(山田 敏弘:国際ジャーナリスト)

 2020年の年始早々、米軍はドローンによる攻撃で、イラン革命防衛隊コッズ部隊のカセム・ソレイマニ司令官をイラクで暗殺し、世界を震撼させた。その後は、イランが報復としてイラクの米軍基地を攻撃するなど混迷の度が深まった。メディアでもいろんな角度から記事が報じられ、「第三次世界大戦が勃発か」と煽るメディアもあった。

 さすがに中東や欧米の情勢を見れば大規模な戦争が起きるとは思わなかったが、筆者は今後どうイラン情勢が動くのか米国の関係者に対して取材を開始していた。

 そんな矢先に、今度はイランの革命防衛隊がウクライナの民間機を誤って撃墜するという痛ましい事件が起きた。

 皮肉なことに、この誤爆によって、イランはますます米国と戦火を交えるどころではなくなっている。ただイランが再び米国への報復という名の挑発を開始する可能性は高い。

 そこで筆者が取材した米政府関係者や元米諜報機関関係者らなどが、今後のイラン情勢をどう見ているのか紹介したい。

イランによる挑発にも動かなかったトランプ

 まず今回の混乱について簡単に振り返る。そもそも米国とイランは過去40年にわたって対立してきた歴史がある。今回の混乱は、2018年5月にドナルド・トランプ米大統領が2015年の核合意から離脱したことが直接のきっかけとなった。その後再開された対イランの経済制裁で大打撃を受けたイランは、それから米国に対する挑発行為を繰り返した。

 2019年6月、イランは米無人偵察機グローバルホークを撃墜。9月にはイランと敵対し、米国と友好関係を維持するサウジアラビアで、イランが仕組んだとみられる国営石油企業サウジアラムコを狙ったドローン攻撃が発生した。サウジは石油生産量で世界の12.7%以上を占めるが、その攻撃によって生産量は半減し、大混乱をもたらした。