(中原圭介 著 講談社現代新書 2019年12月)

 

 本書では、これからは「定年」もなく、人生で三つの仕事や会社を経験する時代となり、そうした新しい雇用の在り方が普及していく時代には、個々の社員が自らキャリア形成を考えていかねばならないとしています。

 第1章では、大手企業で定年を撤廃する動きが散見され、2020年代には多くの企業が雇用継続年齢を引き上げていき、事実上「定年」は消滅するだろうとしています。また、年齢だけを理由に一律で給与を下げる従来の再雇用制度は、再雇用者のモチベーションを低下させ、優秀なシニア人材が新興国に流出する原因にもなっているとし、個人の専門性や能力に応じて待遇を見直す企業が増えているとしています。そこで、高齢者になる前に、今後の企業社会で通用するスキルを身に付け、絶えず更新することを推奨しています。

 第2章では、企業の採用において今や新卒一括採用から通年採用への流れは決定的であり、さらにジョブ型雇用も拡大していくだろうとしています。優れた人材には、新卒でも年収1000万円以上支払う企業も現れていて、終身雇用・年功序列を前提としたこれまでの日本型雇用は見直され、企業は「優秀な学生以外はいらない」という考え方になってきていると。また、ジョブ型雇用の普及につれて、企業は社員のキャリア形成のコストを縮小するため、社員は自分でキャリア形成を考えることが必要になってくるとしています。

 第3章では、新卒一括採用から通年採用への衣替えは、日本型雇用の変革の突破口となるのは間違いなく、2019年には大手企業の4分の1が通年採用を導入し、トヨタなどは中途採用が占める割合を中期的には5割まで引き上げる方針であると。中途採用が標準となると、50年の会社人生で転職2回(三つの職場経験)が普通となるだろうとしています。
 そのため、リカレント教育(学び直し)が必要となり、3年である領域のプロとなることを目指し、スキルを最低三つは持ちたいとしています。個人が3回分野を変えて10人に1人の専門家になれば、その掛け算の組み合わせで、9年で1000人に1人の稀少人材になれるとしています。

 第4章では、大学における教育改革について必要な四つの視点を提示し、大学はリカレント教育の普及を担う中核的な存在にもなり、また、人生にとって貴重な一般教養を学ぶ機会も与えてくれるとしています。

 第5章では、スマートフォンのような便利な機器が、逆に日頃から考える機会を奪っているとし、今後は頭を「使う人」と「使わない人」との経済格差が拡大していくとしています。そして、考える力=思考力が強い人は、ごく自然に読書が習慣になっているとし、読書の効用を説いています。

 一般の働く人々に向けた本であり、日常で人事に携わっている読者にとっては、本書で書かれていることはすでに知識や実感としてあるかもしれませんが、それでも、最近の企業の採用・人材育成の動向や、働く人々のキャリア行動とそれを取り巻く環境の変化を俯瞰するにはちょうど手頃な本だったように思います。類書には、働く人にとって「受難の時代」が到来するといったトーンのものが多い中、「人生100年時代の変化を未来志向で楽しむ」という前向きなスタンスであるのが、個人的には良かったように思えます。

<本書籍の書評マップ&評価> 下の画像をクリックすると拡大表示になります

※本記事は人事専門資料誌「労政時報」の購読会員サイト『WEB労政時報』で2020年1月にご紹介したものです。

【本欄 執筆者紹介】
 和田泰明 わだ やすあき
 和田人事企画事務所 人事・賃金コンサルタント、社会保険労務士

1981年 中堅広告代理店に入社(早稲田大学第一文学部卒)
1987年 同社人事部へ配転
1995年 同社人事部長
1999年 社会保険労務士試験合格、2000年 行政書士試験合格
2001年 広告代理店を退職、同社顧問(独立人事コンサルタントに)
2002年 日本マンパワー認定人事コンサルタント
2003年 社会保険労務士開業登録(13030300号)「和田人事企画事務所」
2004年 NPO生涯教育認定キャリア・コンサルタント
2006年 特定社会保険労務士試験(紛争解決手続代理業務試験)合格

1994-1995年 日経連職務分析センター(現日本経団連人事賃金センター)「年俸制研究部会」委員
2006年- 中央職業能力開発協会「ビジネス・キャリア検定試験問題[人事・人材開発部門]」策定委員
2009年 早稲田大学オープン教育センター「企業法務概論」ゲストスピーカー

 


src=