安倍晋三首相は5月4日、新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の期間延長が正式決定した後、首相官邸で記者会見し、新型コロナウイルス感染症治療薬の有力候補とされている抗インフルエンザウイルス薬「アビガン」(一般名:ファビピラビル)について5月中の薬事承認を目指す考えを表明した。

 富士フイルム富山化学によるアビガンの治験は6月末までに終了する予定だが、安倍首相は、企業治験が終了する前に、藤田医科大を中心に進められている臨床研究の有効性・安全性の検証結果に基づいて承認審査を進める意向だ。

■企業治験ではなく臨床研究のデータで審査へ

 会見で安倍首相は、アビガンについて「既に3000例近い投与が行われ、臨床試験が着実に進んでいる。有効性が確認されれば、医師の処方の下、使えるように薬事承認をしていきたい。今月中の承認を目指したい」と明言。

 記者の質問に答えて具体的な承認手続きにも触れ、「(新型コロナ感染症治療薬として薬事承認するには)企業治験を終えなければならない。ただ、企業治験は治験に参加する患者さんがいて初めて(症例数が)増えていくが、企業治験を希望する患者の方々はプラシーボを飲む可能性があることも含めて了解していただかなければならず、なかなか症例(の登録)は進んでいない」と、企業治験を早期に終了させて承認手続きに入るのは困難な状況であることを説明。

 その上で、「一方、臨床研究によって症例が重なってきており、専門家の判断で効果があるかどうかという解析が出る。(その解析結果に基づいて)企業が申請をしたら、それに対して承認をするかということになる。一般の企業治験とは違う形での承認の道もあるわけで、おそらくそちらの方になるのではないかともいわれている」と述べ、臨床研究で集積されたデータを基に承認申請が行われる可能性が高いとの認識を示した。

 安倍首相は「まだ確たることはいえない」としながら、「(アビガンは)効果があるという成果が出れば、月内の承認を目指していきたい」と重ねて強調した。緊急事態宣言の期間中に「次なる流行への万全の備え」の1つとして、なんとしても国産の治療薬を確保したい考えだ。

■レムデシビルも近く特例承認、必要量調査開始

 この日の会見で安倍首相は、米国で5月1日に新型コロナ感染症の重症患者への緊急時使用が許可された抗ウイルス薬レムデシビルにも言及。4日にギリアド・サイエンシズより特例承認を求める申請があったことを明らかにし、「速やかに承認手続きを進める」意向を示した。

 レムデシビルについては、迅速審査で薬事承認されても、米国の医療機関への供給が優先され、日本への供給量が限定的なものとなる可能性があることから、厚生労働省は同日、国内の必要量を把握する調査を開始した。