(北村 淳:軍事社会学者)

 日本は新型コロナウイルス対策を巡って国際社会から奇異の目を向けられているが、軍事的側面においても、今回のパンデミック騒ぎによって国際的信頼を失いつつある。裏を返せば、日本に対する仮想敵勢力にとっては、ますます日本は“無視してもかまわない”存在になりかねないといえよう。

直視せねばならない中国優勢

 アメリカ海軍は、第2次世界大戦で日本の勢力を駆逐して以来、70年以上にわたって南シナ海での軍事的覇権を手にしてきた。ところが中国海洋戦力による南シナ海進出戦略が加速度的に進展してきたため、ここ数年来、南シナ海でのアメリカの軍事的覇権は色あせつつある。

 国内的には米国民が莫大な税金を投入している軍へ失望することを避けるため、そして対外的にはアメリカの同盟友好諸国からのアメリカに対する信頼を失わないため、南シナ海での米中軍事バランスの真相が米側から語られる機会は少ない(反対に、中国側は精力的にプロパガンダを展開している)。

 ただし、中国海洋戦力の実体を熟知している米海軍や米海兵隊などの中国専門家たちからは、南シナ海(それに東シナ海)での米中軍事バランスの現状を直視し、米国としての挽回策を猛スピードで実施しないと、さほど遠くない将来にはとんでもない事態が招来しかねないと言った深刻な危惧の声が上がっている。

中国とマレーシアの睨み合い

 中国海軍は、国際社会が新型コロナウイルス騒ぎに釘付けになっている隙にますます南シナ海での軍事覇権を確実なものにしてしまおうと、様々な拡張策を行使し始めた。そうした中国海軍の行動を牽制するため、F-35Bステルス戦闘機やMV-22オスプレイを装備する海兵遠征隊を積載した強襲揚陸艦「アメリカ」(LHAアメリカ)を旗艦とし、ミサイル巡洋艦バンカー・ヒルとミサイル駆逐艦バリーの3隻で編成されたLHAアメリカ艦隊は、南シナ海でのパトロールを実施している。