ゲーム依存症が国際疾病に認定 求められる対策について

社会生活や健康面で問題が起こりうる依存症とは?

アルコールや覚せい剤といった精神に作用する薬物を繰り返し使用していると、それらの薬物の渇望が高まる結果、自らの日常生活や健康への明らかな悪影響を無視してまで、使用を続けてしまうようになることがあります。

また、離脱症状といい、使用の中断時に激しい精神的な苦痛や、身体症状が出現するため、その薬物の使用をやめられない状態になることがあります。依存性が強い薬物の反復的使用によって陥ったそのような状態を薬物依存症といいます。

他にも、ギャンブルやセックス、買い物、ネットゲームといった強い快感をもたらすことがある行動がやめられなくなってしまった状態を、ある特定の行動のプロセスへの依存症(過程依存症)といいます。過程依存症は、薬物依存症と同様、快楽への抑えられない渇望に突き動かされ、特定の行動をし過ぎるために、社会生活や健康面での問題が見られることが珍しくありません。

2018年6月、ゲーム障害が国際疾病に加えられた

2018年6月18日、世界保健機関(WHO)により、ゲーム依存症は、「ゲーム障害」として、国際疾病分類(ICD)の一つに加えられることになりました。その定義は、「ゲームの時間や頻度をコントロールできない」、「日常生活でゲームを最優先し、生活や健康に問題が起きてもやめられない」という状態が1年以上続いている場合、とされています。

しかし、WHOによるこの定義に対し、ESAというアメリカのビデオゲームの業界団体が「客観的な証拠に乏しい」と反発しています。また、専門家以外の方が「何かにのめりこむことが病気になるのか?」と違和感を覚えることも少なくないようです。しかし、ゲーム依存症は確実に存在するし、ゲーム依存は単に「のめりこむ」こととは異なります。

典型的なゲーム依存症の方の場合には、ネットゲームでは数十万以上ものの高額な課金をゲームのサイトにすることがあります。また、食事も余りとらず、昼夜の境なく、誰ともほとんど話さないで自室でゲームに熱中する状態が長期にわたって続くことがあります。その上、病的といえる自分の生活や行動についての周囲の意見を聞き入れられないものです。

それはほかの依存症と同様、自分の健康や社会生活が犠牲になっていることを十分に頭ではわかっていても、本人すら制御ができないゲームへの強い衝動によってやめられないのです。まず、ゲーム依存症が起こりやすい状態からご説明します。

ゲーム依存症とひきこもり、社交不安症

日本でひきこもりが社会的問題となって久しいですが、ほぼ例外なく、程度の差こそあれ、ゲーム依存症、ないしはその傾向が見られます。パソコンやスマホのゲームは、明らかに引きこもりを助長しているのです。

ネットゲームこそが唯一の社会参加・心の支えである場合も

特にスマホのゲームは、ギャンブル性に富む課金のシステムやいつでもどこでも出来るその手軽さから、依存症を引き起こしやすくなっています。年齢相応の望ましい社会参加より、引きこもってゲームをしていることを選ぶひきこもりの患者さんは非常に多いのです。しかし、長期にわたって直接人と接する機会がほとんどない引きこもりの患者さんにあっては、社交不安症が見られ、人の視線にさらされることすら苦痛になっていることが珍しくありません。その場合には、ネットゲームこそが患者さんの唯一の社会参加、心の支えとすらなっている場合があり、弊害ばかりとは言い切れないのです。

長期にわたり、引きこもっている患者さんがゲームにばかり熱中し、昼夜逆転し、食事すらおろそかになることを見かねたご家族が強制的にゲームを取り上げたり、ネットの接続を切ったりすることで、患者さんが激怒し、時には暴力行為に及ぶことがあります。その場合、ご家族は大変ですが、患者さんが激怒することも無理がないことなのです。唯一の心の支えを取り上げられた人間が絶望に陥ることは、当然のことともいえるでしょう。

発達障害はゲーム依存症につながりやすいのか?

代表的な発達障害には、注意欠陥多動性障害と自閉症スペクトラム障害があります。実はこのどちらもゲーム依存症になりやすい傾向を持っています。注意欠陥多動性障害は、衝動的で、すぐに何らかの結果や、気分の変化を求めたがる傾向にあり、そもそもアルコール依存症などの薬物依存を伴いやすいのですが、ゲーム依存症についても例外ではありません。

また、対人関係が苦手で、それを回避しがちな自閉症スペクトラム障害にあっても、直接的なコミュニケーションが苦手な分だけ、ネットゲームにはまりがちな傾向をもっています。また、精神面で発達途上にある子供は大人より衝動的で、集中力に乏しく、物事に退屈を感じやすいものです。そのため、ゲームが提供する手軽な愉しみにひかれやすく、その分ゲーム依存症に陥る傾向が強いといえます。

ゲーム技術の発達でゲームはより「依存症を誘発しやすい」ものに

今ご説明した状態にある方々に限らず、何らもともとの精神的な問題を持っていない方でもゲーム依存症に陥ることがあります。その理由は、現代にあって、大幅な進歩を遂げたネットやコンピューター技術に基づいたゲームの特徴にあるといえるでしょう。人々の娯楽として確立してから、まだ日が浅いゲームですが、本や音楽、映画やドラマといった伝統的な娯楽のコンテンツと比べ、のめりこみやすい性質をもっています。

現実世界より魅力的なゲームの世界

なぜなら、他のコンテンツと異なり、ゲームの場合では、遊ぶ人は主体的にゲームの世界に参加することになるからです。さらに、そのゲームの世界とは、最新のコンピューター技術によって提供されるグラフィックや音楽によって構成された、大変魅力的なものに仕上げられています。その結果、ゲームは疑似現実とはいえ、現実世界では簡単に得られない快楽すら提供していることがあるのです。

ゲーム依存症の方々にとって、ゲームの世界とは、現実世界より遥かに魅力的なもので、本来の自分が生きる場所のように感じられていることがあります。現実で主体者として行動する場合に直面しなければならない面倒な手続きや解決不可能なことは、ゲームの世界には基本的に存在しません。現実につきものの煩わしいストレスはなく、全能の主体者として魅力的なゲームの世界で快適に活動できるのです。

ゲームに「のめりこまされ」「集中させられている」

実のところ、現代のテクノロジーが結集されているゲームは、たかがゲームと言い切れないほど、魅力的な世界と、その世界における自由な活動の機会を提供しているといえます。さらに、ゲームには人々が自然と長時間に渡って集中できるよう、人の注意を引きつけ続けるいろいろな工夫がなされています。人々はゲームにのめりこむというより、のめりこまされており、集中するというより、集中させられているのです。

ゲーム依存への対策と家族の関わりについて

ゲームを否定せずに冷静に粘り強く関わる

ゲームへの依存が仕事や学校、身近な対人関係などの社会生活に影響したり、睡眠や食事がおろそかとなることで、健康状態が悪化し、それが数か月以上も続く場合には、依存症に陥りかけている可能性があります。依存症の常として、本人はゲームの悪影響に気づかないか、気づいていてもその兆候を無視していることがほとんどです。ご家族はゲームをやっている時ではなく、ゲームをしていない落ち着いている時を選び、ゲームが本人の生活にどのような影響を与えているか穏やかに問いかけてみるといいでしょう。

その時は感情的にならず、ゲームのことを否定しないようにしましょう。本人のゲームについての気持ちをまずは十分に聞き取ることが大切です。難しいことですが、ご家族が本人を批判せず、粘り強く関わることで、本人に落ち着いてゲームの悪影響も考えてもらうことの援助になるのです。

病院に行く場合はゲーム依存の治療に取り組んでいるのか事前に調べる

本人がゲームをやめられずに困っているということであれば、精神科の受診を考えてもいいでしょう。治療は薬物療法ではなく、医師やカウンセラーによるカウンセリングが中心になります。ただ、ゲーム依存の治療に取り組んでいる医療機関はまだ少ないので、事前によく調べましょう。

なお、依存症の場合、本人が受診を嫌がることが多いため、本人との関わり方について、まずはご家族だけで相談のために受診することも一法です。また、本人が受診した場合には、本人がゲーム依存症以前から抱えていた不安症や発達障害といった精神疾患が明らかになることが珍しくありません。

その時は、もともとの精神疾患を治療することで、ゲーム依存症の程度も軽くなるものです。もし受診が難しいのであれば、ゲームをやることのメリットとデメリットについて本人と話し合い、デメリットをどのように減らしていくか、相談してあげるといいでしょう。

ゲーム依存症から抜け出すのも本人の意志であることを理解する

ゲームにかかっている時間を正確に把握するために、日中の時間帯と行動を記した行動記録をつけてもらったり、運動や外出といった、ゲーム以外の活動について提案してもいいでしょう。あらゆる依存症に言えることですが、ゲーム依存症から抜け出すことも、あくまでも本人の意志なのです。周囲がそれを直そうと考えれば、かえって本人の反発を招きますから、何らかの提案の前に、必ず本人の気持ちを確認するようにして下さい。

家族が出来ることは、本人が依存症と向き合うことを援助するだけなのです。依存症は積み重ねられた病的な習慣の結果ともいえるもので、改善には時間がかかりますが、取り組み次第では改善できるものです。ご家族もご本人も焦りすぎず、できることから取り組むといいでしょう。

(鹿島 直之/精神科医)


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