採用担当者のための最新情報&実務チェックポイント - 2017年8月

ProFuture株式会社/HR総研
代表 寺澤康介
(調査・編集: 主席研究員 松岡 仁)

 ProFuture代表の寺澤です。
 今回は、6月19〜26日に楽天「みん就」(7月1日に「みんなの就職活動日記」から改称)会員を対象に実施した「2018年新卒就職活動動向調査」の結果をもとに、学生側の状況を過去のデータとも比較しながら見ていきたいと思います。

※「みん就」会員は、早期からの活動を志向するなど、一般の就職ナビ会員と比較して就職意識の高い学生の割合が多く、内定率の数値は他の就職ナビ調査よりも高めに出る傾向がありますのでご承知置きください。

今年も内定率の大学格差は減少

 まずは、6月末時点での内定社数を文系、理系別に見てみましょう。[図表1]は、文系学生の内定社数を大学クラス別に比較したデータです。「0社」の学生、すなわち未内定学生は、「旧帝大クラス」と「早慶クラス」でわずか9%、「中堅私大クラス」「その他私立大学」でも22%と、その差は最大でも13ポイントしかありません。「2社以上」の内定を保有している学生の割合では、「1社」の割合が高い「旧帝大クラス」が48%に対して、「その他私立大学」が44%で、その差はわずか4ポイントしかありません。

[図表1]大学クラス別内定社数(文系)

  資料出所:HR総研/楽天・みん就「2018年新卒就職活動動向調査」
  (2017年6月、以下図表も同じ)

 「旧帝大クラス」で「1社」の割合が高いのは、北海道大、東北大、名古屋大、九州大などの地方大学の比率が高いことが理由として挙げられます。地方在住の学生の就職活動量は、首都圏や近畿圏の大学の学生と比較して、地理的・時間的制約からどうしても少なめになりがちであり、さらに1社の内定をもらうとその時点で就活を終える学生が多いようにみられます。内定率だけを比べれば、「旧帝大クラス」と「早慶クラス」はともに91%ですが、「2社以上」の内定保有率では、「旧帝大クラス」の48%に対して、「早慶クラス」では63%と15ポイントもの差がついています。

 続いて理系の内定社数を大学クラス別に比較したデータを見てみましょう[図表2]。理系では、「その他私立大学」の未内定率が9%と低いのに対して、「中堅私大クラス」が20%と高くなっています。自由応募での大手企業狙いに失敗した学生が、他のクラスよりも多かったのではないかと思われます。最も未内定者が少ないのは「上位私大クラス」で、すでにわずか4%という結果になっています。

[図表2]大学クラス別内定社数(理系)

 文系と違って、「旧帝大クラス」の未内定は6%と低いものの、「早慶クラス」は10%となっており、「その他私立大学」よりも未内定率が高くなっています。学部生だけでなく大学院生の就活生が多いことや、推薦応募制度の利用など、文系とは異なる就職活動となっていることがこの違いを生み出す一因にもなっています。国公立大の内定社数で「1社」の割合が高いのは、私立大と比較して推薦応募利用者が多いためと推測されます。

4月面接解禁時代には大学格差は歴然

 かつて、「4月 面接選考解禁」のスケジュールであった時代の4月下旬時点での調査では、「旧帝大クラス」「早慶クラス」と「その他私立大学」では30ポイント以上の開きがあったものです。それと比べると今年の内定率の状況は、解禁1カ月時点ですでに大学間格差はほとんどない状況にあるといえます。
 [図表3]は、「4月 面接選考解禁」の最後の年であった2015年卒の学生に対して、面接解禁から約1カ月後の時期に調査した大学クラス別の内定率と今年の内定率を並べたものです。2015年卒では、最高は「早慶クラス」の77%に対して、最低は「その他私立大学」の38%と実に40ポイント近い開きがありました。これに対して、2018年卒では先に見たように、最高は「旧帝大クラス」と「早慶クラス」の91%、最低は「中堅私大クラス」と「その他私立大学」の78%で、その差は13ポイントしかありません。

[図表3]大学クラス別内定率比較(文系)

 この違いはどこからくるのでしょうか。全体の内定率についていえば、解禁日前に大手企業がどれだけ選考まがいの活動を行っていたかによります。4月解禁だった2015年卒採用では、フライング気味に選考まがいの活動をする大手企業も一部で見られましたが、多くは4月1日から始まる面接で選考していたものです。解禁から3週間を経過した調査時点では、まだ内定を出せていない大手企業も少なくありませんでした。それに対して、2018年卒採用では、「面談」「相談会」「質問会」など、「面接」という表現こそ使わないものの、実質的な選考活動が4〜5月に繰り広げられ、6月1日は面接開始ではなく、最終面接あるいは確認面接になっている企業が多く、その日に内定を取得する学生が続出しました。全体の内定率の底上げは、こうした大手企業の内定出しスピードによるものといえます。
 もう一つ、かつてあった大学間格差の背景には、中堅・中小企業の選考タイミングの違いもあります。4月解禁時代には、大手企業の選考は4月末から5月半ばには落ち着くため、その後に選考活動を展開する中堅・中小企業が多くありました。もちろん一部には解禁前に内定を出す中堅・中小企業もありましたが、早期に内定を出して、後から大手企業の内定出しによってひっくり返されるよりは、大手企業が落ち着いてから選考したほうが無駄にならないと考える企業が多かったのです。そのため、解禁1カ月後の内定率の差は、大手企業からの内定率の差に近いものがありました。
 ところが、2016年卒採用で「8月選考解禁」が打ち出されると、大手企業の選考が落ち着くのを待っていられないとばかりに、早期から選考活動をする中堅・中小企業が一気に増えたのです。その後、2017年卒採用からは「6月選考解禁」へと2カ月前倒しになったわけですが、いったん前倒しとなった中堅・中小企業の選考活動は、大手企業の選考を待つことなく、さらに早期化することとなったのです。つまり、2016年卒採用からは、解禁後1カ月の時点では大手企業だけでなく、中堅・中小企業の選考も進み、それら企業からの内定も出ている状況での内定率調査となったわけです。
 [図表4]は、理系について同様に比較したグラフになりますが、文系と同様の傾向が見て取れます。

[図表4]大学クラス別内定率比較(理系)

内定先の企業規模では依然として大学格差

 内定率では、大学間格差は減少していると述べましたが、内定した企業規模を比べてみると、依然として大学間格差が残っていることを確認することができます。企業規模を問わず内定出しが行われていることの証しでもあります。
 [図表5]は、文系の内定先企業規模を大学クラス別に比べたものです。「旧帝大クラス」では、「5001名以上」の超大手企業からの内定を取得した学生が最も多く55%、次いで「1001〜5000名」からが40%にも上ります。「早慶クラス」も「1001〜5000名」からが54%、次いで「5001名以上」からが51%で続きます。

[図表5]大学クラス別内定先の企業規模比較(文系)

 一方、「その他私立大学」を見ると、内定取得先として最も多いのは「501〜1000名」からの37%、次いで「1001〜5000名」からの34%、「5001名以上」は20%にとどまります。さらに、「301〜500名」が29%、「101〜300名」も28%と比較的高い割合になっています。表面的な内定率だけを見れば、大学間格差は是正されたかのようにも見えますが、内定先の企業規模を比較すると、依然として大学間格差が残っていることが分かります。また、大企業だけでなく、中堅・中小企業の内定出しも進んでいるため、結果的に内定率の上では大きな差が出なくなったということも併せて確認することができます。
 [図表6]は、理系について同様に比較したグラフで、文系と同様の傾向が見て取れます。

[図表6]大学クラス別内定先の企業規模比較(理系)

文系の7割、理系の8割超は就活終了

 内定を取得した学生に就職活動を続けるかどうかを聞いたのが[図表7](文系)[図表8]と(理系)です。就活を終了すると答えている学生は、文系全体で69%、理系全体で85%にとどまります。つまり、残る文系の31%、理系の15%は現在の内定先に満足しておらず、今後もまだ就活を継続すると回答しているのです。

[図表7]内定学生の就活継続意向(文系)

[図表8]内定学生の就活継続意向(理系)

 文系の就活終了者の割合は前年とほぼ同様ですが、理系は前年よりも終了する学生の割合が高まっています。「第1志望の企業に内定したので終了する」とした学生が、前年の61%から7ポイント伸びているためです。優秀な理系学生の争奪戦は、依然として文系よりも激しいものがあります。文系よりも理系のほうが就活終了者の割合が高いのは、複数社の同時受験ができない推薦制度を利用した応募者による差になります。
 大学クラス別に違いを見てみると、文系、理系ともに就活を終了する学生の割合は上位大学で高く、「中堅私大クラス」「その他私立大学」では比較的低くなっています。文系を例に見ると、「旧帝大クラス」では「第1志望に内定して終了」が62%、「第1志望ではないが終了」が22%と、合わせて84%の学生が終了するとしています。これに対して、「その他私立大学」では「第1志望に内定して終了」が43%にとどまり、「第1志望ではないが終了」の18%と合わせても61%にしかならず、23ポイントもの差が生じています。「旧帝大クラス」の学生は内定先に満足、あるいは納得できているのに対して、「その他私立大学」の学生は現在の内定先に満足、あるいは納得できていない学生が多いということです。前述のデータで見たように、内定先の企業規模による差だけでなく、今回調査ではデータを取れていませんが、内定先の業種・業態も大きく影響しているものと思われます。
 また、内定までのステップの違いもあるでしょう。上位校の場合には、リクルーターによる応募動機形成やフォローが実施されているケースも少なくありません。また、大手企業の場合には、講演型、座談会型、OB・OG懇談型、職種・部門別ブース型、仕事体験型など、複数の異なったタイプのセミナーを実施することでコミュニケーション機会を数多く設けるような施策を施しており、学生の不安感の払しょく、納得感の醸成に工夫を凝らしています。一方の中堅・中小企業にはそこまでのパワーはありませんので、ありがちな講演型のセミナーと2〜3回の面接のみというケースが多くなります。内定学生のグリップ力には大きな差が生まれています。

文系の4割はまだ内定辞退をしていない

 複数内定を取得した学生に、入社予定でない企業への内定辞退をすでに申し出ているかを確認したデータが[図表9](文系)と[図表10](理系)です。文系全体の39%、理系全体の22%はまだ辞退を連絡していない企業があると回答しています。

[図表9]内定辞退連絡の状況(文系)

[図表10]内定辞退連絡の状況(理系)

 大学クラス別で見ると、辞退連絡が遅れている学生は、大企業からの内定が少ない「中堅私大クラス」や「その他私立大学」で多くなっています。上記の就職活動継続率の高い大学クラスとも一致します。例えば、まだ辞退を連絡していない企業がある学生の割合は、「中堅私大クラス」の文系で48%、理系では29%、「その他私立大学」の文系で50%、理系で44%といった具合です。これらの層の内定者には、まだまだ安心はできないということになります。一刻も早い内定者フォローによるコミュニケーション活動の実施が望まれます。
 次回は、インターンシップと選考、内定の関係について見てみたいと思います。ご期待ください。

寺澤 康介 てらざわ こうすけ
ProFuture株式会社 代表取締役/HR総研 所長
86年慶應義塾大学文学部卒業、文化放送ブレーンに入社。営業部長、企画制作部長などを歴任。2001年文化放送キャリアパートナーズを共同設立。07年採用プロドットコム(ProFuture)を設立、代表取締役に就任。約25年間、大企業から中堅・中小企業まで幅広く採用コンサルティングを行ってきた経験を持つ。
著書に『みんなで変える日本の新卒採用・就職』(HRプロ)。
http://www.hrpro.co.jp/

 


src=

ジンジュールの他の記事もみる
主要なニュースをもっと見る
社会のニュースをもっと見る
経済のニュースをもっと見る
政治のニュースをもっと見る
国際・科学のニュースをもっと見る
エンタメのニュースをもっと見る
スポーツのニュースをもっと見る
トレンドのニュースをもっと見る
生活術のニュースをもっと見る
地域のニュースをもっと見る

仕事術 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

仕事術 新着ニュース

新着ニュース一覧へ

総合 アクセスランキング

ランキングの続きを見る

東京 新着ニュース

東京の新着ニュースをもっと見る

東京 コラム・街ネタ

東京のコラム・街ネタをもっと見る

特集

特集一覧を見る

記事検索