トランプ「ツイッターブロック違憲判決」が示すもの

 スポーツ選手のみならず、芸能人も全く同様である。アメリカの俳優は、アカデミー賞授賞式の場でも、政権批判を堂々と行うし、主催者もメディアも国民も、それを阻止しない。これが言論の自由ということであり、自ら勝ち取って憲法に記したアメリカ国民と、アメリカ占領軍によって基本的人権擁護を謳った憲法を「押しつけられた」日本国民との違いである。

「ツイッターブロック違憲判決」が示したアメリカ民主主義の強靭さ

 第二は、トランプ大統領が、自分のツイッターのアカウントに批判的な人がコメントを書き込むのをブロックしていることについて、アメリカの連邦控訴裁判所は、7月9日、憲法違反だとする原告側の訴えを認めたことである。原告のコロンビア大学の研究所は、1月に連邦地方裁判所に対して、表現の自由の侵害だとして、ブロック機能の解除を求め勝訴しており、今回の控訴裁(高裁)もその判決を支持したのである。

 判決の根拠は米憲法修正第1条であるが、その条文は次のようになっている。

「連邦議会は、国教を樹立し、または宗教上の自由な行為を禁止する法律を制定してはならない。また、言論もしくは出版の自由を制限する法律、または人民が平穏に集会し、もしくは苦痛の救済を政府に請願する権利を制限する法律を制定してはならない」

 トランプによるツイッター批判ブロックは、「言論もしくは出版の自由を制限する」ことになるから憲法違反だ、という判決である。トランプはツイッターを利用して政府の仕事をしているので、それを読んだり、反応を寄せたりすることから国民を排除することはできない、つまり彼のツイッターは「公務同然」であり、批判的な意見を表明する機会を失わせてはならないと、3人の裁判官が一致してその理由を説明している。

 今回の判決は、アメリカにおける民主主義が制度的にいかに担保されているかをよく示している。権力者が権力を乱用しないように牽制するメカニズムとしては、三権分立と連邦主義がある。

 三権分立は、モンテスキューの思想として周知の通りであるが、行政、立法、司法の三つの権力が、「抑制と均衡(Check and Balance)」を機能させる仕組みである。ツイッター批判ブロックの違憲判決は、司法が行政権とは独立して憲法が期待する仕事をしていることの証左である。

 もう一つの連邦主義(federalism)は、建国の父、マディソンの考え方で、中央(連邦)政府が巨大になりすぎないように、各州に権力を分散する仕組みである。トランプが地球温暖化対策を定めたパリ協定から離脱したとき、カリフォルニア州やニューヨーク州などが反旗を翻して、自ら温暖化対策を講じたのが、その好例である。

 建国当初の憲法草案では個人の権利を保障する条項がなかったが、1789年の第一回連邦会議で個人の権利に関する10箇条の修正条項を採択した(1791年に確定)。これが、権利の章典と呼ばれるもので、先に引用したのがその修正第1条である。条文が「連邦議会は・・・法律の制定をしてはならない」とあるように、これは各州が連邦政府の特定の行為を禁止するための条項なのである。つまり、各州の自由を連邦政府が弾圧する法律を連邦議会が制定しないようにすることが、修正条項の目的だったのである。

 こうして、トランプのような暴君が出現しても、一方では議会や裁判所が、他方では各州が牽制できるようなシステムができあがったと言えよう。イギリスからの独立戦争を戦ったアメリカ国民が、命をかけて確立した連邦主義なのである。

米ホワイトハウスで取材に応じるドナルド・トランプ大統領(2019年7月5日撮影、資料写真)。(c)SAUL LOEB / AFP〔AFPBB News〕


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