「女中頭といえばこの人!」と朝ドラファンからも支持を受ける楠見さん。25年間出演を重ねた彼女だけが知る、ヒロイン女優たちの素顔をたっぷり教えてもらいましたーー!

「(杉咲)花ちゃんは、撮影前に行う台本の読み合わせから、方言のお芝居を完璧にこなしていました。東京出身にもかかわらず、リハーサル、本番ともにミスが全くないので、方言指導の先生はちょっと気が楽だと思いますよ(笑)」

そう語るのは、NHK連続テレビ小説『おちょやん』(NHK大阪制作)に出演している女優の楠見薫さん。ヒロイン・千代を演じる杉咲花(23)の突出した演技力には「会うたびに驚かされている」と明かす。

楠見さんが演じるのは、千代を見守る女中頭のかめ。大阪・道頓堀にある芝居茶屋「岡安」で、お茶子(女中)の修業をする千代に見せた初登場時の厳しい顔つきは、視聴者にインパクトを与えた。

じつは楠見さん、“朝ドラ”への出演は『おちょやん』で9作目。女優のなかでは最多の記録を持っている。ファンの間では「女中頭の役といえばこの方!」と言われるほど、NHK大阪制作の作品には“常連”の役者なのだ。

’96年放送の『ふたりっ子』から25年にわたり朝ドラに出演する楠見さんが、印象に残ったヒロインとの共演エピソードを明かしてくれた。

’13年に放送された『ごちそうさん』では、ヒロイン・め以子(杏・34)の長女・ふ久の嫁ぎ先である諸岡家の母親・キヨを演じた。共演した杏について、「とにかく周囲への配慮と気遣いを欠かさない人」と楠見さんは語る。

「私の女優人生史上でも五本の指に入るくらい、極寒での撮影があったんですよ。深夜、ふきさらしの場所で、空襲から避難するシーンを撮影したときのことでした。杏さんと私、宮崎美子さん(西門静役)、そしてたくさんのエキストラさんがいらっしゃって。そのときに、杏さんから『よかったらどうぞ』とお菓子を渡してくれたんです。お菓子の数は出演者全員ぶんというわけにはいかなかったのですが、杏さんはエキストラのみなさんにも『みなさん全員には行き渡らないので申し訳ないですが、近くにいる人だけでもどうぞ食べてください』と声をかけながらお菓子を配っていましたね」

’15年放送『あさが来た』では、ヒロイン・あさ(波瑠・29)の嫁ぎ先である商家「加野屋」の女中頭・かのを演じた楠見さん。かのの「ほんにほんに〜」という相槌は、放送当時話題となった。

「波瑠ちゃんとは、毎日のように撮影で顔を合わせていたし、撮影終わりにご飯にも行っていたので、仲よくさせてもらいましたね」

楠見さんと波瑠の間には、“お決まり”のやりとりがあったのだとか。

「私がわざと意地悪をはたらくと、波瑠ちゃんがノってきてくれるんですよ。たとえばスタッフさんから『こちらへ!』という指示があって、役者陣がぞろぞろと移動しているときに、私が冗談で波瑠ちゃんを『ちょっと早よ行ってくれへん?』と小突くんです。すると波瑠ちゃんは『あっ、痛い! 何するんですか楠見さん!』とわざとらしくみんなに聞こえるような大声でリアクションをして(笑)。波瑠ちゃんは、現場を明るくしてくれる活気の持ち主でしたね」

周囲への心遣いを常に忘れなかった杏、持ち前の明るさで現場を盛り上げた波瑠……ヒロインが“座長”として現場をまとめあげる姿を、楠見さんは目の当たりにしてきた。

「花ちゃんは船場言葉(劇中で使われる大阪商人が話す言葉)で『みんなで頑張りたいんだす』とほほ笑んでいましたよ」

ヒロイン女優について笑顔で語ってくれた楠見さんは、まさに千代に厳しくも愛情を注ぐ「おかめさん」そのものだ。

(取材・文:インタビューマン山下)



「女性自身」2021年2月2日号 掲載