亡くなった父の莫大な遺産をめぐって骨肉の争いが繰り広げられる……なんて話はドラマの中だけかもしれないが、自分のお金の“残し方”は、元気なうちに自分できちんと決めておく必要があるようだーー。

新型コロナウイルスの収束が見えないなか、これまでになく「死」を身近に感じ、「相続」を考えた人もいるのではないだろうか。

相続法は’18年、約40年ぶりに大きく改正され、手書きの「自筆証書遺言」の法務局保管制度が、’20年7月から始まった。さらに’21年度以降には、法務局に保管された自筆証書遺言の遺言者が亡くなったときに、生前指定した人に連絡する制度が本格的に始まる予定だ。

このように遺言書に関する制度が整備され、そのハードルは下がっているが、それでも、まだ多くの人たちにとって遺言は「うちには関係ない」存在だろう。

だが、弁護士の竹内亮さんはこう指摘する。

「遺言書がないと、遺族が集まり、財産分けについて話し合わねばなりません。その話し合いこそが、大変なのです」

遺言書があれば話し合う必要もなく、遺言書どおりに相続すればよい。残された家族がもめる機会も、大幅に減るという。

「特にお金持ちでもない、普通の家庭に、複雑な遺言書は必要ありません。A4用紙1枚に手書きでつくる『シンプル遺言』で十分です」(竹内さん・以下同)

では、どう書けばよいのか。ポイントを順に見ていこう。

【1】できるだけシンプルに書く

遺言書は、契約書などと同じ法律文書だ。複雑なものほど法律の知識が必要になるが、法律の素人が自分でつくる遺言は、シンプルでよい。そのほうが、間違いが起こりづらいからだ。

「複雑な遺言書は、本人の意思ではなく、『だれかに書かされた』という疑いを持たれることもあります。シンプル遺言なら、そんな心配もありません」

【2】遺産を割合で分けない

法定相続のよくない点は、割合で分けねばならないこと。ならば割合で分けずに「土地・建物は○○に、預貯金は△△に」と種類別に相続人を指定すればよい。

「ただし、『全部を妻に』はOKです。『全部』は割合を表しますが、これなら話し合いも分ける作業も必要ないからです」

【3】財産目録は必要ない

自筆証書遺言は全文手書きでつくるものだが、先の改正で、財産目録だけはパソコンで作成することが認められた。そう聞くと、財産目録は必ずつけなければならない気になる……。

「財産目録は財産を特定するためにつけるものです。遺言書で、だれに何を相続させるかがはっきりわかれば財産目録はいりません」

財産がそれほど多くない一般の私たちは、シンプル遺言1枚で十分というわけだ。

【4】極端な分け方をしない

遺言書は、法定相続に従わなくてもよいが、一定のルールはある。「遺留分」もそのひとつ だ。

たとえば夫に先立たれ、子どもが2人いる女性が、「全財産を長女に相続させる」という遺言書をつくって亡くなったとする。

長男が遺言の内容に納得すればよいが、納得しなかった場合、長男は遺留分として算出される額(法定相続分)を、長女に請求することができる。相続財産が自宅の土地・建物など換金しづらいものだとしても、遺留分は現金で支払わねばならない。

「『妻に全部』は納得できても、きょうだいのなかで極端に差をつける遺言は争いのもとです」

【5】何度書き換えてもOK

財産が増えたり減ったり、離婚や再婚などで家族の状況が変わることもある。遺言書はそのたび書き換えればいい。

「書き換えるときは、『今までの遺言はすべて撤回します』と書き、全文を書き直しましょう」

【6】遺言の思いを伝えておこう

遺言書に、遺言者の思いまで書き残すのはむずかしい。その思いは、直接家族に話しておこう。

「そもそも、家族に話せないような、後ろめたい遺言書はおすすめできません。また、財産を完全に公平に分けるのはほぼ不可能なので、多少の不満は出ても仕方ありません。ですが、家族のために決めておくことが大切なのだと思います」

「女性自身」2020年10月27日号 掲載