「30代で自宅を購入したとしても、建物が老朽化する40年後、つまり70歳ぐらいのころには建て替えをどうするのかといった問題が出てきます。同時に、近い将来、介護が必要になって“終のすみか”はどうするのかも考えなければならない時期が訪れます。たとえば、介護施設に入りたいと思っていても、その前に自宅の建て替えやリフォームでお金を使いすぎてしまい、前払い金(入居一時金)が足りなかった、ということもあるのです。まだ元気なうちから“終のすみか”についてきちんと考えておき、予算を確保しておくと、そうした事態を回避できます」

そう話すのは、ファイナンシャルプランナーの岡本典子さん。高齢者施設・住宅を230カ所以上訪問し、シニア期の住まい探しのアドバイスを行っている岡本さんは、いわば“終のすみか選び”のスペシャリストだ。

岡本さんによれば、高齢期になっても「住み慣れた家で最期まで暮らしたい」と考える人が多い。それでもやがて介護が必要になると、「子どもたちに迷惑をかけたくない」という思いから、高齢者施設・住宅の住み替えも視野に入れざるをえないという人も出てくるという。

慣れ親しんだ地域でそのまま暮らし続けたいのか、交通の便など生活環境を優先したいのか、まだ元気なうちに“終のすみか”へ住み替えるのか……。最期まで自宅で過ごしたいという人は、次のケースを参考に考えておこう。

A子さん(55)は、子どもが独立後、一戸建てに夫(58)と2人暮らし。夫と定年後の生活について話すうちに自宅の話題になった。住宅ローンは完済したが、駅から遠く、車がないと不便。

「最期までこの家に住みたいと思っていましたが、夫に先立たれた場合、私ひとりで要介護になったら、どうなってしまうのか心配になってきました」(A子さん)

自宅は、夫が70歳を迎えるころに、建て替えか大規模なリフォームをしなければならない。

自宅に住み続けたい人が備えておきたいチェックポイントは次の4つ。

【1】介護保険を使った福祉用具のレンタル・住宅改修

手すりの取り付けや段差の解消といった住宅改修工事は、介護保険を利用すると、自己負担額が費用(合計20万円まで)の1〜3割程度で済む。また、車いすや介護用ベッドは要介護2の人からレンタルでき、利用料は1カ月数百円〜とかなり安価なので活用したい。

【2】住み慣れた地域で受けられる介護サービスを知っておく

デイサービスを中心に3つのサービスを組み合わせて利用する「小規模多機能型居宅介護」は、1カ月の利用額は要介護度ごとに決まっていて、要介護5でも月3万円程度(1割負担、食事代などが別途かかる)、「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」同額程度の負担に。

【3】信頼できる主治医(かかりつけ医)を探しておく

最期まで自宅で過ごしたいと思うのなら“看取り”まで想定すること。訪問診療と看取りを行う「在宅療養支援診療所」の医師に、かかりつけ医になってもらう。

「定期的な訪問診療のほかに往診してくれる、気の合う医師を見つけることです」(岡本さん・以下同)

【4】特別養護老人ホーム(特養)/介護老人保健施設(老健)に入る選択肢も想定しておく

特養は人気の施設だが、原則として要介護3以上の人しか利用できないうえ待機者が多い。3カ月以上入院すると退去になることがある。老健は、病状が安定している人が一定期間入所して、介護や機能訓練を受けて、自宅に戻ることを目指す施設。終のすみかにはならない。

「最期まで自宅に住み続けたいと思うのなら、在宅介護を受けられる体制を整える必要があります。介護保険を使ったリフォームや、月1〜3割の自己負担で利用できる福祉用具のレンタルもあります」

介護保険の介護サービスには、訪問介護、デイサービス、ショートステイなどがある。利用限度額の目安は要介護1で月約2万円、要介護5では約4万円(1割負担の場合)。ただし、利用回数などが限られているため注意が必要だ。

「在宅介護を選択すると、かかりつけの医師の訪問診療を受けることになります。介護のキーパーソンはお子さんに頼るケースが多いので、よく話し合いましょう」

また、住み慣れた地域で受けられる介護サービス「小規模多機能型居宅介護」は、1カ月の利用額が要介護度ごとに決まっている。

「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」は、1日3〜5回、15分程度、定期的に訪問してもらえるほか、緊急時にも対応してくれる。料金は要介護5で月3万円程度。

「最終的に特養や老健への入所を検討する方も多いのですが、ご自身の所得に合わせて一度計算してみましょう。費用は施設サービス費の自己負担分(1〜3割)以外に居住費、食費、日常生活費がかかります」

都内のある特養の例では、要介護5の人がユニット型個室を1カ月(30日)利用した場合、自己負担金は月額14万円程度になる。

A子さんは在宅介護を希望していたが、高齢者施設・住宅も視野に入れて、夫の退職金をそのまま残しておくことにしたという。

「女性自身」2020年5月5日号 掲載