暴力から逃げ、貧困と闘う― 夜の少女たちから今の沖縄が見えてくる

暴力から逃げ、貧困と闘う― 夜の少女たちから今の沖縄が見えてくる

■裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち(上間陽子著、太田出版)

新聞各紙の読書欄(書評欄)を読むのは、週末の楽しみだ。はっとする発見もあるし、再認識もする。7月16日(日)の朝日新聞の書評欄の「売れている本」で紹介されたのが、評者も注目している「裸足で逃げる 沖縄の夜の街の少女たち」(太田出版)である。

2017年2月刊行で、この時点で6刷1万2500部だという。著者の上間陽子氏(現・琉球大学教育学部研究科教授)は、沖縄出身で、1972年生まれ。専攻は教育学、生活指導の観点から主に非行少年少女の問題を研究し、1990年代後半から2014年にかけて東京で、以降は沖縄で未成年の少女たちの調査・支援に携わる。

「援助交際」で生活

「まえがき―沖縄に帰る」をまずはきちんと読みたい。

「私たちは生まれたときから、身体を清潔にされ、なでられ、いたわられることで成長する。だから身体は、そのひとの存在が祝福された記憶をとどめている。その身体が、おさえつけられ、なぐられ、懇願しても泣き叫んでもそれが止まぬ状況、それが、暴力が行使されるときだ。そのために暴力を受けるということは、そのひとが自分を大切に思う気持ちを徹底的に破壊してしまう。それでも多くのひとは、膝(ひざ)ががくがくと震えるような気持ちでそこから逃げ出したひとの気持ちがわからない。そして、そこからはじまる自分を否定する日々がわからない。だからこそ私たちは、暴力を受けたひとのそばに立たなくてはならない。そうでなければ支援は続けられない。」

一番身近なはずの教師について、多忙さを理由にするのは正確でなく、「子どもと語り合うことがなくても、教師のルーティンはまわる。だから多くの教師は、その子どもたちにその生活を尋ねない。」「子どもに尋ねることができないひとのもとでは、子どもの現実は明らかにされないということだ。」という言葉が重い。

上間氏は、「15歳のときに、捨てようと思った街に私は帰ってきた。今度こそここに立って、女の子たちのことを書き記したい。これは、私の街の女の子たちが、家族や恋人や知らない男たちから暴力を受けながら育ち、そこからひとりで逃げて、自分の居場所をつくりあげていくまでの物語だ。」とする。

具体には、キャバクラで勤務したり、「援助交際」をしたりしながら生活をしていた、10代から20代の若い女性たちの記録だが、もしかすると、自分も同じような立場に立たされれば、同じように振る舞うのではないかという思いから、「大文字の概念枠組みで彼女たちの人生を分析するということではなく、彼女たちの見てきた景色や時間に寄り添いながら、彼女たちの人生をできるだけまとまった「生活史」の形式で記すことを目指し」たという。

「キャバ嬢になること」に登場する市役所の生活保護の担当部署の担当者など、残念ながら登場する公的な立場の者はほぼ役に立たない。きちんと向き合うことの難しさと、それぞれの幸せのために何ができるのか、と深く考えさせられる。この夏に必読の1冊だ。

また、これは、沖縄だけの問題ではない。栃木県の地元紙下野新聞の子どもの希望取材班の連載記事が新書化した1冊が、「貧困の中の子ども 希望ってなんですか」(ポプラ新書 2015年3月)だ。こちらでは、2014年当時、栃木県の実情や、荒川区や足立区など先進的に子どもの貧困に取り組んだ自治体の取り組みも紹介される。まさに社会問題について、ハートで寄り添いつつ、クールヘッドで深堀するジャーナリズムの原点をみた。

経済官庁 AK

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