朝鮮学校に対する授業料無償化訴訟の判断はなぜ分かれたのか

朝鮮学校に対する授業料無償化を求めた訴訟

学生・生徒が経済的事情により勉学を断念することが内容、国の負担で教育の機会均等を実現するために、2010年に高等学校の授業料の実質無償化を定める法律が制定されました。これにより公立学校についての授業料が免除され、私立高校にも就学支援金が支給されることになりましたが、外国人学校が実質無償化の対象となるには文部科学大臣の指定を受けることが条件とされました。

外国人学校である朝鮮学校については、法律制定当時には無償化の対象とするかどうかを留保されていましたが、2013年に文部科学大臣が拉致問題などを理由に、朝鮮学校を無償化の対象とすることは国民の理解が得られない、として不支給を決定しました。

これに対し、朝鮮学校を運営する学校法人や元生徒らが、「外交問題を理由に不利益を与えることは差別意識を助長するものであり違法である」として、全国5カ所で対象から除外した国の処分を取り消すよう訴えていました。

大阪と広島で裁判所の判断が真っ二つに割れる

これらの訴訟について、本年7月19日に広島地方裁判所で原告の訴えを退ける判決がなされましたが、同月28日には大阪地方裁判所で国の処分は違法であるとする判決がなされ、裁判所の判断が真っ二つに割れています。

そこで、今回はこの問題について、なぜ裁判所の判断が分かれたのかを考えてみたいと思います。なお、広島地裁・大阪地裁とも判決全文の公開がなされていないため、検討にあたっては報道で報じられた情報のみを元にしており、不正確な点がある可能性があることを予めお断りしておきます。

この問題で判断が分かれたのは、報道を見る限りでは不支給処分が政治的な理由に基づくかどうかの判断の違いにあると思われます。

広島地裁判決は、国側が主張した事実を認め、朝鮮学校への補助金が授業料に充てられないことが懸念される、と判示して、朝鮮学校を適用対象外としたことは民族を理由としたものではなく違憲ではない、としています。

これに対し大阪地裁判決では、国が「外交的理由から朝鮮学校を除外したものではない」とした主張を排斥し、「無償化に関する法律を朝鮮学校に適用することは拉致問題の解決の妨げになり、国民の理解が得られないという外交的、政治的意見に基づいて対象から排除したと認められる」としました。そして、外交的・政治的理由に基づいて行った国の措置は高等学校の無償化を定めた法律の趣旨を逸脱するものであり違法・無効であると判断しました。

今後の裁判の行方は?

今後判決がなされる3つの裁判が残されており、また広島地裁判決に対しては原告らが控訴をしていますので、今後は高等裁判所・最高裁判所で他の判決も踏まえた統一的な判断が示される可能性も高いと思われます。そのため、現時点では広島地裁・大阪地裁の各判決内容の是非については立ち入りません。もっとも、国の処分について異なる裁判所で判断が分かれるということが、この問題の捉え方の難しさを表しているのだろうと思います。その意味では、上級審での統一的判断が必要な事件だと考えます。

この問題についての議論は得てして感情的になりがちなものと思われますが、今後は裁判の推移を見守るとともに、冷静な議論・判断がなされることを期待します。

(半田 望/弁護士)

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