2月18日全国銀行協会(以下、全銀協)は、認知症になった方の預金を、子どもなど親族が引き出す際の指針を発表した。その指針について、経済ジャーナリストの荻原博子さんが解説してくれたーー。

■お金の管理について親とよく話し合っておくことも大切

これまで、預金者が認知症になったら、その方の預金は凍結され、子どもといえども出金などはできませんでした。ただ暗証番号さえ知っていれば、本人のキャッシュカードを使っての取引はできますから、日常的には困らないという方も多かったと思います。

とはいえ、たとえばキャッシュカードの紛失・磁気不良などの再発行が必要なときや、介護施設の入所金など高額を窓口で出金するときなどは、「成年後見制度」を利用しないと対応できないと一蹴する銀行もありました。

成年後見制度とは、認知症など判断能力が十分でない人が不利益を被らないように「後見人」と呼ばれる援助者を決める制度で、家庭裁判所での手続きが必要です。親族が後見人になることもできますが、裁判所の判断で弁護士などが後見人に就く場合もあり、そうなるとおよそ月2万円の費用がかかります。

そうした事情も反映してか、成年後見制度の利用は約22万件にとどまります(’18年末・厚生労働省)。また、後見人を申請しても、決定までに3〜4カ月かかることが多く、その間は銀行取引ができないという問題もありました。

そこで、全銀協が発表した指針には、預金者本人の意思を確認できないときは成年後見制度の利用が原則としながらも、次の3つが確認できれば出金等に応じるとしました。

(1)預金者本人との面談や診断書などで、認知能力がないことを確認。 (2)本人の医療費など、本人のために使うことが明らかな場合に限る。 (3)やむをえないときは投資信託等の売却にも応じるが、より慎重に。

独自の対応を貫く銀行もあるかもしれませんが、今後は全銀協の指針に従う銀行が多いと思います。

’25年になると高齢者の5人に1人、約700万人超が認知症になるとの推測もあります(’19年・厚生労働省)。認知症はだれもが人ごとではないので、全銀協の指針は助かる方が多いでしょう。ですが、認知症になる前に、打てる手は打っておきたいものです。

たとえば、判断能力に問題のない方なら、入院など本人が動けなくなる事態に備えて、多くの銀行が「代理人キャッシュカード」を発行しています。預金者本人が手続きすれば、親族は代理人専用のカードが持てますので、後ろめたさもなく安心して使えます。

また、「代理人指名」を行えば、代理人が窓口で入出金ができる銀行もあります。条件などは銀行によって違いますので、ご確認を。

介護には約500万円かかるといわれます(’18年・生命保険文化センター)。お金のありかや、いざというときだれが管理するかなどを、親が元気なうちに話し合っておくことも大切です。

「女性自身」2021年3月16日号 掲載