安倍晋三首相が唱える敵基地攻撃能力保有に関し、自民党の岸田文雄政調会長は与党内の調整段階で板挟みとなる可能性もありそうだ。陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」計画断念を受け、30日から議論を開始する自民党は前向きな一方、公明党が慎重な立場を崩していないためだ。

 岸田氏は29日の記者会見で、「わが国のミサイル防衛体制、安全保障体制が十分か議論を深めるのは大事だ。あるべき姿を提言し、与党として責任を果たす」と語った。

 30日にスタートする自民党国防族議員による「検討チーム」は、岸田派の小野寺五典元防衛相が座長を務める。小野寺氏は党が2017年に敵基地攻撃能力保有の検討を政府に求める提言をまとめた際の中心人物。このため、検討チームは従来方針に沿って議論を進め、7月中に提言をまとめる見通しだ。

 これに対し、「平和の党」を掲げる公明党は保有に消極的で、山口那津男代表は23日の記者会見で「慎重に議論したい」と明言した。同党関係者は、来年7月に任期満了を迎える東京都議選や衆院議員の残り任期が1年4カ月であることを踏まえ、「選挙前に持ち出されても困る」と不快感を示す。

 自民党は党内議論の結論を踏まえ、公明党との協議に入るとみられる。ただ、岸田氏は新型コロナウイルス感染拡大をめぐり、「減収世帯への30万円給付」が断念に追い込まれ、調整能力に疑問符が付けられたばかり。自民党関係者は「給付金すらまとめられず、岸田氏で大丈夫か」と語る。

 後手が目立つ新型コロナ対応などで首相の求心力は低下し、岸田氏の「禅譲」路線にも狂いが生じ始めている。国民の間で岸田氏の人気は広がりに欠けており、首相も周辺に「岸田氏の演説は心に響かない。大事なことは情念だ」と漏らしたという。岸田氏は、さらに失策を重ねたら難しい立場に立たされそうだ。