すら引き渡す意思はない

 2019年1月14日の日露外相会談が物議を醸している。相手方のラブロフ外相が「まず日本は4島がロシア領と認めよ」「北方領土という用語を使用するな」などと強い要求をしたからだ。

 ロシア政府はかねてから4島はロシア領だと主張しており、日露間に「領土問題は存在しない」との立場だが、これからまさに交渉を進めようという矢先に、日本側も譲れない主権放棄を迫るというのは、いきなり先制パンチを放ったようなかたちになった。

 これに対し、日本政府は会談の内容について説明することを拒否。ただ「日本側の考えを先方に伝えた」と公表するに留めた。これはロシア側の強い態度に、日本側が打つ手を失っていることを示している。最近、日本政府は対露交渉について具体的な話を一切しなくなっているが、それはロシア側から色よい反応が引き出せていないことの証明だ。今回の外相会談でも、通常は会談後に行われる共同記者会見を日本側の要望で取りやめるなど、日本政府は逃げの一手に終始している。今年の年初には「安倍政権の狙いは、日露交渉で得点を挙げて選挙で勝つこと」などといった超楽観的な観測記事も出ていたが、もはや一気に吹き飛んだような雰囲気である。

 もっとも、ロシアがこれまで1ミリすら領土返還の約束をしていなかった事実から、筆者などは「プーチン政権には2島引き渡しの意思すらない」とかねて指摘してきた。今回のラブロフ外相の強硬姿勢も、十分に予想範囲内である。安倍政権としては、期待どおりにいかずに戸惑っているかもしれないが、そもそも「首脳同士の信頼関係があれば、2島は確実。あとはプラスアルファだ」というような楽観的な見方自体が、ロシア側の言動をきちんと分析できていない誤認識である。


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